ドラマ『セクシー田中さん』調査報告書と日本テレビの組織的問題 #専門家のまとめ
昨年放送された日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』。1月末に原作者の芦原妃名子さんが亡くなり、その制作体制が問題視されていた。日本テレビは「社内特別調査チーム」をつくって調査を続けてきたが、3か月以上が経った5月31日に報告書が公表された。
報告書と付属の3つの別紙には、今回の問題に限らず日本のテレビドラマ制作における問題点が色濃く表れている。この問題に言及した記事も含め、その見取り図をまとめる。
ココがポイント
▼91ページからなる調査報告書に加え、別紙で日テレドラマ制作関係者へのアンケート結果と、マンガ家など有識者からのコメントも
・ドラマ「セクシー田中さん」社内特別調査チームの調査結果について(日本テレビ/2024年5月31日)
▼日本テレビによる調査報告書についての要約・説明と、石澤顕社長のコメント
▼小学館も特別調査委員会で来週早々に調査結果を公表する予定
・漫画原作者死亡受け 日本テレビが特別調査チームの報告書公表(『NHK NEWS WEB』2024年5月31日)
▼今回明らかとなったコミュニケーションの齟齬、契約の不徹底、制作現場の疲弊は事前に指摘されていた
・日本テレビは道義的責任から決して逃れられない──ドラマ『セクシー田中さん』問題(『Yahoo!ニュース・エキスパート:松谷創一郎』/2024年2月2日)
エキスパートの補足・見解
今回の調査報告書では、①プロデューサーのコミュニケーション不足、②契約の不徹底、③制作現場の疲弊(制作時間の乏しさ)が主要因としてまとめられている。これによって原作者と脚本家の対立が深まっていき、放送終了後にネットを介して衝突が顕在化、そして悲劇につながった。
だが、そもそもプロデューサーをそうした環境に置いたのは管理職だ。今回の調査チームのメンバーである山田克也取締役執行役員コンプライアンス推進室長は、 2021年の『スッキリ』アイヌ差別問題の際も情報・制作局長として番組で謝罪した。その前年にも表沙汰になっていない他の問題で山田氏は謝罪をしており、山田氏を含む幹部がどのように引責するかが今後の注目だ。
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