節分に潜む窒息・誤嚥リスク、豆と恵方巻に注意を コロナ禍で搬送難しい場合も
毎年の節分に、豆まきや恵方巻を楽しみにしている方も多いでしょう。
その思いに水を差すようで申し訳ないのですが、節分には思いもよらない危険が潜んでいることがあります。
節分に潜む窒息・誤嚥
昨年、松江市の保育施設で、節分の豆まき行事の際に4歳児が豆をのどに詰まらせて窒息死するという事故がありました。
幼い子どもに豆類を与えてはならない、という注意喚起はこれまで何度もなされているのですが、こうした事故はなかなかなくなりません。
今年も節分を控え、消費者庁は20日、「硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで」と改めて注意を促しました。
なぜ、豆やナッツ類は危険なのでしょうか?
豆やナッツ類の危険性
食べ物やおもちゃなど、異物が気道に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と呼びます。
一方、食べ物以外のものを誤って飲み込む(食道に入る)ことは「誤飲(ごいん)」と呼び、「誤嚥」とは別の現象です。
豆は食べ物ですから、食道に入る分には問題になりません。
しかし、「気道に気体以外のものが入ること」は、それ自体が一大事です。
誰しも、食事中に水分などが気道に入り、むせて苦しい思いをしたことがあるでしょう。
豆やナッツなどの丸くて硬いものは、そのまま吸い込むと気道をふさいでしまい、窒息するなどして命に関わるのです。
また、豆類は水を含むと徐々に膨張すること、油分が溶け出して炎症を起こし、これが気管支炎や肺炎の原因になることなどから、より危険な食べ物と認識されています。
特に幼い子どものいるご家庭で豆まきをする時は、個包装のまま行うなど、工夫が必要です。
子どもの窒息は多い
幼い子どもは、食品の誤嚥による窒息が多いことが知られています。
厚生労働省の調査によると、2020年までの6年間に、食品による窒息で14歳以下の子どもが80人亡くなっていますが、そのうち9割が5歳以下です(1)。
また、2005~2006年、2014~2015年の2回の調査では、異物を吸い込んで気道につまらせる事故のうち、3歳未満が7割を占めていました(2,3)。
また、食べ物が原因となった事故のうち、7割以上が豆やナッツ類でした(3)。
幼い子どもは歯が十分に生えそろっておらず、また飲み込む力も十分に成熟していない、といった理由で、食べ物をのどにつまらせやすいのです。
恵方巻にも潜む危険
節分の恵方巻にも、注意が必要です。
恵方巻を、その年の恵方を向いて、一本を一気に丸かじりする。途中で休まず、誰とも話さず黙って一気に食べる。
こうした食べ方を習慣にしている方もいるようです。
しかし、水分を摂らずに大量のご飯を一気食いするのは、それなりに危険なことです。
2020年に東京消防庁管内で窒息・誤飲で搬送された1672人の高齢者の調査結果では、原因の上位にご飯、おかゆ類、寿司が入っています。
2019年には、YouTubeでライブ配信中に女性がおにぎりを一気食いし、窒息して亡くなったという事故もありました。
特に寿司やおにぎり、餅のような食品は、窒息の予防のため、
小さく切り分けること
水分を摂りながら食べること
ゆっくりと噛んでから飲み込むこと
が大切です。
ここまで読んで、「細々と口うるさい」と不快に思った方もいるかもしれません。
しかし、本年は特に、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、救急搬送の受け入れが難しい病院がますます増えています。
今月25日には、名古屋市で救急患者の搬送先が見つからず、搬送中に2人が心肺停止になったとの報道がありました。
2人とも新型コロナウイルス感染症を疑う症状はなく、一般の救急車利用だったとのことです。
今はこれまで以上に「防げる事故は徹底的に防ぐ」という考えが大切です。
伝統や縁起はもちろん大切ですが、それ以上に健康を大切にして、楽しい節分を過ごしたいものです。
<参考文献>
(1) 消費者庁ホームページ
(2) 日本小児呼吸器学会 気道異物事故予防ワーキンググループ「小児の気道異物事故予防ならびに対応」
(3) 小児耳 2018; 39: 219-222