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阿呆な議員に辞職勧告決議をぶつける野党も阿呆と言うしかない

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(440)

皐月某日

 1983年10月13日、東京地方裁判所はロッキード事件の一審判決で、田中角栄被告に懲役4年、追徴金5億円の実刑判決を言い渡した。田中被告は直ちに控訴し、保釈金3億円を支払って再保釈され、「不退転の決意で戦い抜く」との「所感」を発表した。

 これを受けて野党各党は「田中議員辞職勧告決議案」の本会議上程を一致して要求、国会審議をボイコットする。メディアの世論調査では、田中角栄の政界引退・議員辞職に賛成する国民が8割に達し、自民党議員の4割も辞職に賛成と報道された。

 その頃、フーテンは後藤田正晴官房長官を担当する政治記者だったが、一緒にラクビ―をやっていた作家の野坂昭如氏が、参議院議員に初当選したばかりだったので訪ねてみると、野坂氏はフーテンの顔を見るなり「辞職勧告決議案は絶対におかしい」と言った。

 「選挙で国民から選ばれた議員をどうして国会が辞めさせられるのか。国会に来て初めて分かったことは、野党がどうしようもなく駄目なことだ」。フーテンも政治記者になるまでは権力を握る自民党の横暴に抵抗する野党を評価していたが、現実の政治を知るようになると見方は変わっていた。

 「議員を辞めさせたいなら選挙で落選させるのが筋道なのに、辞職勧告決議案を要求する公明党も民社党も角栄を選挙で落選させようとしていない」とフーテンは野坂氏に言い、野坂氏に角栄氏の選挙区から立候補することを勧めた。36年前の話である。

 そのことを思い出したのは、前回のブログでフーテンが「阿呆」と批判した丸山穂高衆議院議員に対し、立憲民主党など野党6党派が議員辞職勧告決議案を衆議院に共同提出したからである。

 丸山議員の発言は議員の資質を疑わせるに十分で「阿呆」と言うしかないが、それに対し野党とりわけ第一党の立憲民主党が議員辞職勧告決議案を提出したことは同等かそれ以上に「阿呆」だと思う。フーテンの見方では、まんまと維新の責任逃れに利用されただけだ。

 丸山穂高という議員がどういう人物かフーテンは知らない。ただ国会で維新の代表として質問する姿をよく見た。その印象で言えば、政治の荒波にもまれた経験が少なく、複雑なことを単純に考える傾向があるように思う。

 問題発言を見ると、丸山議員は「戦争で取られた北方領土は戦争で取り戻すしか方法はない」と考えているようだ。世界第二位の軍事大国ロシアと戦争することなど現実には考えられないので、本気でそう思っているならとんでもない「阿呆」である。

 そうではなく「戦争するぐらいの覚悟で対応しなければならない」という意味なら、それは経済協力をエサに2島引き渡しでも構わないとする安倍政権の交渉姿勢に、批判的な考えを持っていると受け止めることが出来る。

 しかしそれならぶつける相手は安倍総理であり、元島民でビザなし交流団の団長に向ける話ではない。国会議員が戦う相手は民間人ではない。自分と同じ政治家と官僚に戦いを挑むのが議員の仕事である。それも分からないのならとんでもない「阿呆」である。

 また歴史認識に於いても単純化し過ぎる「阿呆」だとフーテンは思う。ソ連が突然中立条約を破棄して領土を奪ったと考えているようだが、ソ連に対日参戦を執拗に迫ったのは米国である。その見返りが日露戦争で日本に奪われた南樺太と千島列島をソ連領にするという密約であった。つまり北方領土問題の元凶は米国である。

 それでもソ連はなかなか参戦しなかった。ドイツとの戦争が熾烈だったからである。独ソ戦でソ連は2千万から3千万人の膨大な戦死者を出した。プーチンが安倍総理に「領土は血で勝ち取るものだ」と言うのは、第二次大戦でのソ連の犠牲の大きさを訴え、北方領土はその戦果であることを認めさせるためである。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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