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体重オーバーの咬ませ犬を2ラウンドで屠った期待の星

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank

 東京五輪で銀メダルを獲得したキーショーン・デービスが、現地時間11月8日に、故郷バージニア州ノーフォークのリングに上がり、アルゼンチン人ファイター、グスタヴォ・レモスに2ラウンドKO勝ちを収めた。

 1万568人のファンで埋まったスコープ・アリーナは満員で、興奮の坩堝と化した。1994年10月1日に、<地元の伝説>として崇められるパーネル・ウィテカーが、バディ・マクガートと戦って以来のボクシングイベントである。

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 <光陰矢の如し>。30年間も同規模のビッグマッチが催されず、ファンは12勝(8KO)のデービスの登場を待たねばならなかった。

 “咬ませ犬”としてアルゼンチンから連れて来られたレモスは、ライト級の体を作れず、前日計量で6パウンドのオーバー。ゴング前から戦う意志が無いことを示していた。サイズのアドバンテージがあったにもかかわらず、それを生かすことも無く、敵地のファンが期待するまま切られ役としてキャンバスに沈んだ。

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 デービスは第2ラウンドにレモスから3度のダウンを奪った。左フックから右のコンビネーションを浴びたレモスがリングで転がると、主審のラウル・カイズ・ジュニアが試合を止めた。

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 勝者は言った。

 「迷いは無かった。チーム全員で信念を貫いた。レモスがあまりにも体重超過していたら、戦わないと昨日告げた。しかし、彼も金曜日の朝には許容範囲の体にしてきた。だからファイト出来たし、素晴らしい夜を過ごせた。

 レモスの力は感じなかったね。実際にロープ際にポジションをとり、彼が得意とするオーバーハンドを打たせたんだよ。それがちょっと、肩に触れたかな。

 直後に兄弟たちを見て、言ったんだ。『問題ない。パワーが無いから』って。あの時、気持ちが表情にも出ていただろうな。2ラウンドで終わってしまったけれど、もしかしたらレモスは俺にパンチを当てるチャンスが、ゼロだったかもな」

 Mikey Williams/Top Rank
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 デービスは放ったパワーショットのうち、76.5パーセントをヒットさせたが、レモスは僅か13発のパンチしか出せなかった。

 ノーフォークのファンは確かに留飲を下げた。しかし、ワンサイド過ぎる内容だった。プロモーターのボブ・アラムは、プロ入りした五輪銀メダリストを連勝させるべく、簡単な相手ばかりを選んでいる。いつ勝負させるのだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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