8月豪雨でJR東日本のローカル線被災 復旧困難路線の「営業係数」「輸送密度」は?
この夏は猛暑と豪雨の夏である。8月前半は、各地で線状降水帯が発生し、鉄道はその影響を大きく受けた。8月25日時点でも、磐越西線の喜多方~山都間、米坂線の今泉~坂町間(橋りょう倒壊は羽前椿~手ノ子間)は橋りょう施設に影響を受けており、再開の見通しは立っていない。そのほかにも、奥羽本線の東能代~大館間のように貨物列車や特急が通るところが盛土の流出被害を受け、ローカル線でも五能線の岩館~鯵ヶ沢間や、花輪線の鹿角花輪~大館、津軽線の蟹田~三厩間でも運転を見合わせ、代行バスを走らせる状況となっている。
ここで挙げた中で、磐越西線と米坂線が復旧に時間がかかりそうであることは、いうまでもない。ほかにも復旧に時間がかかるところもある。
経営の厳しい路線が被害を受ける
今回の豪雨災害で、被災した路線の多くが「営業係数」「輸送密度」が低いところであることは容易に察せられる。幹線である奥羽本線東能代~大館間でも、コロナ禍前の2019年度で営業係数は1,282、輸送密度は1,483である。
花輪線は鹿角花輪~大館間で営業係数1,687、輸送密度537である。津軽線の中小国~三厩間は、営業係数7,744、輸送密度107である。五能線の岩館~鯵ヶ沢間は、能代~深浦間で営業係数2,256、輸送密度309、深浦~五所川原間で営業係数1,253、輸送密度548となる。道床の大規模流出などで、いまなお詳細を調査しているところも多い。
橋りょう流出の磐越西線と米坂線はどうなのか。磐越西線の喜多方~野沢間(被災区間が含まれる)は、営業係数1,817、輸送密度534。米坂線の今泉~小国間は、営業係数2,659、輸送密度298、小国~坂町間は営業係数2,575、輸送密度169となっている。
国鉄時代末期ならば、「廃線」「三セク化」の話が出ていそうな路線の数値となっている。それゆえに、復旧に時間がかかることが判明したら、「この先どうする?」の話が出てきやすい路線ばかりである。
JR東日本の公式アカウントは、これらの路線の被害について画像つきでツイートしている。
また国土交通省は、鉄道の被災状況について紹介している。
これらの路線の鉄道施設は、多くが戦前、もっとも新しい津軽線でも1950年代に使用開始したもので、その設備を手入れしながら運行を続けていた。だが、近年の気候変動により、設備は自然の脅威に耐えられなくなってしまった。
JR東日本は、閑散線区の輸送密度を公開し、いっぽうで首都圏の通勤電車の本数削減や、終電繰り上げなどの経費節減策を実施している。
2011年に被災した只見線の会津川口~只見間の復旧にあたっては、線路などの資産保有と鉄道の運行を分ける「上下分離」ということで復旧した経緯がある。
被災路線の中には、磐越西線のようにSL列車「SLばんえつ物語」を走らせたり、五能線のように観光列車「リゾートしらかみ」を走らせたりと、需要喚起策に力を入れているところもある。
コロナ前から厳しかった路線が、コロナ禍でさらに厳しい状況になり、JR東日本は支出を抑制するしかない状況となり、その中で復旧をどうするかを考えなければならない。
さて、どうするか。復旧するとしても、何年かかるのか?