今世紀最悪の政治に騙される日本国民
フーテン老人世直し録(78)
皐月某日
安倍総理が力を入れて成立させた特定秘密保護法は「今世紀に民主国家が作った最悪の法律」とアメリカから指摘された。フーテンがこれまで書いてきた通り、アメリカは安倍政権のオツムに呆れている。いや呆れを通り越して「これではあかん」と思っているかもしれない。TPPでおいしいものを頂ければ後は用済みと考える可能性もある。
先週、日本記者クラブでモートン・ハルペリン氏の記者会見があった。氏はジョンソン政権で沖縄返還交渉に関わり、ニクソン政権やクリントン政権ではNSC(国家安全保障会議)のメンバーとしてアメリカの安全保障戦略を作成した。安全保障問題の専門家から日本の特定秘密保護法は「今世紀最悪の法律」と言われたのである。
氏はまず、安倍政権が「特定秘密保護法がなければ他国が情報を提供してくれない」と言った事を「嘘」だと指摘した。氏の知る限り日本に秘密法がないとの理由でアメリカが機密情報を提供しなかった事など一度もなかったと言うのである。
考えればすぐに分かることだが、どの国も自分の利益を考えて行動する。その限りで他国と協力する事はあるが、自国の利益にならないと判断すれば、同盟関係にあっても情報を提供する事など絶対にない。秘密法があろうかなかろうが自国の利益のために流すべき情報は流し、秘密法があっても流すべきでない情報は流さない。当たり前の話である。
自国の利益をぎりぎり追及するのが世界である。同盟とか協力とかは、あくまでもその枠内にあり、同盟関係や国際協力によって自国の利益を確保できると考える国はどこにもない。そこが日本は世界とズレている。昔から「外圧」という言葉があるが、他国の利益のためや、他国との協力のために、自国の法律を作ったり制度を変えたりしてきた情けない歴史がこの国にはある。
安倍政権は特定秘密保護法がないと他国から情報提供されなくなり、国民の生命と安全が危険にさらされるとおどろおどろしい説明をした。そして民主主義を無視する内容の法案が、慎重審議を求める声を押し切って強行可決された。これを外から眺めれば、ハルペリン氏でなくとも民主主義が機能しない国の政治に見えるだろう。それを読売新聞は「民主主義は多数決」と書いて支持した。恐るべき政治無知とフーテンは書いたが、そういう声が国内で巻き起こらないのが不思議である。
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