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猛暑をもたらしている鯨の尾型の太平洋高気圧 北上できない台風6号が8月1日昼過ぎ~夕方に沖縄本島接近

饒村曜気象予報士
鯨の尾型天気図(7月30日9時)

猛暑の日本列島

 日本列島は、鯨の尾型の高気圧に覆われ、猛暑が続いています(タイトル画像)。

 この鯨の尾型の高気圧というのは、太平洋高気圧を大きな鯨に例えると、日本付近で鯨の尾っぽのように気圧の少し高い部分(あるいは小さな高気圧)ができるもので、戦前から、この天気図になると猛暑が続くことが知られていました。

 現在では、鯨の尾は、背の高い太平洋高気圧のさらに上にチベット高気圧が張り出してきて、日本列島が布団の二枚重ね状態になるときに出現することが分かっています。

 ただ、今回の鯨の尾型は、勢力の強い太平洋高気圧ですが、北海道や南西諸島まで広がっておらず、いわば、「やせた鯨の尾型」です。

 令和5年(2023年)に一番気温が高かったのは、7月27日に大阪府・枚方で観測した39.8度で、次いで、7月26日の埼玉県・鳩山と7月16日の群馬県・桐生の39.7度で、あと少しで40度の大台でした。

 7月30日に全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが213地点(気温を観測している914地点の約23パーセント)、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが767地点(約84パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが908地点(約99パーセント)と、ともに今年最多に近い値でした(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月30日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月30日)

 今年一番多くの猛暑日を観測したのが7月27日の251地点(約27パーセント)、一番多くの真夏日を観測したのが7月29日の847地点(約93パーセント)、一番多くの夏日を観測したのが7月28日の911地点(約100パーセント)でした。

 7月31日も埼玉県のさいたまや熊谷で38度など、関東を中心に猛暑日が予想されており、ひょっとしたら、連日40度近い気温が観測されている関東北部では40度の大台を観測する地点があるかもしれません(図2)。

図2 最高気温の分布予報(7月31日)
図2 最高気温の分布予報(7月31日)

 ただ、西日本では、湿った空気の影響で雲が広がりやすいため、記録的な暑さは平年並みに収まりますので、猛暑日は80地点くらい、真夏日は635地点くらい、夏日は910地点くらいと見積もられています。

 猛暑日と真夏日を観測する地点数が前日よりは減るとはいえ、平年並みの夏の暑さの高い数値であることには変わりがありません。

東京都心で過去最多の猛暑日日数か

 東京では7月30日の最高気温が36.6度となり、今年12回目の猛暑日となりました。

 東京の気温予報をみると、7月31日と8月2日~6日が猛暑日の予想ですので、この予報の通りなら年間猛暑日が18日となります(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(7月31日~8月6日は気象庁、8月7日~8月15日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(7月31日~8月6日は気象庁、8月7日~8月15日はウェザーマップの予報)

 これまでの猛暑日の年間記録は、令和4年(2022年)の16日ですから、記録更新ということになります。

 ちなみに、東京で猛暑日が二けたとなるのは、平成7年(1995年)に10日を観測したとき以降で、最近の現象です。

 ただ、来週以降は平年より最高気温が高い日が続くとはいえ、猛暑日が予想されておらず、記録的な暑さは今週末までのようです。

熱中症警戒アラート

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。

 このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:wet-bulb globe temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 具体的には、次の式で表されます。

屋外:「暑さ指数(WBGT)」=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度(気温)

屋内:「暑さ指数(WBGT)」=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

 ここで、感部を布でおおって湿らせた湿球温度計で求めた温度が湿球温度です。

 空気が乾いていればいるほど蒸発熱を奪われて気温(乾球温度計で求めた温度)との差が大きくなります。

 黒球温度は、輻射熱を測るため、黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度センサーを入れた黒球温度計で測る温度です。

 「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上~33未満:危険、28以上~31未満:厳重警戒、25以上~28未満:警戒、25未満:注意となっています。

 環境省と気象庁は、熱中症で救急搬送される人を減らそうと令和2年(2020年)7月から関東甲信で始めたのが「熱中症警戒アラート」で、令和3年(2021年)から全国で広がりました。

 「熱中症警戒アラート」が発表されたら、また、基本的に運動は行わないようにすると共に、身近な場所での「暑さ指数」を確認し、熱中症予防のための行動をとる必要があります。

 「熱中症警戒アラート」の発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります(前日発表となった熱中症警戒アラートは解除ということはありませんので、発表地域数は当日予報の方が多くなります)。

 7月31日の前日予報では、7月28日の40地域には及びませんが、12地域に発表となっています(当日発表で増える可能性もあります)。

熱中症警戒アラートの発表地域(7月31日の前日予報)

【関東・甲信】茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川、山梨

【東海】静岡

【北陸】新潟

【九州北部(山口県を含む)】福岡、長崎

【追記(7月31日10時15分】

 熱中症警戒アラートは、31日の当日発表で、京都府など近畿地方を中心に追加になり、19都府県に発表となっています。

 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表件数(前日17時と当日5時の同じ地域の発表をまとめて1回として集計)は、7月27日に対する前日予報の28地域で、累計が270地域となり、前年の同月同日を抜いています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図4 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 そして、それ以後は昨年を上回るペースで熱中症警戒アラートが発表となっています。

北上できない台風6号

 7月28日3時にフィリピンの東で発生した台風6号は、北上しながら発達し、28日15時には大型に、30日21時には大型で強い台風にまで発達しています。

 ただ、台風6号は強まってきた太平洋高気圧に行く手を妨げられて北上を続けることができず、向きを次第に北西から西に変えて沖縄・奄美地方にかなり接近する見込みです(図5)。

図5 台風6号の進路予報と衛星画像(7月31日0時)
図5 台風6号の進路予報と衛星画像(7月31日0時)

 暴風域に入る3時間ごとの確率をみると、沖縄本島南部では、7月31日夜の初めころから暴風域に入る確率が高くなり、8月1日昼過ぎから夕方が一番高い94パーセントとなっていますので、この頃が台風の最接近と考えられます(図6)。

図6 南西諸島が暴風域に入る確率(7月30日21時の予報)
図6 南西諸島が暴風域に入る確率(7月30日21時の予報)

 また、鹿児島県奄美地方南部でも、最接近は、8月1日昼過ぎから夕方と考えられます。

 さらに、沖縄県宮古島地方への最接近は、8月2日未明と考えられます。

 沖縄地方や奄美地方では、7月31日は高波に厳重に警戒し、暴風、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

 8月1日は沖縄地方では暴風に厳重に警戒し、沖縄地方や奄美地方では、高波に厳重に警戒してください。

 また、台風6号の北側にある積乱雲の塊が、太平洋高気圧の周辺を回るように北上していますので、九州・四国も、太平洋側を中心に雲が多く、所により雷を伴った激しい雨が降る見込みですので、気象情報に注意してください。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。 

図4の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図6の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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