米海兵隊のNMESIS地対艦ミサイル(無人発射車両)の正面が初公開
8月17日、アメリカ海軍作戦部長マイケル・M・ギルデイ大将がTwitterで、LSE2021演習に参加させた海兵隊で開発中の新型対艦兵器「NMESIS(ネメシス)」の正面写真を公開しました。4月28日にレイセオン社が初公開した時は真横から撮った写真のみだったので、正面写真は今回が初になります。
【関連】米海兵隊の次期対艦兵器NMESISの無人発射車両が初公開(2021年4月29日)・・・側面写真と解説、用語集など。
NMESIS(海軍海兵隊遠征船舶阻止システム)の使用するミサイルは既に実績のあるコングスヴェルグ/レイセオン製「NSM対艦ミサイル」ですが、世界初の革新的な技術として無人発射車両に搭載されていることが最大の特徴です。これにより運転席を潰してミサイル搭載スペースに充てて車両を劇的に小型化し、空中輸送と海上輸送が大幅に楽になりました。
海兵隊の新戦術EABO(前方展開前線基地作戦)は小さな島嶼にミサイル・ロケット部隊を迅速に展開し射撃し撤収と、移動を繰り返して敵に正確な位置を掴ませない狙いがありますが、そのための最適な機材として開発中です。
NMESIS正面のセンサーについて
新たに公開された正面写真から分かることは、NMESISの正面顔はベース車両JLTVと比べてあまり変わっておらず、最低限の改造で済まされています。
- 光学カメラ
- 板状の装置(ミリ波レーダー)
- LiDAR(推定)
- 通信アンテナ(推定)
- GPSアンテナ(推定)
- NSM対艦ミサイル
- 何かの収容箱(詳細不明)
ただし横から見ると分かる通り運転席が存在しません。また正面写真ではNSM対艦ミサイルの2つの箱型ランチャーの間に何らかの機材を収納した箱があるように見受けられますが、何が入っているのかは現時点では分かりません。(おそらくはミサイル関連の電子機器と推定)
4月に公開された側面写真ではフロントフェンダー上部に「R02G」と書かれていますが、8月に公開された正面写真では「R03G」と書かれており、試験車両が複数ある模様。
光学カメラユニットにはワイパーを装着。その下の両脇の二つの黒い板状の装置はミリ波レーダーの可能性があるものの詳細は不明。中央の小さな黒い丸い装置も不明。
なおギルデイ海軍作戦部長がTwitterに投稿した後に、アメリカ海兵隊はLSE2021演習でのNMESISの写真をDVIDS(アメリカ国防総省の運営する広報メディア)に多数UPしています。
Large Scale Exercise 2021 - DVIDS
LCAC(エアクッション揚陸艇)での運用
車体左側フェンダー後方の上部にある黒い大きなユニットは通常の有人型JLTVにも装備されているもので、エンジン吸気口とエアクリーナーです。
さらにその後方にある縦長の箱状の物は外部制御盤で、兵士が直接操作したり、必要に応じて有線コントローラーを繋げたりします。
C-130輸送機での運用
C-130輸送機への搭載では有線コントローラーで兵士が操作しているように見えます。ここはまだ全自動とは行かないようです。
NSM対艦ミサイル射撃の様子
車体右側面の前部フェンダー後方に沿って上に伸びている黒い細長い筒のようなものはエンジン排気マフラーです。通常の有人型JLTVでは後部フェンダーに沿って上に出されていますが、NMESISではミサイルキャニスター積載の為に位置が変更されました。人が乗る運転席が無いので視界や乗り降りの安全性などを気にすることなく配置が可能になっています。
側面の拡大写真
斜め前方の拡大写真
車体側面のボタンらしき装置は、おそらくミサイルキャニスターの油圧シリンダーによる起倒の手動操作用だと思われます。
フェンダー前方の隅にある青い円筒の物はおそらくLiDAR(レーザー光による検知と測距)で、無人運転の要になる装置です。
丸い黒い輪のようなものはフックポイントで、重輸送ヘリコプターで吊り下げ輸送する際にここにワイヤーを掛けます。これは通常の有人型JLTVにも装備されています。ワイヤーは四隅に掛ける必要がありますが、NMESISでは後部の2カ所が何処になるのかまだ不明です。
ボンネット上の半透明のドーム状の装置は全く詳細が不明で予想もつかず、分かりません。
後部の拡大写真
後部の拡大写真には不鮮明ですが、両脇の赤いブレーキランプとは別にバンパー中央に何かが小さく光っている輝点があります。何らかのライトが光っていると思われますが、後部カメラが何処かにある筈なのに見当たらないので、この周辺にあるのかもしれません。
NMESISはLSE2021演習においてLCAC(エアクッション揚陸艇)への搭載、C-130輸送機への搭載、NSM対艦ミサイルの射撃訓練を実施しています。撮影日は2021年8月15日、場所はハワイのカウアイ島西岸バーキング・サンズにある太平洋ミサイル試射場になります。
アメリカ陸軍の無人ミサイル車両AML
海兵隊のNMESISと同じようなコンセプトで陸軍は一回り大きいAMLという無人発射車両を開発中ですが、こちらはまだ実車は公開されていません。NMESISも車両が走行している動画は未公開です。
これら無人車両の肝心な点はミサイルの発射ではなく、車両の無人走行および輸送機や輸送艦に自動で乗れて移動展開できるかどうかです。それはまだ発表できる段階に無い機密なのでしょう。