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娯楽性の追求なしにサッカーの魅力は育まれない

杉山茂樹スポーツライター

バルセロナの最大の特異性は、娯楽性と勝利を同時に追求している点だ。ただ勝つだけでは物足りない。娯楽性も同じぐらい必要だと言い切るそのクラブの理念こそ、目を止めるべきだ。常時ほぼ無条件で応援する当事者(地元ファン)のことだけを考えれば、追求するべきは何より勝利、それで十分だ。娯楽性の追求を歓迎するのは、むしろ第3者。バルサがその第3者から「世界で2番目に好きなチーム」と言われる理由、自分の地元クラブ以外で1番好きなクラブと言われる所以だ。

バルサがチャンピオンズリーグで2度目の優勝を果たしたのは05〜06シーズン。91〜92シーズンに最初の優勝を遂げたあと、勝てない時期が長く続いたが、この褒め言葉は、当時から各地で囁かれていた。つまりバルサは、成績以上に、サッカーの普及、発展に貢献していた。05〜06シーズン以降は10シーズンで4度の優勝。いま。サッカー界にとって欠かせない存在になっている。

サッカーの魅力のマックス値を、自らの力で高めようとしているクラブ。バルサは、サッカー人気にぶら下がっているクラブではない。

スポーツは勝たなければ意味がないと言う声をよく聞く。先日もテレビを見ていたら、川上巨人軍のV9を回想する番組で、当時の選手がそう述べていた。だが、その考え方は、すべての競技に通じるモノではない。サッカーも勝利が一番とはいえ、野球を100とすればせいぜい70〜80。絶対的ではない。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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