戦術がない中で活躍しなければいけない久保建英の矛盾。
非常に厳しい状況に置かれている。
それはヘタフェとしても、久保建英としても、という意味だ。リーガエスパニョーラ第30節でホームにカディスを迎えたヘタフェだが、0-1と敗れている。
ヘタフェにとって、直近の3試合は重要なものだった。エルチェ、オサスナ、カディスと1部残留を争う直接的なライバルを叩けるチャンスであった。だが2分け1敗という戦績でそこを乗り越えた結果、降格圏内が勝ち点4差まで迫っている。
そして、今後の日程は簡単ではない。レアル・マドリー、バルセロナ、ウエスカ、ビジャレアル、レバンテ、セルタ、レバンテ、グラナダが眼前に立ちはだかる。ヘタフェの1部残留への道は決して平坦ではない。
ヘタフェが苦しんでいる理由のひとつが、決定力不足だ。
30試合22得点(1試合平均0.73得点)はエイバルと並んでリーガでワーストの数字である。今季、16試合でノーゴールに終わっているのは目を背けたくなる事実だ。
「フィニッシュの場面で正確性を欠いている。それ以上の分析はない。チャンスはつくっている。それを決めなければいけないが、そこで苦労している。得点は多くの選手に分配されるべきだと考えているが、残念ながら今シーズンのヘタフェでゴールを決めている選手は少ない。正確にゴールを決められなければ、最終的には失点して敗れてしまう」とはホセ・ボルダラス監督の言葉だ。
決定力不足に喘ぐチームで、直近のカディス戦において久保建英はFWで起用された。
ボルダラス監督は【4-4-2】の2トップに久保とハイメ・マタを据えた。右サイドにカルレス・アレニャを配置して、少し形を変えてきた。
久保はスペインでサイドアタッカーとして認知されている。マジョルカでインパクトを残せたのは、右サイドに置かれて果敢に突破を仕掛け、チームの攻撃を牽引したからだ。
実際、リーガ移籍後、久保がFW起用された試合は多くない。マジョルカ時代(出場時間109分)、ビジャレアル時代(出場時間75分)、ヘタフェ所属時(出場時間92分)とFWとしてのプレータイムを積み上げてきてはいない。
カディス戦で51分にアンヘル・ロドリゲスと交代でピッチを退いた久保だが、試合後にボルダラス監督は「戦術的な交代だった。ハイメが前線で孤立していたので、彼の近くでプレーできる選手が必要だった。悪い交代ではなかった」と語り、次のように続けている。
「選手交代はスコアに反映されなかった。すると、交代策に疑いがかけられる。それはフットボールの常だ。だが、選手を交代して攻撃で人数を割けるようになった。タケは試合の序盤では苦しんでいた。しかし、少しずつ良いプレーを見せてくれるようになった」
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■適性ポジション
カディス戦後の現地メディアをチェックすると、スペイン『マルカ』では久保の評価点は「1」だった。なお、最高点は3点である。試合のレポートには「タケ・クボは先発だった。ボールを持つ度に、そのクオリティを示した。しかしながら1000のプロジェクトを実行しようとした彼には、決め切る力が欠けていた」と記載されている。
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