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夏の甲子園に出場している珍しい名字の選手達・西日本編 「今朝丸」よりも珍しい名字

森岡浩姓氏研究家
阪神甲子園球場(写真:アフロ)

夏の甲子園に出場する名字、続いて西日本編。

東日本編同様、週刊朝日増刊号「甲子園2024」を使用し、漢字の新旧字体などは同じとみなした上で、読みによってランク付けしてある。西日本編も極めて珍しい名字である名字ランキング2万位以下を中心に紹介したい。

「操野」と「阿砂」が双璧

さて、西日本の高校の珍しい名字の選手というと、まっさきに思い浮かべるのは選抜で準優勝した報徳学園高のエース今朝丸(けさまる)投手だろう。確かに「今朝丸」は2万位以下の珍しい名字だが、今大会にはもっと珍しい名字の選手が多数出場している。

西日本の選手で最も名字が珍しいのは、選抜にも出場していた報徳学園高の操野(くりの)選手と、南陽工の阿砂(あすな)選手の2人。いずれも、おそらく親族だけしかおらず、東日本も含めて今大会で最も珍しい名字である。

これくらい珍しくなると、ルーツははっきりしないことが多い。ただ、「阿砂」については、島根県邑南町の「阿須那」地名がルーツの可能性が高い。ここはかつて「安須奈」「安須那」とも書かれていたなど表記に揺れが多く、「阿砂」もこうした「表記揺れ」の1つとみられる。

他にも多い「今朝丸」より珍しい名字

次いで、英明高の丸与(丸與)選手、創成館高の向段(むこうだん)選手、智弁学園高の巴田(ともだ)選手、神村学園高の入来田(入耒田)選手、広陵高の国只(國只)選手、京都国際高の尾角(おかく)選手の名字が続く。このうち、「巴田」は大分県国東市に多い名字で、巴田選手も国東市の出身。「尾角」は「おかど」が多く、「おかく」は珍しい。

その他、明豊高の舩見選手、報徳学園高の間木選手、広陵高の枡岡選手、英明高の植上選手、南陽工の斉郷選手、岡山学芸館高の繁光選手、智弁学園高の少路選手の名字も「今朝丸」よりも珍しい。

そして明豊高の芦内選手、神村学園高の上川床(かみかわとこ)選手までが、2万位以下の極めて珍しい名字である。西日本だけで極めて珍しい名字の選手が18人もおり、例年以上に珍しい名字の多い大会となっている。

意外と多い「幸」

一方、意外と多いのが熊本工の(ゆき)選手の名字。

「幸」という名字は全国の半数以上が大分県に集中しており、他県ではそれほど多くない。読み方も「こう」「みゆき」「ゆき」などに分かれるものの、大分県でほぼ「ゆき」と読むことから、「ゆき」と読む「幸」は名字ランキング3000位以内というメジャーな名字である。

因みに、大分県に次いで多い鹿児島県では「みゆき」と読むことが多い。

なお、予想外の読み方だったのが岡山学芸館高の明楽(明樂)選手。

「明楽」という名字は和歌山県と岡山県に集中しており、和歌山県では「あきら」、岡山県では「みょうらく」と読む。ところが、明楽選手は岡山県出身で「あきら」である。

姓氏研究家

1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」「日本名門・名家大辞典」「47都道府県・名字百科」など多数。2017年から5年間NHK「日本人のおなまえ」にレギュラー出演。

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