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社会と3つのセクター・・・政治・政策リテラシー講座9

鈴木崇弘政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー

社会に関して、別の視点から考えてみましょう。社会は、さまざまなアクター(注1)から構成されています。それらのアクターが、限られた資源を使って、私たちの社会や生活・暮らしを支えるさまざまな財やサービスをつくり出し、提供しているわけです。

それらのアクターは、大別すると、公共(政府)セクター、営利(企業)セクターおよび(民間)非営利セクター(社会セクターとか市民セクターと呼ぶこともあります)の3つのセクターに分けることができます。

公共セクターに属しているのは国(中央政府)や地方自治体の政府(行政機関)および議会などで、社会においてパブリックに関わるアクターのことです。その活動は、公衆衛生や医療および教育、道路などのインフラ整備や保守、社会の安全や災害の防止、経済や金融の活性化等々で、そのための法整備などを行っていて、それらの活動の経費は、国民からの税金で賄われています。

営利セクターに属しているのは株式会社をはじめとする私企業などの民間の営利を目的とした組織です。それらの組織であるアクターが、企業活動を行い、商品などという形でさまざまな財やサービスが私たちに提供され、社会を豊かにしているのです。実際、社会的な生産の多くは、私企業によって行われています。

これらのアクターの活動目的の第一は、利益をあげ、その利益を最大化することです。もちろんその利益の一部は、税金として納められて、その点でも、社会的にも関わっています。

他方、企業の活動は、雇用や経済などの問題などとも絡んでいたり、環境汚染などのように社会的に問題になることもあり、社会的にも大きな影響と役割をもっているということができます。

最後が、非営利セクターです。そのセクターには、NGO(非政府組織、non-government organization)やNPO(非営利団体、non-profit organization)などの民間であるが社会的な(パブリック)の活動をする組織が属しています。

社会的な活動やパブリックに関わることは元々は、先に述べた公共セクターのアクターによって担われてきたのです。ところが、人々の暮らしは多様化し、社会が急速に変化するような今日的な状況が生まれてくると、それらの状況において、個別のニーズに応じたきめ細かな対応や迅速な対応が求められるようになりました。

ところが、公共セクターの活動は、国民・住民の貴重なお金を出所とする税金で賄われているために、平等性とか、公平性などに基づいて行われることになるために、それらの個別のニーズに的確かつ迅速かつ柔軟に応えるのが難しい面があります。

そのような分野で重要な役割を果たせるのが、公共セクターのアクターです。それらのアクターは、民間の組織ですが、社会的な財やサービスの提供において社会的(パブリック的)に大きな役割を果たし、公共セクターのアクター以上に社会的なニーズにきめ細かくまた迅速にかつ柔軟に対応した活動を行っているのです。

このように、社会は、3つのセクターから構成され、それらの3つのセクターに属するアクターによる活動によって回っている(あるいは、回ってきた)のです。また、それらのセクターはここ各々に存在しているのではなく、相互に補完し合い、密接に結びついてもいるのです。他方、社会が変化する中で、セクターの垣根を越えたさまざまなアクターが生まれてきたり、各セクター自体にも変化が生まれてきたのです。

それらは、現在さまざまな形で社会的にもまた国際的にも注目を集めてきている動きです。例えば、政府の組織や活動の民営化あるいは行政への市民参加や、企業によるフィランソロピー(慈善)活動やCSR(企業の社会的責任)活動、さらにビジネス的手法で社会的問題の解決を図る社会起業家や社会企業あるいはコミュニティ・ビジネスなどの様々な活動や事象です。

そして、上記の3つのセクターやアクターさらに新しいそれらの活動などを考えるときに、それらを結び合わせ、それらを支え、推進している最重要なアクターの存在に気づきます。それが、実は市民なのです。その関係性は、図を参考にしていただきたいと思います(注2)。

その意味で、市民の立場から、つまり私たち一人一人の立場から、それらのセクターや社会について考えていくことがいかに重要であるかということです。そのような問題提起して、今記事を一先ず閉じたいと思います。

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(注1)ある役割をもって活動している人や組織などを指しています。

(注2)この詳細は別の記事で論じたいと思います。

政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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