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48歳。単身赴任先から戻って来た夫は、私と息子が住む家には戻りませんでした~スナック大宮問答集56~

大宮冬洋フリーライター
東京・大塚の蕎麦店にて。離婚したての女性と改めて語り合いました。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催140回を超えた。のべ2800人ほどと飲み交わしてきたことになる。

 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。

 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めて対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***タカコさん(仮名。バツイチ女性、48歳)との対話***

人は変わるので、ずっと同じスタンスで相手にコミットする自信がありません

――タカコさんは僕の同世代だったのですね。ちょっとギャルっぽい美人なので30代半ばぐらいかと思っていました。

 アハハ! ありがとうございます。35歳で結婚してすぐに妊娠して、その子どもはもう中学生です。大宮さんのことは同じくヤフーニュースで掲載していた「40歳からの婚活入門」という記事で知りました。私と同年代の女性でこんな人がいるんだ~と興味深くて、過去の記事もさかのぼって読んでいたんです。その頃から、子どもが大きくなったらスナック大宮に参加してみたいと思っていました。

――あの連載、おかげさまで多くの人に読んでもらっていました。でも、先の見えない暗い話に終始することもあって僕も取材先も苦しくなるのでやめました……。その後は、スナック大宮やお見合いおじさん活動などについて書いています。結婚などには至らなくても、人と人がつながることには新しい希望が見えたりするからです。タカコさんは「シンママで飲み友募集中」とのことですが、いつ離婚したんですか?

 今年の春です。でも、8年ぐらい別居していました。まともに一緒に住んだのは結婚当初の4年間ぐらいです。そのうち夫と仲良くなくなってしまい、単身赴任先から戻っても一緒に暮らさなくなりました。

 離婚したばかりなので、また結婚することは考えていません。パートナーはいたら楽しそうだと思うけど、公の縛りがあるのは面倒です。人は変わるので、10年後20年後も同じスタンスで相手にコミットする自信もありません。

笑わせようと思うと場を白けさせ、真面目に話すと笑い(失笑?)が起こる筆者のトーク。さあ、乾杯しましょう!(参加者提供)
笑わせようと思うと場を白けさせ、真面目に話すと笑い(失笑?)が起こる筆者のトーク。さあ、乾杯しましょう!(参加者提供)

仕事帰りに「ちょっと飲みに行こう」がなくなったいま、飲み仲間が欲しい

――そんなに変わりますかね。

 はい。その人の置かれた状況やライフスタイルで、受ける刺激は違うし、老いからの変化も人それぞれです。学生時代の友だちともほとんど会わなくなりました。嫌いになったわけではないけれど、独身だったり子どもが2人以上いたりする人とは話題や価値観が違ったりします。

――昔はすごく仲良かった人と話が合わなくなるのは確かに辛いですよね。無理に会わないほうが無難です。

 いま、親族が経営している会社で働いているので、同僚という気軽な存在もいません。仕事帰りにちょっと飲みに行こうというのもなく、飲み仲間が欲しいなと思っていました。スナック大宮は初対面の方ばかりでしたが、みなさんとても気さくに接してくださり、いろんな話題を振ってくれたんです。大宮さんの優しい雰囲気が参加している方たちに伝播しているのでしょうか。どの方も優しくて素敵で、またお会いできたらいいなと思いました。

――それは嬉しい感想です。僕は普段は身勝手な人間なのですが、スナック大宮のような場では母性のようなものが出てきます。寂しい思いをする人がいないようにしたい。逆に、調子に乗って威張ったりもしてほしくありません。一方的にしゃべり過ぎていたり、会社名や肩書をひけらかすような人にはそれとなく注意します。めったにいませんけどね。タカコさんは苦手なタイプはいますか?

 若い頃は人の嫌なところが目につくことがありました。でも、息子のおかげで許容範囲が広がり、性格的にも穏やかになった気がします。子どもは私の想像を超えたことをやらかすのでいちいち怒っていられません(笑)。私が変わったせいなのかわかりませんが、あくが強い人が周囲にいなくなったなと思っています。

今回のスナック大宮は手打ち蕎麦が美味しい「小倉庵」で開催しました。肝心の蕎麦を撮り忘れたので、別の日のカツ丼写真です。蕎麦と両方食べたい……。(筆者撮影)
今回のスナック大宮は手打ち蕎麦が美味しい「小倉庵」で開催しました。肝心の蕎麦を撮り忘れたので、別の日のカツ丼写真です。蕎麦と両方食べたい……。(筆者撮影)

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真面目に働いて生活していると溜まってくる感情の澱。発散するには良き場と相手が要る

 以上がタカコさんとの会話だ。気楽に話せる飲み仲間が欲しい、というのはふわっとしているけれど切実な望みだと思う。仕事や家事に真面目に取り組んでいると、心地よい疲れとともに感情の澱のようなものが溜まってくる。ときおり言葉にして発散したくなるのは当然だ。それには良き場と相手が要る。

 飲み仲間の世代や職業は問わない。でも、自分と同じぐらいに真剣に生きている人で、お互いに「気を遣っていないようで気を遣い合える」ことが必須だ。周囲の客やお店にもさりげなく配慮しながら、美味しいものを少しずつ食べ、良い酒を飲み交わす。間合いを大切にしてくれる相手なので、それぞれ黙って場の空気を味わう時間があってもいい。

 1時間でも30分間でもいい。一緒に笑って酒を飲んでいると、心がほぐれていく。いろいろあるけれど人生は楽しいと思えてくる。明日も頑張ろうよ。また一緒に飲み交わすために。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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