東京メトロ他で異例の夏秋ダイヤ改正 本数削減の意味は? 鉄道がシュリンクする
東京メトロ銀座線が5分間隔に――。7月7日、東京メトロが8月27日のダイヤ改正を発表した。平日10時から16時、土休日8時から20時の時間帯に、浅草~渋谷間を1時間に18本から12本へと大きく削減するという内容に、衝撃を受けた人は多かっただろう。
現在の東京メトロ銀座線は、3分から4分間隔で運行されており、それが一気に5分間隔に広がったということで、混雑路線の銀座線がそんな状況なのか、という驚きの声がネット上で飛び交った。
もともと銀座線は、平日の昼間でも2分から3分おきと高頻度で運行されており、車両の小ささによる定員の少なさをそれでカバーしていた。それが5分間隔になるのは、利用者の減少がいかに大きいかと考えられる。
シュリンクする鉄道
コロナ禍になって以降、鉄道各事業者はダイヤ改正ごとに減便を繰り返している。2021年3月には首都圏の鉄道を中心に終電繰り上げ、同年の秋には、JR西日本が普段はダイヤ改正を行わない時期に減便。今年3月のダイヤ改正では、全国のさまざまな鉄道が減便のダイヤ改正を行い、その理由をコロナ禍によるテレワークの普及で人々の行動が変化したとしていた。
新幹線や特急も含めて減便が相次ぎ、鉄道事業者の置かれた状況は厳しいことが察せられた。
減量ダイヤ改正が3月に行われてまだ結論が出ないであろうこの時期に、東京メトロは銀座線・丸ノ内線・東西線・千代田線でダイヤ改正を行うことにした。
銀座線では日中の本数削減だけではなく、平日朝ラッシュ時の8時台30本運転もなくなり、帰宅時間帯の本数も減る。丸ノ内線では本数の削減は少なく、また一部で本数増が見られるものの、それは方南町支線への乗り入れ列車の増加、区間内の3両編成列車の運行終了などが理由である。
東西線・千代田線はラッシュ時の本数減がメインだ。
高頻度運転で知られる名古屋市交通局の東山線も、平日昼間5分間隔から6分間隔へと本数を減らし、1時間当たり12本から10本へと減便するダイヤ改正を9月17日に行う。
西日本鉄道では、天神大牟田線系統で全体的に本数を削減するダイヤ改正を8月28日に行う。同日には天神大牟田線での連続立体交差事業の高架線への切り替えが行われ、それに合わせてダイヤ改正をする。ダイヤ改正の詳細は発表されていないが、概要では平日が713本から686本に4%減、土曜日が642本から631本に2%減、日祝が626本から617本と1%減となっている。
近年のダイヤ改正での各路線の本数減傾向には歯止めがかからず、さらに晩夏から初秋にかけても本数減のダイヤ改正が相次ぐ。
近年、鉄道がシュリンクしているのだ。コロナ禍が始まって以降、利用者の減少がよく指摘されており、それに合わせて減量ダイヤ改正が行われる。果たしてそれにはどんな意味があるのか?
これまで通りのサービスを提供できない
近年、「シュリンクフレーション」「ステルス値上げ」ということがよく言われる。お菓子などが、値上げを避けるため、個数を減らしたり、サイズを減らしたりするということだ。新聞に至っては、少し前まで輪転機の印刷可能ページ数いっぱいまで印刷され、記事や広告の量が多かったものが、最近はページ数が減っている。
それと同じことが、鉄道でも起こっているのだ。コロナ禍で利用者が減っていく中、ゆったりと余裕のあるサービスを提供することを考えるのではなく、需要に合わせて供給を減らす。本数を減らすことで、利用者にとっては不便になり、サービスの質が落ちることになるのだ。東武アーバンパークラインのように、編成を短くして、混雑時に座りにくくするケースもある。
もっとも、これは都市鉄道だからまだ問題はないかもしれない。地方の鉄道では、本数を減らしたら乗車できるタイミングがさらに限られるようになり、利用者はより不便が強いられる。
その上、多くの鉄道事業者は値上げを検討している。現在のサービス水準を維持するための値上げでなければ、利用者にとっては不利益が増大する。
ほかの業界を見てみると、ある新聞社では他社が定期購読料の値上げをする中、購読料の値上げをしようにもできず、ページ数を削減し、それでも経営を維持することができず結局は値上げした。こういうやり方は最悪の展開である。
これまで通りのサービスを提供すべく値上げをするか、値上げを防ぐべく経費節減のために本数を減らすか、という状況に都市鉄道も追い込まれているのだ。
東京メトロ銀座線にせよ名古屋市交通局東山線にせよ、地域では一等地を走っている路線である。その路線が本数を減らすというのは、利用者減への対応だけではなく、鉄道事業の構造そのものに変化が訪れていることを感じさせる。