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官・民と公・私・・・政治・政策リテラシー講座10

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー

記事「社会と3つのセクター」において、社会的(あるいはパブリック)に関わる活動を行うセクターやアクターについて論じました。

それからもわかるように、従来は、パブリック(公)に関わることは主に官を中心とした公共セクターに属するアクターが担ってきたのです。

他方、経済活などの私(プライベート)に関わることは、主に民が担ってきたのです。

つまり、このような従来までの状況は、次のような図式で表現できるのです。

公=官      私=民

ところが、社会の変化に伴い、また民の役割が社会的にもより大きくなるに連れて、このような図式が崩れ、民が公のことに対応した方が効率がよく、より柔軟で有効で、かつ的確な状況が生まれてきているのです。

また、グローバル経済の進展および人・モノ・情報の流動性の急速な高まりなどのために、国境の意味や政府の役割の低下が起きてきているのです。他方、民が、国や地域を越えて活動し、社会的役割が高まり、その影響力が増大してきているのです。その意味で、民における社会性が非常に重要になってきているのです。

このような状況を図式化すると、次のようになってきたのです。

公=官・民    私=民

このような状況では、誰が公を担ったらいいのか、誰が社会に関わる活動をすべきであるかは簡単には決めつけられないということになります。

しかしながら、そのことを考える基準として、次のようなことが考えられます。

*政府や官などが内容に介入、コントロールすべき公益的活動かどうか。

*政府や官でも民でもどちらでも良いが、効率性を基準にして競った方が望ましい公益的活動であるかどうか。

*民の方が官が行うよりも優れている、あるいは民間(主に非営利)が担うべき公益活動であるかどうか。

このような基準から、誰がその活動を担うべきであるかを考えていくことになるので

す。

このように考えていくと、何がパブリックであり、何が社会的なことなのか、またそ

れらに関する活動などを誰が担当した方がいいのかということが、社会や時代の変化と共に変化してきており、「官・民と公・私」の間の関係性を再考していくことが必要になってきているのです。

その意味から考えると、米国のバラク・オバマ大統領が、自身の演説において何度も、「社会のすべての問題が政府(官)だけで解決できるわけではない」といわれているのは、非常に意味深いと思います。

皆さんは、この問題をどのようにお考えになりますか。自分の周りの問題などからぜひ考えてみてください。

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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