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【すべてのパフォーマンスが低下?】会話しながら風景を楽しむランニングイベントに参加するときの注意点

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ
写真はPhotoACより

普段ジョギングをするとき、一人で走ることもあれば、大勢で走ることもあると思います。とくに多人数で走るイベントでは、みんなでお話ししながら風光明媚な景色を楽しんだり、名所を巡ったりすることがあると思います。運動ができて会話を楽しんで景色も満喫できる!そのように思われているランニングイベントですが、いずれも中途半端になっている可能性があるのです。

2人走では、意外と足元をみている

研究は今年のオランダのもので、12人の若者に1.5kmの道を2回走ってもらい、1回は一人で、もう1回は誰かと一緒に会話しながら並んで走るようにしてもらいました。その走行中に、視線計測装置を使ってどこを見ていたかを判別したものです。

1人走と2人走のときの、進路を見ている時間と視線の高さの比較:Brenner E et al.Perception.2024
1人走と2人走のときの、進路を見ている時間と視線の高さの比較:Brenner E et al.Perception.2024

その結果2人で会話して走行していると、1回1人で走行したことのある道でありながら、進路をみている時間が9.2%多く、視線の高さも5.7度下がっていたようです。そして1.5km走りきった時間も、8.3分から9.2分へと遅くなっていたようです。ペースメーカーとして背後につくのはパフォーマンスがアップすると言われていますが、並走して会話すると、景色はあまり見ずに足元を見る。結果、運動強度も低下してしまうのです。

会話のパフォーマンスも低下している。

転倒しそうになる人:PhotoACより
転倒しそうになる人:PhotoACより

そもそもランニングと会話を同時に行うことはマルチタスクの状態であり、両方のパフォーマンスが低下するという文献があります。とくに2つのタスクを同時に管理する能力が低下した高齢者では、転倒リスクが高くなるという文献もあります。ランニングと会話を楽しむと、ランニングに必要な空間・地形などの認識能力が低下し、足元を確認するようになるのです。結果、ランニングのパフォーマンスが低下して、景色も楽しめなくなってしまうのです。

まとめ

会話しながら、運動もできて、景色も楽しめるランニングイベント。ですが、そのようなマルチタスクの状態では、いずれも中途半端になっている可能性があるわけです。そのようなランニングイベントだけでは、あまり走力が上がらないかもしれません。とはいえそれが分かっていて会話、観光しながらのランニングをする分には、ランニングの動機付けやランニング仲間との結束の強化には役立ちます。うまくトレーニングに取り入れていくとよいでしょう。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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