社会人3年目、もと小虎・穴田真規選手が目指すのは都市対抗!《阪神ファーム》
2014年の夏。長崎市にある三菱重工長崎のグラウンドを尋ねた時、当時の開田監督がおっしゃった言葉は今でも耳に残っています。
――社会人の本気は都市対抗!――
阪神タイガースを退団したあと社会人野球の世界に身を投じた “もと小虎たち” も今、東京ドームを目指して奮闘中です。
三菱重工長崎の野原将志選手(28)は24日の長崎・佐賀1次予選からスタート。ここに勝って次は九州地区2次予選が5月26日からです。カナフレックスの藤井宏政選手(25)は今月10日、昨年に続いて滋賀1次予選突破し、5月9日の京・滋・奈予選に臨みます。この3府県は2次予選へ行くまでに“1.5次予選”があるんですよね。そして昨年、カナフレックスは3チーム中2チームが勝ち抜けなのに…連敗してしまいました。ことしはクリアしてください!
阪口哲也選手(23)のパナソニックは1次予選が免除で、5月19日からの近畿地区2次予選からです。昨年は敗者復活戦でことごとく負け、第5代表にも入れず本大会を逃したので、梶原監督はじめ選手たちは気合いが入っているでしょう。三菱重工神戸・高砂の若竹竜士投手(28)も2次から。また玉置隆投手(29)の新日鐵住金鹿島は、茨城1次予選でクラブチームなどの勝者と5月21日から戦い、勝てば北関東地区2次予選へ進みます。
前回ご紹介した、JABA岡山大会での野原選手と阪口選手の記事はこちらからご覧いただけます。<社会人野球で奮闘中!もと小虎たちの近況>
都市対抗へ向け1次予選を突破
さて、きょうは和歌山箕島球友会に入って3年目の穴田真規選手(23)の都市対抗1次予選の話です。昨年は見事にクラブチーム日本一の座を奪回した和歌山箕島球友会。4月10日に都市対抗野球の『大阪・和歌山第1次予選』1回戦がNTT淀グラウンドで行われ、大阪ウイング硬式野球クラブに12対2(7回コールド)で快勝。穴田選手は5番サードで出場し、タイムリーを含む3打数2安打1打点と貢献しました。そして16日にはパナソニックベースボールスタジアムで準決勝と決勝を制し、順当に『近畿地区2次予選』(5月19日~わかさ、明石、舞洲など)へ駒を進めてます。
《都市対抗 大阪・和歌山1次予選》
◆準決勝 (パナソニック)
履正社学園-和歌山箕島球友会
履正社 000 000 100 = 1
和歌山 020 000 00X = 2
<経過>打線は2回、平井のタイムリー内野安打で先制。さらに連続四球で満塁として4番・林の押し出し死球でもう1点。その後は制球に苦しむ相手投手陣から計11四死球(四球8、死球3)を選びながら決定打が出ず、追加点はなし。一方、先発は昨年のクラブチャンピオンに大きく貢献した2年目の寺岡。この日は7回まで10安打(うち三塁打1、二塁打3)されるも要所を締める投球で、失ったのは7回の1点のみ。8回と9回は三者凡退、計9三振を奪って1点差を守りきった。
穴田選手は5番サードでフル出場して四球、二ゴロ、左飛、死球でした。
◆決勝 (パナソニック)
和歌山箕島球友会-NSB BC
和歌山 000 040 006 =10
NSB 000 000 010 = 1
<経過>準決勝2試合目で勝ったNSBベースボールクラブとの決勝は5回に箕島が先制。先頭の穴田がショート内野安打、岸の左前打、犠打と四球で1死満塁として9番・岸田が中前タイムリー。続く平井の二ゴロや相手エラー、木村の左前タイムリーと計4点を奪った。先発の18歳ルーキー・松尾は7回まで3安打無失点、8回の先頭に左前打され1死を取ったあとルーキー・和田に交代。味方エラーで1点を返される。
9回に林の中前打と穴田の四球、暴投で無死二、三塁となり、岸が左中間へのタイムリー二塁打!これで2人が還り、続いて相手エラーで1点、連続四球で満塁として相手エラーと暴投などが続き、この回は打者一巡で計6点を追加。その裏は和田が、1安打されながら併殺など3人で片づけて試合終了。
穴田選手は左飛、ショート内野安打、空振り三振、四球です。
「穴田がいいですよ!」と監督は絶賛
まず西川忠宏監督の談話からご紹介しましょう。穴田選手は打撃好調だそうですね。「いいですよ。ほんまいいですよ!ほんとに」と例年よりも力強く(笑)、何度も繰り返されました。3年目を迎え試合に慣れた部分もあるかもしれないとのこと。「きょうも4番に上げようかというくらい良くなった。オーラというか、それが変わった。やっぱり雰囲気が大事なんですよ。バッターは構えが何割かですから」。なるほど、相手ピッチャーに与える威圧感は大きな武器と言えるでしょう。
「それらしくなってきましたね。結果が自信につながったのかな。その自信が実力になってくればいいですね」と西川監督。でも4番に上がると、また力んだりしてしまうので5番がいいかも…と言ったら「そうそう」と笑っておられました。でもオープン戦では4番もあったみたいで。これから、きっと見られると期待します。
穴田真規選手は、そのオープン戦では長打もそこそこ打っていて、2月28日の名古屋大学戦で今季1号ホームラン、3月27日の追手門学院大学戦の1試合目でホームランを含む3安打を放ち、2試合目は4番ショートでの出場でした。
好調の要因を聞いてみると、珍しく真面目に(失礼…)答えてくれました。「まず手を早く、手で打ち感じ。それと、ほぼ右方向を狙ってる。7割くらい右方向へ打っていますね。あとは追い込まれてから、ノーステップで何とか三振しないよう、バットを短く持ったりして。そういうのを意識しています」。それでうまくいっているわけですね。「今はね。結果が出て実感はあるけど、どれだけ続けられるかが問題」
これから大事な試合が目白押しなので、しっかり維持してください。また“好事魔多し”ということもあるので、ケガには要注意です。
18歳ルーキーに“読まれている”…
では、おなじみの面々にも話を聞いています。準決勝では4四球を選び、決勝では2点タイムリー二塁打など3安打の岸翔太選手。「あんまり調子よくなかったんですよ。でも予選前にだんだん上がってきて。僕の打ったとこ見てくれました?」。見ましたよ。構えに入る時、高く真っすぐバットを上げているのはなぜ?「意識です。早めに待ってリラックスして打てるように」。みんな色々と工夫していますね。
次に、準決勝で10安打されながら1失点完投の寺岡大輝投手は「正直、これ負けたらヤバイなと思いました」と本音がポロリ。ピンチの連続だったみたいですね。その中で「6回1アウト満塁、穴田がサードゴロ捕ってベース踏んでファーストに投げて、ゲッツー取ってくれた!」と感謝の言葉が。でも、そのあと穴田選手の顔を見るや「あれトンネルしてたら…」と言って笑いました。同級生ならではです。
最後は松尾大輝投手。名前が寺岡投手と同じですね。京都の鳥羽高校から入ったばかりのルーキーで、昨年夏の甲子園がベスト16、和歌山国体でベスト4に入ったことはご存じでしょう。まだ18歳で、西川監督は「入ってきてからも身長とともに球速は伸びていますよ。体が出来てきたら、もっと良くなる!」とかなり期待を持っておられます。しかし大事な試合での公式戦初先発にもかかわらず、堂々たるマウンドさばきでした。
緊張したかと尋ねたら「しなかったですね」と涼しい顔。でも「長いイニングを投げたのは久しぶり。国体以来か…多分メッチャ久しぶりです。投げても3イニングとかだったので」と言うので、多少の疲れはあったかもしれません。「何回までとは言われていなかった」そうですが、8回途中で交代。「終盤は、投げ切れるかなと思った」。ここは少し悔しそうな顔を見せました。負けん気が強く、なかなか度胸もあるルーキー。頼もしいですね。
帰り際に1つ確認したことがあります。試合中、マウンドから三塁方向を見やった時、松尾投手の顔が思わず緩んだのを見ました。何だったのかな?「あれは…」と言いかけて長らく迷い、また「あれは穴田さんが…」と止まります。はは~ん、サードを守っていた穴田選手が何かしたんですね。やがて意を決したのか「ボールにキスするんですよ、何回も」と教えてくれました。思い出し笑いをしながら。
やっぱり。公式戦初先発の新人投手をリラックスさせようとしてのことなんですね?と聞いたら、松尾投手は「いえ、穴田さんはいつもやってます。そういう人なんで」とクールな返事。なるほど。まだ出会って4ヶ月くらいだと思いますが、よくご存じで…。そういうお茶目な先輩ですけど、今後ともよろしくお願いしいます。