「光る君へ」に登場した源倫子の実家宇多源氏とは
登場人物が藤原氏だらけの大河ドラマ「光る君へ」に、後に藤原道長の嫡妻となる源倫子(ともこ)が登場した。藤原氏以外の数少ない主要人物の一人である。
黒木華演じる源倫子は左大臣源雅信の娘。藤原一族が朝廷を牛耳っている中で、源氏の雅信が左大臣という高い位についていたのには理由がある。
源氏や平氏とは何か
そもそも源氏や平氏とは、天皇家の一族が皇族の身分を離れて臣下となった際に、天皇から「源」や「平」という姓を賜ったものである。これを臣籍降下といい、平安時代には何回にもわたって行われた。そのため、源氏や平氏といっても一つではなく、いくつかの流れがあった。そして、それらを区別するために、一族の祖となる天皇の名前をとって「○○源氏」「○○平氏」と呼ばれた。
平氏は桓武天皇の子孫である桓武平氏以外はほぼ栄えることがなかったが、源氏はいくつかの流れが公家や武家として発展した。
源氏の流れ
平安時代初期の弘仁5年(814)、嵯峨天皇は親王になっていない、信、弘、常ら皇子、皇女あわせて32人に「源」姓を与えて臣籍に降下させた。これが源氏の始まりで、子孫は嵯峨天皇の名をとって嵯峨源氏と呼ばれた。
その後、多くの源氏が誕生したが、子孫が発展したのは、嵯峨源氏の他に清和源氏、宇多源氏、村上源氏、醍醐源氏の合わせて5流であった。
承平6年(936)、宇多天皇は皇子のうち後の醍醐天皇を除く4人の皇子の子に「源」姓を賜って臣籍に降した。この子孫が宇多源氏である。
このうち、醍醐天皇の弟敦実親王の子が源雅信である。つまり、雅信は臣下とはいいつつ天皇の孫で、藤原氏全盛の時代の中でも高い地位に就くことができた。倫子は雅信の娘で、宇多天皇の曾孫にあたる。
因みに、坂東巳之助演じる円融天皇は醍醐天皇の孫で、倫子とはまたいとこの関係にあたる。従って当代の天皇との血縁関係も深く、極めて身分の高い女性であった。道長も倫子を嫡妻としたことで、朝廷内で大きな地位を築く足がかりとすることができた。
源雅信の子孫
雅信の子孫は公家として栄え、庭田家、綾小路家、五辻(いつつじ)家、慈光寺(じこうじ)家、大原家の5家が明治維新まで代々続いている。
また、雅信の二男扶義の子孫は武家となり、近江国蒲生郡佐々木荘(現在の滋賀県近江八幡市・東近江市)に住んで佐々木氏を称した。現在東北地方を中心に大きな発展を見せた佐々木一族の先祖で、室町時代の大名京極氏や、山陰の戦国大名尼子氏などはこの子孫にあたる。