ブラック企業以外で、入社して1年以内に転職したほうがいい会社とは?
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。世の中には、たくさん「コンサルタント」と名乗る人がいますが、私は理想と現実で考えた場合、かなり「現実」よりのコンサルタントと言えます。したがって「理想はそうであっても現実にはそうならない」ということを膨大な数、この目で見てきた経験があります。
結論から書くと、「入社して1年以内に転職したほうがいい」と判断するタイミングは、一般常識的なビジネススキルのない人が上司になり、その状況が数年続くとわかった時点です。仕事は「Where どこ(どの会社)」で選ぶのではなく、「What 何(事業内容、業界)」で選ぶのでもなく、「Who 誰(上司、同僚)」で選ぶものだからです。
学校を卒業する前に就活します。卒業し、会社に入ります。そのときの選択のポイントは2つ。どこの会社で働くか、どんな仕事をしたいのか。ほとんど、この2点でしょう。車作りが好きで、トヨタ自動車に入りたいと思って入社できた。ネットビジネスに興味がある、サイバーエージェントに入りたいと思っていたら入社できた。……こういう人はハッピーかと普通の人は思うでしょう。が、入社して「誰」と仕事をするかで、仕事人生は決まってしまいます。
ここが「理想」と「現実」との違いです。
現場に入り込んでコンサルティングをしていると、痛感することがあります。それは中間管理者の方々に、一般常識のビジネススキルが圧倒的に足りないことです。若い人のほうが知識が豊かなケースもあるぐらいです。
たとえばロジカルシンキングの基本は、ファクト(事実)ベースで考えることです。客観的なデータに基づいたファクトを抜け漏れなく集め、そこで仮説を立てて議論し、意思決定していくのが組織マネジメントの常識。ロジカルシンキングの本を読まなくても、リーダーシップやマネジメントの本を読めば必ず書いてあることです。管理者研修を受けたら当然教えられる内容です。
しかし、「入社したての君はわからないかもしれないけれど、この業界では、こういうもんなんだよ」「どんなに今の部署が気に入らなくても、3年は歯を食いしばって我慢しろ」「私に言われても困るよ。部長はどう言ってるんだ?」などと言う人が上司であれば、社会人なり立ての大事な時期に、素晴らしい成長が見込めません。
ロジカルシンキングのみならず、リーダーシップやマネジメント、コミュニケーション、経営、組織論、人事労務……など、深くは知らなくても、常識的なレベルでのビジネススキルが足りないと、思い込みが激しくなります。ファクト(事実)ではなく、意見ばかりで人を説得しようと試みます。
また、ビジネススキルが足りない上司は、「答え」を持っていません。若者が困っていても、「理論」ではなく「持論」で語ることが多いのです。ひどい場合は、「君はどうすればうまくいくと思う?」などと、にわか仕込みのコーチング的なコミュニケーションを使ってお茶を濁そうとします。しかし、もともとのコミュニケーションスキルが足りないため、2~3日研修受けただけで学んだコーチングメソッドを有効に使えるはずがありません。
会社に入社したての若者は、専門知識では絶対に先輩や上司には勝てない。「この業界では、こういうものなんだ」「納得いかないかもしれないが、これが当社の常識」と言われると、理屈に合ってなくても反論できないもの。
とはいえ、今の時代に「終身雇用」などあり得ません。東芝、シャープ、三菱自動車の例にもあるとおり、日本を代表する企業でさえ安泰ではない時代です。一般常識的なビジネススキルを知らないまま30歳を超えたら、転職できる幅は限られます。とてもキャリアアップを望むことはできないでしょう。自分の市場価値を高めるためには、他社で通用するとは限らない専門性より、常識的なビジネススキルを早期に手に入れるべきです。
手に職をつければ、将来も安泰だ……といった時代はとっくに終わっています。
身近にいる上司がカギです。たとえ直属上司がダメでも、同僚や先輩が良ければよいでしょう。自分を律し、自分で自己投資をするので上司や先輩は関係がない、と言うなら、私は起業を強くお勧めします。
会社全体の制度や雰囲気ではなく、自分の周囲の環境に目を向けていきましょう。長い仕事人生を決定づける因子が、そこにしかないからです。