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『ビー・バップ・ハイスクール』オマージュで“順子”の名を継ぐ杉本愛里。負けず嫌いが導いた女優人生

斉藤貴志芸能ライター/編集者
サンミュージック提供

80年代に人気沸騰した『ビー・バップ・ハイスクール』の“テル”と“ヒロシ”が50代で再共演を果たしたオマージュ映画『ビーバップのおっさん』。宮崎ますみが演じたアネゴ肌の人気キャラクターの名を継ぐヒロイン・順子役で、杉本愛里が出演している。『Seventeen』モデルとしてデビューし、仕事がない時期も経ながら、女優の道を切り拓いた21歳の目指すものは?

食べても太らないのでラーメンは替え玉も(笑)

――YouTubeチャンネルできつねダンスを披露して、話題になりました。

杉本 ダンスは教わって踊るのは好きですけど、自分で振りを覚えるのは苦手なんです。きつねダンスも「やってみない?」と言われて、どうしようかと。でも、かわいい踊りでしたね(笑)。

――それに限らず、YouTubeには力を入れているようで。

杉本 そうですね。『Seventeen』の専属モデルを卒業してから、ファッションを中心に配信したいなと思って。

――スタイルキープには、今も気を使っているんですか?

杉本 モデルをやっていたので、急に体型が崩れないようにしています。私はごはんは食べても太らない体質なので、お風呂に浸かって汗を流したり、脚のマッサージをしています。

――食べても太らないのは、羨ましがられそう。

杉本 今だけかもしれませんけど。ラーメンは大好きで、めっちゃ食べていて、替え玉は余裕でします(笑)。ガッツリした家系が好みで、夏のラーメンはよりおいしいです。

仕事がない時期はインスタを頑張って

――1年前に上げていた「自分史」では、3年前に『オオカミちゃんには騙されない』に出演する前は「仕事が全然なかった」と話してました。悶々としていた時期もありました?

杉本 そういう時期が多かったですね。そのあとも、コロナで急に仕事がなくなったりもしましたから。

――もう大阪に帰ろうと思ったり?

杉本 それはなかったです。家族やおばあちゃんが応援してくれていますし、自分でも芸能の仕事が好きで成功したいので、絶対に帰りません。

――状況を打破するために、したこともありました?

杉本 インスタは頑張ったかもしれません。雑誌は月イチしか出ませんけど、インスタはやろうと思えば毎日でも投稿できる。常に何かを上げようと、心掛けていました。インスタ用の写真を撮るためだけに、都内だけでなく横浜やいろいろなところに行きました。

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自分の演技がヘタすぎたので燃えました

――演技については、最初レッスンで「ヘタすぎて悔しくて」というところから入った、という話も出ていました。

杉本 怒られてばかりでしたからね。先生に「何それ?」と言われたり、自分だけ誉められなかったり。だから、逆に燃えて「一番誉められるようになろう!」と思いました。

――負けず嫌いなんですか?

杉本 めちゃめちゃ負けず嫌いです。何でできないのか自分に腹が立って、いろいろなドラマを観て、いいところを盗んだりしていました。

――どんな人の演技に感化されました?

杉本 土屋太鳳さんと芳根京子さんの『累-かさね-』を映画館で観て、ウワッとなって。すごい演技だなと思ったのは、よく覚えています。

――負けず嫌いは他のところでも出ますか?

杉本 小学校、中学校とバスケをやっていて、中学では部活の出席日数で背番号が決まったんですね。私は長期間のレッスンで東京に行かないといけない時期があって、最後にもらったのが11番だったんです。悔しくて、レッスンが終わって帰った日から誰よりも体力を付けようと思って、いっぱい走ったりして頑張ったら、試合にはスタメンで出られました。みんなから、久しぶりの練習で体力がないはずなのに「何で?」みたいに見られたのを覚えています。

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台詞の言い方を考えるのが面白くなって

――演技自体に楽しさも感じたんですか?

杉本 怒られていた頃は全然楽しくないと思っていましたけど、「こういう感じかな?」みたいなのをちょっと掴んだり、自分の中で引き出しが増えてくると、楽しくなってきました。たぶんヘタだったときは、ただ台本を読んでいるだけだったんです。それが、「こういうふうに言えばいいかな」みたいに考えるのが面白くなってきて。ドラマや映画も「この人はこんな演技をするんだ」という感じで観るようになりました。

――出演作で大きかったものもありますか?

杉本 印象が強いのは、『仮面ライダージオウ』にゲスト出演したときです。難しい役柄でしたけど。

――実はすでに命を失っている女子高生の役でした。

杉本 私はそのとき高校生で、台本を何回も読んで、理解するのに時間がかかりました。死んでいて、でも、生かされ続けている。現実にはないことだから、どう演じたらいいのか。

――でも、胸を打つ演技になりました。

杉本 今観ると恥ずかしくなりますけど、あのときの精いっぱいだったかなと。雨が降っている中で死んでいるシーンは大変でした。目をつぶっていても、雨が当たると、反射的にまばたきしてしまうんです。まぶたも動かさないように言われて、気合いで死んでるふりをしていました(笑)。

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ヤンキー口調でも友だち思いなので

『ビーバップのおっさん』で杉本が演じたのは、テル(白井光浩)とヒロシ(清水宏次朗)が訪れた町で、昔は睨みをきかせていた湘南一家の丸川会長(村澤寿彦)の娘・順子。今の一家は弱小化して、会長は町のトラブル解決に2人の力を借りようと家に住ませる。順子はテルの生き別れた娘・美穂(園田あいか)の友だちでもあった。

――『ビーバップのおっさん』の順子役では、話し方を普段と変えてますよね?

杉本 普段はあんなヤンキー口調ではなくて(笑)、自分と全然違うから楽しかったです。友だちの美穂としゃべっているときは、いつもの私に近いところがありますけど、ヤンキーの人たちが来ると「何だよ、お前ら」みたいになって。

――自然に口をついて出ました?

杉本 事前に昔の『ビー・バップ・ハイスクール』を観て、口調を確認して、台本を読んで「どう言えばいいだろう?」と考えながら練習しました。順子もたぶん内心は怖いんだけど、美穂を守らないといけないから……と解釈しました。怖いものなしではない気がしたので。

――オーディションから順子役で受けたんですか?

杉本 順子か美穂か、という形でした。私、『仮面ライダージオウ』のときもそうでしたけど、オーディションが終わった瞬間、「これは受かった」とわかるんです。超能力かもしれない(笑)。

――でも、清楚な美穂でなく、湘南一家の会長の娘の順子になったのは、意外でなかったですか?

杉本 役を聞いたときは「あっ、順子なんだ」と思いましたね。でも、強い口調の役はやってみたかったから、楽しみでした。

――順子役で、口調以外に課題にしたことはありました?

杉本 ああいう家で育ったので気が強く見えますけど、美穂と2人のときは、普通の女子大生のような感じにしようと。中身は友だち思いで、やさしい子なんだと思いました。

(C)ラフター
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「寝すぎてダルい」はわかります(笑)

――順子は美穂の相談に乗っていましたが、杉本さんも人から相談はされますか?

杉本 私、相談を受けることは多いほうだと思います。自分はあまりしないんですけど。恋愛相談が多いかもしれません。

――杉本さんも気の強いところはありますか?

杉本 ありますね。負けず嫌いだし、兄が2人いて、きょうだいで1人だけ女の子だったので。

――お兄さんとケンカもしたり?

杉本 ケンカはまったくしていません。兄とは8歳、6歳と離れているので、むしろ甘やかされて育ったから、すごくわがままになりました(笑)。

――順子は美穂との会話の中で「講義で寝すぎてダルい」と言ってました。その感覚はわかりますか?

杉本 あの台詞は、私にすごく当てはまると思いました(笑)。高校のときの自分ですね。授業中、寝ていることが多かったので。おしゃべりしていて、「うるさい」と怒られたら寝る(笑)。最悪の生徒でした。だから、寝すぎてダルいのもよくわかります。

――高校の教室でバレないように寝ていたんですか?

杉本 バレない寝方を研究しました(笑)。外を見ているフリをしたり、教科書を前に置いて見ているフリをしたり。私の前の席の子が机に突っ伏して寝ていたから、そっちが怒られて、私はバレませんでした(笑)。

(C)ラフター
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大きめなお芝居が合うのは勉強になりました

――『ビーバップのおっさん』の試写を観て、イメージ通りになっていました?

杉本 思い通りだったところもあれば、「こうしたほうが良かったかな」と勉強になったところもありました。私はナチュラルな演技をしたい意識が強いんですけど、こういう映画では、大きめなお芝居のほうがいいなと思いました。

――撮影していたときのことを思い出したりも?

杉本 最後のテルさんたちが戦うアクションシーンは、私もやりたかったなと。あと、夜のシーンがすごく寒くて。撮影は11月で、設定に合わせて結構薄着だったので、白い息が出るほどでした。でも、寒い感じは出さないほうがいいので、ギリギリまでカイロを握って、本番では手離して撮影しました。

――テルとヒロシのような、血気盛んなおっさんはどう思いました?

杉本 新しいと思います。ヤンキーものは高校生が戦うイメージだったので、このタイトルを聞いて「おっさん? どういうこと?」みたいな(笑)。でも、「おっさんでも戦うんだ」という感じで面白くて、カッコ良かったです。

――『ビー・バップ・ハイスクール』も観たんですね。

杉本 この出演が決まって両親に話したら、世代だから、すごくテンションが上がっていました(笑)。本読みのとき、白井さんから「観てください」と何回も言われたので、母と一緒に観て面白かったです。順子という役も知って、近づけるようにしようと思いました。

海外の俳優の表情をアレンジしようと

――映画やドラマは今もよく観ているんですか?

杉本 コロナで映画館に行くことは減りましたけど、Netflixでいろいろ漁っています。映画館で上映していた作品もいっぱい来ますから、「これ観たかった!」みたいになったり。

――最近、面白かったのは?

杉本 『ストレンジャー・シングス』ですね。2年前に配信されたときから、ずっと観ていて、やっと新シーズンが来たから、すぐ観ました。あれは止まらないですね。役者さんの演技もすごく上手だし。海外の方は「こんなに悲しい顔をするんだ」とか、表情がわかりやすくて。日本人だと少し大げさに見えるかもしれませんけど、マネにならないように自分でアレンジして、取り入れようと思っています。

――韓国の女優さんも表情豊かと言われますね。

杉本 韓国ドラマもよく観ます。最近だと『マイネーム』。アクション系で、主演のハン・ソヒさんの演技がすごくて。前の『わかっていても』と全然違う役柄で、本当にもう別人。「あの不器用でかわいらしい感じはどこに行ったの?」というくらいで、とても勉強になりました。

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ピアノは弾き始めたら1日中でも

――オフの日はそういうふうに、家でNetflixを観ていることが多いですか?

杉本 そうですね。服を買いに行くこともだいぶ減って、最近はネットショッピングのほうが多いかもしれません。

――ネットで服を買うと、届いたらイメージと違っていることはないですか?

杉本 たまにあります。パンツの脚がちょっと短かったり。身長に合わせて買うと、ウエストが大きすぎたり、難しいですね。

――スタイルが良すぎるゆえの悩みですね。プロフィールの特技はピアノとバスケになっています。

杉本 ピアノは3歳から15年やってきて、今も家に電子ピアノがあります。ほとんど弾きませんけど、やり始めたら1日中弾いているくらい、集中していて。簡単な曲なら、右手だけ耳コピで弾けますけど、左はできません。だから楽譜を買ってきて、弾きたい曲を弾きます。

――J-POPの曲を弾くんですか?

杉本 クラシックです。「よし、弾いてみよう」ですぐにはできませんが、弾けたときの達成感が好きなので、練習をたくさんします。

地上波でおばあちゃんにも観てもらえたら

――今年も半分以上が過ぎましたが、後半は盛り上がれそうですか?

杉本 もう半分か……。20歳過ぎてから、時の流れが速すぎて(笑)。女優の仕事で、ファンの方にいい報告をたくさんできるようになりたいですね。ドラマを観ていると「この役いいな。やってみたいな」と思うことがよくあって。やっぱり地上波に出たいです。おばあちゃんには、配信よりテレビのほうが観てもらえるので。

――どんなドラマを観て「やってみたい」と思ったんですか?

杉本 二宮(和也)さんの『マイファミリー』とか。ああいうサスペンス系が好きなんです。誘拐される役とか、やってみたい(笑)。

――プライベートでしたいこともありますか?

杉本 落ち着いたら、海外に行きたいです。コロナの前にパスポートを取ったんですけど、一度韓国に行っただけで、もうすぐ切れてしまうので。また韓国か、アメリカに行きたいです。仕事で行けたら一番ですね。英語がしゃべれなくても大丈夫そうだから(笑)。

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Profile

杉本愛里(すぎもと・あいり)

2000年12月21日生まれ、大阪府出身。

「ミスセブンティーン2016」でグランプリとなり、2016年より2020年まで『Seventeen』専属モデル。2017年に女優デビュー。主な出演作はドラマ『母、立ちあがる~認知症のわたしと、あなたと~』、『僕たちがやりました』、『仮面ライダージオウ』、映画『あのコの、トリコ。』など。2022年公開予定の映画『1%の奇蹟』でヒロイン。8月11日に『ビーバップのおっさん』プレミアム上映&トークショー(大阪朝日生命ホール)に出演。

『ビーバップのおっさん』

監督・プロデューサー/旭正嗣 脚本/今井ようじ

出演/白井光浩、清水宏次朗、園田あいか、杉本愛里ほか

全国順次上映

(C)ラフター
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『ビーバップのおっさん』出演・園田あいかインタビュー

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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