豪雪の原因 「JPCZ」と「日本海の水温異常」
「日本海寒帯気団収束帯」が大雪の一因
近年、日本海側で大雪が起きると、テレビや新聞の見出しに、「JPCZ」という言葉が散見されるようになりました。何かの事象が起きると、犯人探しが行われますが、このJPCZとは、いったい何なのでしょう。
JPCZとは、(Japan Sea Polar Airmass Convergence Zone)の略で、直訳すると、”日本海寒帯気団収束帯”となります。
シベリア大陸から強い寒気(寒帯気団)が日本付近に流れ込むとき、朝鮮半島北部にある長白山脈で風が二つに分かれ、その風が日本海で再び合流します。この合流することを”収束”と言いますが、収束によって上昇気流が強められ、雪雲が発達することから、この呼び名が生まれました。
最初にこのJPCZに着目されたのは私の知る限り、1969年(昭44)の大雪の年に、当時の気象庁予報官、岡林俊雄氏が雑誌「天気」に書いた文章です。
岡林氏は、日本海の大雪を降らせる雲を、収束雲、もしくは収斂域(しゅうれんいき)としました。その後、1977年にひまわり1号が打ち上げられると、この収束雲の研究も一気にすすみ、1988年(昭63)には気象学者の浅井冨雄氏が、この一連の雲の生成過程をJPCZ(Japan Sea Polar Airmass Convergence Zone)と名付けました。
つまり、JPCZは和製英語で、日本独特の表現ということになります。
実はJPCZの基になった言葉もあります。これはITCZ(Intertropical Convergence Zone)で、熱帯収束帯と呼ばれ、浅井氏は、この熱帯収束帯の対比としてJPCZを考えられたようです。
いずれにしろこのJPCZは、日本海の大雪の時には必ずと言っていいほど出現し、現在ではかなり精度よく、その出現場所を予測することができます。
暖かい日本海
今年は、秋に晴天が多かった事や地球温暖化の影響もあるのか、日本海の海水温が平年に比べて2度前後も高くなっています。
この2度も水温が高いという事は、とても重大な意味を持っています。一般には温度が高いと雪の量は減るように感じてしまいますが、事実はまったく逆で、海水温が高いと蒸発する水蒸気の量が増えて降水量が増えます。降水量が増えるという事は、雪の量が増えるという事に直結しますから、寒気の強さが同じなら海水温が高い方が雪の量が多くなるのです。
加えて今回の寒気は、日本海上空約5000メートルでマイナス40度くらいまで下がっており、真冬でもめったにないような強さです。しかも寒気の継続期間が長く、断続的に年明けまで続く見込みです。
関係機関の注意喚起に留意して、つねに新しい情報に接するようにお願いします。
参考資料
「天気」日本気象学会機関誌 1969年2号、1988年3号