草原にズラリ並んだ白いかしわ餅の正体は?=中の毛虫はきれいな蝶(アカタテハ)の幼虫
真夏の日差しの中、緑の草原に白い「かしわ餅」のような袋状の物体がたくさんぶら下がっているのを時折目にする。怖いもの見たさで、このかしわ餅の端を少し開いて、中を覗き込んでみると、姿を現すのは強面(こわもて)の毛虫。「ウギャー!」と悲鳴を上げて袋を閉じ、「見なかったこと」にする人も多いだろう。
しかしこの毛虫は「アカタテハ」という、ちょっときれいな蝶の幼虫だ。この恐ろしげな毛虫のトゲに毒はないので、怖がる必要はない。
白いかしわ餅の正体は、アカタテハの幼虫がカラムシという雑草の葉を二つ折りして作った隠れ家だ。カラムシは、荒地で良く見かける繁殖力の強い雑草。葉は青ジソに似ているが、草丈は青ジソよりずっと高く、茎はずっと太い。
カラムシの葉は、裏側が白っぽい。アカタテハの幼虫がこの葉を二つ折りにする際、裏だけが見える形にするので、白いかしわ餅が出来上がる。
幼虫が大量発生すると、カラムシが生い茂る緑の草原に、白いかしわ餅がズラリと並ぶ不思議な光景が出現する。
アカタテハの幼虫の好物は、イラクサ、カラムシ、ヤブマオなどイラクサ科の植物の葉。このうちイラクサは、葉や茎のトゲに毒があるので要注意。
ただイラクサは山地性で、都市近郊に多いイラクサ科の植物はたいていカラムシだ。しかも、葉の裏側が白いのは、このうちカラムシだけ。なので白いかしわ餅は触っても大丈夫だ
アカタテハは成虫越冬する蝶で、特に秋に多く現れる。サザンカの花や、熟した柿の実に来ていることも多い。でも、確実にその姿を見たければ、幼虫から育ててみるのもいいだろう。
(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)