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愛読書は『7つの習慣』でLINEをやめた19歳。端役で目を引きヒロインを演じる園田あいかの女優哲学

斉藤貴志芸能ライター/編集者
ワイケーエージェント提供

映画やドラマの小さな役で、不釣り合いなほどの輝きが目を引いていた園田あいか。19歳にして『7つの習慣』や『思考は現実化する』など人生哲学書を次々に読破し、演技に関する思考も深めてきたという。80年代に一世を風靡した『ビー・バップ・ハイスクール』の“テル”と“ヒロシ”が50代で再共演した映画『ビーパップのおっさん』ではヒロイン。子役から多彩に活動してきた10代を経て、20代は女優の道を進んでいく。

1回の人生でやりたいことは全部やろうと

――熊本での子役タレントからアイドル、グラビア、女優、バラエティと幅広く活動されてきましたが、その都度やりたいことをしてきたんですか?

園田 やりたいことはたくさんあって、人生は1回だから、全部やっちゃおうと思ってきました。

――子どもの頃だと、最初は「テレビに出たい」という気持ちから?

園田 3歳のとき、テレビを観ていたら、すっごいきれいなお姉さんが映っていて、「どうやったらこの中に入れるんだろう?」という疑問を持ちました。お母さんに「私もテレビに入りたい」と話して、5歳の頃に熊本の芸能事務所にスカウトしていただきました。

――わりとすぐ、地元のテレビに出るようになったんですよね?

園田 そうですね。オーディションをたくさん受けさせていただいて、CMをいっぱいやりました。

――子ども心に「私、いける」と思ったり?

園田 自分に自信がないと、できない仕事ですよね。お母さんがいつも「あいかはできるよ」と言ってくれました。今でも言ってくれます。

――それで、中3の途中から東京の事務所に。地方からだと、高校進学を機に上京というパターンが多いようですが。

園田 そこも私の性格が出ました。何でも決めたら、すぐやりたくて。好奇心も旺盛なんです。

――中学生でひとり暮らしをするうえで、大変だったことはなかったですか?

園田 ごはんを作るのがキツかったです。朝7時に学校に行かないといけなかったので。おばあちゃんが熊本のおみそ汁を送ってくれて、夜に作って、朝に食べていました。パンより、ごはん派なので。

――掃除や洗濯は?

園田 1人でしっかりできました。きれい好きなタイプかもしれません。

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「かわいい」と言われたら「頑張ろう!」と(笑)

――上京してきたときは、熊本でたくさん活動してきただけに、東京でもすぐ仕事ができる自信はありました?

園田 そういう気持ちはなかったですね。東京ではライバルも多いから、またここでもがくだろうなと思っていました。

――オーディションとかで悔しい思いをしたことも?

園田 自分を信じてやってみて選ばれなかったときに、自分に対して悔しさを感じたことは何度もあります。きのうもあったし、毎日かもしれない。でも、そこで自分と戦って進化していくのが、人生のテーマです。

――東京では最初、アイドルグループに入りました。それもやりたいことだったんですか?

園田 やっぱり人生は1回ですし、何でもやってみようと。アイドルは歌もダンスもできるし、かわいい服を着られて、ファンの方もいて。TikTokもやってインフルエンサーアイドルみたいな形で活動しながら、女優のお仕事も少しずつ、やらせていただきました。

――ラップをやるグループでした。

園田 ヒップホップというものに初めて出会いました。私はラップは歌うより聴くほうが好きだと気づきましたけど、今もよく聴いていますし、1人カラオケだと歌ったりもしています。

――あいかさんはぶっちゃけ、ルックスには自信を持っているのでは?

園田 自分の中ではコンプレックスもありますけど、お仕事の前によく、マネージャーさんに「あいか、かわいい?」と聞いています。「かわいいよ」と言われると「わかった! 頑張る!」となります(笑)。

――ドラマや映画であいかさんを見て、失礼ながら「少し出るだけの役で、こんなにかわいい子が?」と思うことが何度かあって。個人的には、それで誰だか調べて、あいかさんのことを知りました。

園田 目につきました? やった! お芝居自体はまだまだ未熟なので、今は小さな役でもたくさん経験を積みたいです。10代でいろいろなお仕事をやってきたので、20代は役者を中心にやっていけたらと思います。

本をたくさん読んで人間の思考や生き方を考えて

――幅広く仕事をしてきた中で、女優業に対する考え方はどう変わっていったんですか?

園田 アイドルを卒業して、自分がこれから何をしたいか考えたとき、ちょこちょこやっていた女優が楽しかった感触があって。自分とは別の人生を味わえるし、私は人間は心の生き物だと思うんですね。何をしていても感情は付いてくる。それを表現として見せて、たくさんの人の心を動かせたらいいなと。みんなで力を合わせて、ひとつの作品を作り上げることも好きで、それで人を喜ばせることもできたら最高だと思っていました。

――短編映画『Smile』では「TOKYO青春映画祭」で数々の賞に選ばれました。

園田 『Smile』がなかったら、私はたぶん女優になっていなかったと思います。アイドルを卒業してすぐに撮って、初主演。自分の中で考えていた表現が表に出せないこともあって、難しかったですけど、神様が「あなたは役者になりなさい」と言っているのかなと思ったりもしました。

――あいかさんは言葉に深みがありますが、哲学書を読んだりしているんでしたっけ?

園田 小さい頃から「何で地球はあるの?」とか「指が5本なのはどうして?」とか、めっちゃ知りたくて。人間の思考や生き方も考えるようになって、哲学、心理学、自己啓発とか、いろいろな本を読んでいます。

――たとえば、どんな本ですか?

園田 ナポレオン・ヒルさんの『思考は現実化する』とか、D・カーネギーさんの『人を動かす』とか。私の心の師匠は『7つの習慣』を書かれたスティーブン・R・コヴィーさんで、成功するために大切な習慣とか、いろいろなことを教えられました。あとは『嫌われる勇気』や『夢をかなえるゾウ』も読みましたし、小説では朝井リョウさんと住野よるさんが好きです。朝井さんの『少女は卒業しない』を読んだときは、「この主人公を演じてみたい」と思いました。

――本も女優業に繋がったんですね。

園田 今こうやって発している言葉や文字って、すごく人間を感じるんです。動物には文字は読めない。人間の持つものを全部使って、五感を大事にしながら演じていきたい……というのはあります。

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役に近づくために早く寝て早く起きるように

『ビーバップのおっさん』で園田が演じたのは、テル(白井光浩)の娘の藤本美穂。幼い頃、テルが経営していた町工場を閉めたときに母親に連れられて出ていき、以来会っていなかった。テルとヒロシ(清水宏次朗)が訪れた町のおにぎり屋でアルバイトをしていて再会するが、お互い声を掛けることもできない……。

――『ビーバップのおっさん』の美穂役も、オーディションで受かったんですよね。

園田 そうです。おにぎり屋さんの店長さんに「なんでここでバイトしたいの?」と聞かれて、「お父さんとよくおにぎりを食べていたんです」と話すシーンをやりました。おにぎり屋さんだと、お父さんが近くにいる感じがする。いつかまた会える……という感情でお芝居をしました。

――美穂は真面目な子ですよね。

園田 すごく真面目で頭も良いです。私は頭は悪くて、学校の勉強はマジできなかったんですけど(笑)、自分の家庭環境と似た部分もあって、入りやすかったかもしれません。

――美穂にとってのおにぎりのようなものが、あいかさんにもあったり?

園田 私もパンよりお米派で、おにぎりは好きですし、似ている部分は多かったです。でも、美穂ちゃんの素直さや清らかさに近づくために、私は普段は寝る時間も起きる時間もバラバラだったのを、早く起きて早く寝るようにしました。たぶん美穂ちゃんはそうしているから。

――日常生活から役作りをしていたんですね。

園田 はい。聴く音楽も美穂ちゃんはヒップホップではない気がして、GReeeeNさんを聴いたり、言葉づかいも普段からちゃんとしました。美穂ちゃんはお父さんとお母さんの間に立っていて、お母さんはお父さんのことを嫌がっているけど、自分は好きで……とか複雑なところがあって。そういう役の人生について、ずっと考えていました。

(C)ラフター
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ヤンキーものの友情はカッコいいなと

――クライマックスでは無言で涙するシーンがありました。

園田 お芝居での涙は心の中とマッチして出ますけど、あのときは自分の技術不足もあって、現場でいろいろありました。それもひとつの経験として、「ああいう感情になったら泣けないから、次はこういう感情を取り入れよう」と学びました。

――他に、撮影で覚えていることはありますか?

園田 去年の11月に撮って、夜のシーンが寒かったです(笑)。でも、白井さんが私と(杉本)愛里ちゃんのために、お寿司を差し入れてくださって。私はホタテが大好きなので、テンション爆上がりで、寒さも吹っ飛びました(笑)。

――オマージュ元になっている『ビー・バップ・ハイスクール』も観たんですか?

園田 Netflixで観ました。「スカート長っ!」と思って(笑)。今のギャルはスカート短めですけど、あの頃は前髪もオン眉でウネウネ巻いていて、「何で髪がこんなに外側にハネているんだろう?」と。

――聖子ちゃんカットが流行っていた時代でした。

園田 男の人も髪がめっちゃ前に出ているし(笑)、今と全然違いました。でも、中山美穂さんはきれいですね。私の役の美穂という名前は、中山美穂さんから来ているんですかね?

――直接監督に聞いてみてください(笑)。

園田 私はもともとヤンキーものは好きだったんです。『クローズ』とか『HiGH&LOW』とか『東京リベンジャーズ』とか。絆や友情がカッコいいなと思って。『ビーバップのおっさん』でも、おっさん同士の友情がありました。

(C)ラフター
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藤井道人監督の作品に出る夢も叶いました

――去年は秋に写真集を出して、今年に入ってから『ZIP!』が決まって。『ビーバップのおっさん』の上映も含めて、自分の中でいい展開になってきた感じはしていますか?

園田 そうですね。何週間か前にも、すごく大きなことがありました。9月2日に公開される『MIRRORLIAR FILMS』という、一線で活躍されている監督さんたちのオムニバス形式の短編映画があるんですけど、そこで藤井道人監督の作品のヒロインに選んでいただいたんです!

――『新聞記者』で日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞して、今最も注目されている監督の1人ですね。

園田 もともと藤井監督の作品が大好きで、『ヤクザと家族』はトータルで20回以上観ました。暗い部分もありますけど、綾野剛さん演じる主人公の誠実さ、物語の進め方、映像もカット割りも、すべて自分の中でドンピシャだったんです。それから『デイアンドナイト』、『新聞記者』、『青の帰り道』、最近の『余命10年』まで全部観て、藤井監督の作品に出るのが自分の女優人生の目標のひとつになりました。だから、オーディションを受けられただけで嬉しくて。演技は全然思ったようにできなかったんですけど、受かったと連絡をいただけました。そこから私の役者への思いがさらに高まって、今すごく「やってやろう!」となっています。

レポーターとしてどんな言葉で伝えるか勉強してます

――4月から出演している『ZIP!』の「キテルネ」コーナーも楽しそうですね。

園田 『ZIP!』は小さい頃からずっと観ていた番組で、オーディションに受かってビックリしました。もともと熊本で地元の魅力を伝えるレポーターはやっていましたけど、『ZIP!』では若者にキテル商品やスポットを紹介していて、めっちゃ楽しいです。

――話題の缶詰や快眠アイテムなどのレポートをしてきましたが、こういう仕事も事前の準備は念入りにしていくんですか?

園田 しています。レポーターって、すごく深いんです。商品のことを伝えるに当たって、たとえば食べ物なら、テレビを観ている方は匂いも食感もわからない中で、どういう言葉を選んで伝えればいいのか。お芝居も自分の中でわかっているだけではダメで、表現しないといけないのと似ていますね。日ごろからボキャブラリーを増やしたり、テレビの食レポや通販番組を観たり、『ZIP!』の他のレポーターの方がどんな言葉を使っているのか勉強したりしています。

――本当に勉強熱心ですよね。現場で何か戸惑うことはありませんでした?

園田 最初はめっちゃ緊張しました。全国放送で朝6時50分だと、学校やお仕事に行く前にたくさんの方が観ていると、自分に勝手にプレッシャーを掛けていたんですね。でも、そんなものは要らなくて。観ている方を楽しませたいという、プラスの気持ちのほうが大事だと気づきました。

――ディレクターさんから特に言われていることは?

園田 朝の放送だからテンション高くと。あと、商品の魅力を伝えることが一番大事なんですけど、女優をやっていることもあって、つい自分を表現してしまうときがあるんですね。レポーターとしては商品の映りが第一というのは、意識しています。

(C)ラフター
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本当に繋がっていたい人とは電話だけで十分

――日ごろから最先端の情報には敏感なほうですか?

園田 私はSNSもマネージャーさんの携帯でやっていて、LINEもしてないんです。だから、情報に関しては『ZIP!』を毎朝観て取り入れています。

――LINEをやらないのは、何かポリシーがあって?

園田 前はやっていたんですけどね。アプリでコミュニケーションを取るより、電話のほうが100%伝わるし、気を使いながら文字を打つより、一度で全部話したほうが親密になれて。だから、LINEはやめました。

――LINEで会話したいという友だちもいませんか?

園田 本当に繋がっていたい人とは電話で大丈夫だと思います。人間関係がスッキリするんじゃないですかね。マネージャーさんとも電話とショートメールで連絡しています。

――普段はよく友だちと遊んだりはしているんですか?

園田 いつもはもっとテンションが低くて(笑)、あまりしゃべらないかもしれません。オフもほぼ映画を観ているか、本を読んでいるかです。

「演じるとは何か?」と基本から考えたいです

――9月で20歳を迎えますが、先ほども出たように、20代は女優の道を進んでいくんですね?

園田 役者を軸にしていきたいです。でも、『ZIP!』のレポーターのお仕事も好きなので、そういうことにも結び付けたいです。

――女優の中でも目指すイメージはありますか?

園田 いろいろな役を演じられるカメレオン女優ですね。アクションもやってみたいです。バスケ、ダンス、水泳とやってきて、体を動かすことは好きなので、殺陣も習いたくて。

――他にも、磨いていきたいことはありますか?

園田 基本的な「演じるとは何か?」というところから、もっと考えていきたいです。もちろん現場が一番成長できますけど、現場がないときも家で常に学んでおきたくて。

――演技論的な本を読んだり?

園田 読んでいます。『おしん』の映画を撮られた冨樫(森)監督の本が勉強になりました。映画やドラマは全部ウソのことなので、それをどれだけ本物に見せられるかが、最終的に辿り着くところだと思いました。演技に不自然さや違和感があって現実に引き戻されるようだと、役者として存在できないので、そこは大事にしています。

――差し当たり、この10代最後の夏はどう過ごしますか?

園田 家族を大事にしたいです。おじいちゃん、おばあちゃんが70歳を越えていて、これからも長生きしてほしいですけど、月に一度は熊本に帰って会うようにしています。おばあちゃんの家にはワンちゃんもいるし、夏は山でバーベキューをしたくて。帰省するときも本は持っていってしまいますけど(笑)。

――東京で華やかに芸能活動をしつつ、離れて暮らす家族のことも気に掛けているんですね。

園田 人生はバランスが大事だと思うんです。仕事だけでなく、いろいろな面で片寄りなく生きていきたいです。

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Profile

園田あいか(そのだ・あいか)

2002年9月3日生まれ、熊本県出身。

5歳から熊本で子役タレントとして活動。2019年に『あまのがわ』で映画初出演。主な出演作は映画『Smile』、『賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』、『スポットライトを当ててくれ!』、ドラマ『ザ・ハイスクール ヒーローズ』、『鉄オタ道子、2万キロ』、『しろめし修行僧』など。7月24日、8月11日にプレミアム上映の『ビーバップのおっさん』、9月2日公開の『MIRRORLIAR FILMS Season4』の『名もなき一篇 東京モラトリアム』に出演。『ZIP!』(日本テレビ系)、『一夜づけ』(テレビ東京系)に出演中。

『ビーバップのおっさん』

監督・プロデューサー/旭正嗣 脚本/今井ようじ

出演/白井光浩、清水宏次朗、園田あいか、杉本愛里ほか

7月24日に渋谷ユーロライブ、8月11日に大阪朝日生命ホールにてプレミア上映ほか、全国順次上映

(C)ラフター
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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