社会人野球で奮闘中!もと小虎たちの近況《阪神ファーム》
ことしも社会人野球の季節です。といっても既に3月からJABAの各大会は行われていて、秋に開催される『第41回社会人野球日本選手権』(京セラドーム大阪)の出場権を賭けて戦っています。また夏の『第87回都市対抗野球』(東京ドーム)の予選も始まりました。
2013年まで阪神タイガースに在籍していた野原将志選手(28)は三菱重工長崎で3度目のシーズンを迎えています。先日、鳴尾浜で阪神ファームと対戦したカナフレックスの藤井宏政選手(25)と、クラブチーム・和歌山箕島球友会の穴田真規選手(23)も社会人3年目。阪口哲也選手(23)はパナソニックに入って2年目です。
そして昨年退団した玉置隆投手(29)は新日鐵住金鹿島に入社。15日から茨城県日立市で行われた『JABA日立市長杯』に出場し、連投につぐ連投だったようです。「いや~もう腕がパンパンですよ」と言いながら、完封リレーを含む3連投に充実感いっぱいの様子。この大会には三菱重工神戸・高砂の若竹竜士投手(28)も出ていたのですが、両チームとも決勝トーナメント進出はなりませんでした。でもまだ日本選手権対象大会は出ますので、次に期待しましょう!
日本選手権の出場切符はお預け
13日から18日まで岡山県倉敷市で行われた『第59回JABA岡山大会』は昨年と同じく、野原選手と阪口選手のチームが出場。パナソニックは予選リーグ初戦に完封勝ちしました。三菱重工長崎は初日が完封負けだったものの、2日目に7回コールド勝ち。私が観戦したのは3日目、15日の倉敷市営球場で、第1試合は2014年にこの大会を制した三菱重工広島と昨年優勝のパナソニックの顔合わせ。町田公二郎監督(三菱重工広島)と梶原康司監督(パナソニック)という、NPB出身の監督対決です。
《JABA岡山大会 予選リーグ》
4月15日 (倉敷市営) 第1試合
三菱重工広島-パナソニック
広島 300 012 000 =6
パナ 000 040 05X =9
<経過>三菱重工広島は1回に相手エラーも絡んで3点を先取し、5回にも1点追加。パナソニックは三菱重工広島・鮫島の前に4回まで無得点だったが、5回裏に三上のタイムリー二塁打と横田の3ランで一気に同点。ところが直後の6回にまたエラーなどで2点を勝ち越される。6対4で迎えた8回、パナソニックは連打と四球で無死満塁として途中出場の井上貴が逆転満塁ホームラン!2死後に死球と渕上の二塁打でもう1点。そして6回2死から北出が0点に抑えて逃げ切った。
阪口選手は2番サードで先発出場して1回は左飛、3回は二飛、5回は3ランのあと空振り三振。7回の守備で、失点にはつながらなかったもののエラーをしてしまい(自身の左側を打球が通過…届かず)、その裏に代打を送られました。試合後は「打てなかった…やってしまった…」とガックリ。かろうじて「勝ってよかったです」という言葉。第3試合の野原選手が来て2ショット写真を撮ったのですが笑顔はなし。しかも、あまりにピントがずれていてボツです。すみません。
パナソニックの梶原康司監督は、阪神からパナソニックへ入社して10年間ずっと4番を打ち続け、2014年末で現役を引退。ことし監督に就任しました。「決勝トーナメントへ行けて1つでも多く試合ができるのは、選手にとってよかった。勝ち上がっていきたいので、次の試合も大事にしないと今までのいいところが台無しになってしまう気がします」
それにしても同点3ランに逆転満塁ホームランって、すごいですね。「たまたまでしょう。ああいうのは。あんなにエラーして勝てる試合なんて普通はないので」と苦笑。確かにパナソニックは5失策でした。ホームランの2人が途中出場で、1打席目はともに空振り三振だったことを挙げ「前の打席の失敗を取り返そうという形でやっていましたね。それを1打席目からやってほしい」と苦笑いの梶原監督。
阪口選手には「簡単に三振するわ、エラーするわ。責任感がない。あんなことして自分の首を絞めているだけ。試合に出られなくなりますよ。甘いんです」と厳しい言葉でした。あえて厳しく言っていると思いますが、阪口選手にとって非常に怖い監督みたいですね。自身がつけていた背番号『8』を受け継いだ同じ阪神出身の選手ですし、まだまだ若いのでビシバシと鍛えてください!
最後に、梶原監督が「1点もやりたくなかったので使った」というロングリリーフ起用に応えた北出治喜投手は「1つ勝って大事な試合だとわかっていたので、いつでもいく準備はしていました」とのこと。この日の最速は147キロで、最速は152キロ。ただし「空振りを取れていないのでスピードだけでは通用しない。近藤さんは空振りを取りたい場面で取れるピッチャーだったので」と、ことしオリックスに入団した先輩・近藤大亮投手を目標にしています。
なお、15日終了時点で決勝トーナメント進出を一番に決めたパナソニック。16日の予選リーグ3試合目は航空自衛隊千歳に7回コールドで勝って3戦全勝でした。
《JABA岡山大会 予選リーグ》
4月15日 (倉敷市営) 第3試合
三菱重工長崎-伯和ビクトリーズ
長崎 100 000 001 =2
伯和 001 000 000 =1
<経過>第3試合は投手戦。三菱重工長崎が1回に3番・河野のタイムリーで先制するも3回に追いつかれ、1対1のまま9回へ。8回まで三菱重工長崎は3安打で、すべて3番の河野が打ったもの。9回にも1死から右中間へ三塁打を放ち(4打数4安打!)、続く4番・加治前の右前タイムリーで勝ち越し、その裏を抑えて試合終了。先発の奥村は9回122球、被安打5、奪三振10、与四球2で1失点完投勝利。
野原将志選手は6番ファーストでフル出場。見逃し三振、一飛、中飛、右飛の4打数無安打でした。「自分で満足いく結果じゃなかったけど、何とかチームが勝ったので」とホッとした様子です。「ヒットが出ないときは守備で頑張ります!チームの勝利が一番」。とはいえ予選リーグ2試合目、14日の三菱自動車倉敷オーシャンズ戦(11対1で7回コールド勝ち)では1回に満塁ホームランを放ち「完璧でしたね!」と、まさに自画自賛。
予選リーグ3試合を終えて2勝1敗となったものの、この時点では決勝進出できるかどうか際どい状況で「相手頼みになるけど、うちが有利なのは確かなので。何とか希望を持って、しっかり調整します。この大会で決めたい」と話す野原選手。新チームになってキャプテンの任を解かれましたが、チームを引っ張る立場に変わりはありません。昨年から加わった、もと巨人の加治前竜一選手もそうですね。
後藤隆之監督は試合後、まず「きょうは奥村、河野、そして加治前」と名前を挙げました。1失点完投の奥村投手には「何とかプロに行きたいという気持ちが前面に出ていた」。チーム5安打のうち4安打の河野選手には「春先から調子を崩していたけど、やっぱり河野。ここへ来て上げてきたかな」。そして9回に決勝タイムリーを放った加治前選手には「足を痛めていて万全じゃないのに強行出場させている。よく打ってくれた」と。本人は「大丈夫ですよ」と言うけど、写真で見るとかなり痛そうでしょう?
野原選手については「色気出したかなあ。打てよ!最後は打ってくれると思ったんだけど」と苦笑いの後藤監督です。でも前日の満塁ホームランの話になると「あれはすごかった!ライナーでスタンド中段だよ。マスカットスタジアムのスタンド中段にガンッと突き刺さったんだから!」と真顔で大絶賛でした。昨年はこの大会の初戦で死球を受け、左手を骨折した野原選手。うっぷんを晴らしたかも。
野原選手が「うちのエース」という奥村政稔投手にも話を。同ブロックの3チームが競っていたため「失点率を考えると点はやれないので、1点取られた時はけっこう萎えました。延長タイブレークになったら決勝へ行けないとか、地方大会ならではのことを意識しながら投げていた」そうです。だからこそ「9回の1点、しびれました!」と。プロへの思いは?「行きたいです。でもスタンドのスカウトの方が次々と帰っていくから(笑)」。それはあまりにも時間が遅くなったからですよ。昨年の同大会で154キロを出した右腕。プロでまた会えたら嬉しいですね。
《JABA岡山大会 決勝トーナメント》
◆準決勝 (マスカット)
パナソニック-三菱重工長崎
パナ 010 000 000 = 1
長崎 001 000 20X = 3
◆決勝 (マスカット)
三菱重工長崎-トヨタ自動車
長崎 000 000 000 = 0
トヨ 011 000 00X = 2
準決勝は野原選手と阪口選手の直接対決!と思ったら「出ませんでした…」と阪口選手。彼らが戦うのは、予選が同じブロックだった昨年5月のJABA九州大会に続いて2度目で、その時も三菱重工長崎が勝っていますね。試合は、中1日でも投げる!と宣言していた奥村投手が、7安打されながら1失点完投で三菱重工長崎が決勝進出。
決勝は日本通運を破ったトヨタ自動車との対戦。野原選手は1打席で交代しちゃったそうです。三菱重工長崎は、トヨタ自動車・藤田純基投手の前になんと1安打完封負けを喫しました。7回2死からの四球でようやく走者を出し、8回2死で主将の平野捕手が初の…いや唯一のヒットを打ったとか。藤田投手は東洋大学出身で、阪神・緒方選手の同級生です。ということは5年前に東洋大の川越グラウンドで交流試合をした時、対決があったのでは?
調べてみたら2011年8月7日、先発した4年生の藤岡貴裕投手(ロッテ)のあと、3年生の藤田投手が5回から8回まで投げています。野原選手は三振、遊ゴロ併殺打という結果でしたが「まったく記憶にない。藤岡は覚えているけど」とのこと。まあ5年前ですもんねえ。ちなみに、この時の緒方選手も3年生ながら6番ライトで先発出場し、清原大貴投手からタイムリーを含む2安打。3打席目は遊ゴロ併殺崩れで、スコアブックに「足が速い!」とメモしていました。
もっと脱線していいですか?倉敷でたまたま話をしたトヨタ自動車の辰巳智大外野手は「伊藤隼太選手の1つ後輩です」と。つまり、この前日(2011年8月6日)にJX-ENEOSとどろきグラウンドで交流試合をした慶応義塾大学の出身。「はい!あの時は1番を打ってました」。1回に秋山投手から四球を選んで、すかさず二盗。1死後に3番のタイムリーで先制のホームを踏んでいます。この辰巳選手の4打席目に4年生の伊藤隼選手が代打で出たんですよね。懐かしい。
すみません。かなり話が逸れました。優勝を逃した三菱重工長崎ですが、2試合とも1失点完投勝利を挙げた奥村政稔投手は今大会の敢闘賞を獲得。また通算打率.571の河野凌太外野手が大会首位打者の表彰を受けました。次は24日に都市対抗1次予選があり、5月はJABA九州大会です。また阪口選手のパナソニックは今月27日からのJABA京都大会で日本選手権出場を狙います。
次回は、都市対抗の大阪・和歌山第1次予選を順当に突破した和歌山箕島球友会・穴田真規選手の話をご紹介します。ことしはなかなか打撃好調のようですよ。こちらからどうぞ。<社会人3年目、もと小虎・穴田真規選手が目指すのは都市対抗!>