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苦節16年、クリス・ポールがNBAファイナルのコートに立つ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
183センチとNBA選手の中で一際小柄なクリス・ポールが、サンズを引っ張る(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地時間6月末日、フィニックス・サンズがロスアンジェルス・クリッパーズを130ー103で下して4勝目を挙げた。サンズは、西地区王者としてファイナルに駒を進める。同チームがファイナルで戦うのは28年ぶりのことだ。

 41得点8アシストと、大車輪の活躍を見せたポイントガードのクリス・ポールは、NBAでの16シーズン目に、ようやく夢の舞台に辿り着いた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 チーム最年長である36歳のポールは、ハーフタイムまでで10得点とスロースタートであった。が、3Qに入ってから「俺の背中を見ろ!」とばかりに爆発する。身長183センチと、NBA選手としてはかなり小柄なポールの鬼気迫るプレーは、サンズ全体にリズムを生んだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 鼻を負傷中のシューティングガード、デビン・ブッカーも鋭さが戻った。この日もチーム最長となる42分4秒間戦い、22得点7リバウンドした。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210630-00245371/

 26本のシュートを放って成功が10本と、まだまだ本調子ではないものの、カットインのスピードや跳躍力を見る限り、心身共に回復した印象を受ける。

パトリック・ベバリーの自滅がクリッパーズの状態を象徴していた。
パトリック・ベバリーの自滅がクリッパーズの状態を象徴していた。写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 試合残り時間が5分49秒となり、26点差をつけられて敗戦が濃厚となったクリッパーズは、ポイントガードのパトリック・ベバリーがファール。このシーズン、彼は荒いプレーを繰り返していた。が、格の違いを見せるポールは淡々と3ポイントシュートを決め、自身の得点を37とする。

 クリッパーズは、何とか立ち直る策を練ろうとタイムアウトを取った。ハプニングはそこで起きた。

 己を見失ったベバリーが、タイムアウトでベンチに向かって歩いていたポールを両手で後ろから突き飛ばしたのだ。その様は、世界最高峰のリーグでチャンピオンを決める選手とはとても思えなかった。

 即、退場が告げられたベバリーは、背番号21のユニフォームをファンに向かって投げ、控室に消える。1万8495人が駆け付けたホームファンの前で、クリッパーズは自滅してしまった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ポールもかつて、現在クリッパーズに所属するレイジョン・ロンドと乱闘を起こしたことがある。口論となった折、先に手を出したのはポールであった。

 あるいは、今回もラフなファイターであるベバリーを挑発し続けていたのかもしれない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 勝負の世界は勝てば官軍だ。結果を残した者が称えられる。暴言があったとも伝えられるが、ポールはサンズに歴史的な勝利を齎したスターであり、ベバリーは悪役となった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 サンズはPlayoffファーストラウンドで、ケガ明けのレブロン・ジェームズが率いるロスアンジェルス・レイカーズに4勝2敗、セカンドラウンドではデンバー・ナゲッツをスイープ。そして今回も4勝2敗で勝ち上がり、ファイナルを迎える。

 東地区のファイナルは、互いに2勝2敗で今日が5戦目。両チーム共に、エースは満身創痍である。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210630-00244570/

3Qに負傷退場したミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボ
3Qに負傷退場したミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 十分な休息を得られるサンズは、ファイナル初戦のティップオフに向け、少なくとも4日を使った準備ができる。ブッカーの傷も癒えるであろう。周到にコンディションを築けるサンズは、ファイナルでのアドバンテージを得た。念願のステージに上がるポールは、何を見せるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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