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MLKユニフォームで勝利したホークスのファイティングスピリット

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
まさに仲間を「Believe」し勝利を掴んだホークス(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地時間29日に行われたNBA東地区ファイナルは、アトランタ・ホークスが、ミルウォーキー・バックスを110-88で下し、対戦成績を2勝2敗とした。

 ホークスは、エースであるトレイ・ヤングが右足の打撲で欠場。地区ファイナル初戦で48得点、精彩を欠いた第2戦では15点、2日前の第3戦でも35得点と、毎試合チームハイを記録するヤングは、ホークスにおいて唯一無二の存在だ。

 得点源を欠いたホークスは劣勢が予想された。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 しかし、ホームタウンの大声援に後押しされたホークスは、「ヤングのいない穴を、俺たちで埋めるんだ!」とティップオフから気魄の籠ったプレーを見せる。試合終了まで、1度もリードされることなく、勝利をもぎ取った。正に、スローガンである「Believe」を武器とした白星であった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210625-00244465/

21得点したルー・ウィリアムズ
21得点したルー・ウィリアムズ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 闘争心の差で後手に回っていたバックスだが、3Q残り7分14秒にアクシデントに見舞われる。今季のオールスターゲームでMVPを獲得したエース、ヤニス・アデトクンボがアリウープを試みたクリント・カペラへのディフェンスに入る。そして、ゴールを決めたカペラと縺れ合いながら着地した折、不自然に左足を捻ってしまう。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 その後、アデトクンボは自力で起き上がれず、治療のためにコートを離れた。ケガの詳細は伝わってこないが、靭帯が伸びたと語る人がいる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 アクシデントの22秒前、アデトクンボはステップバックショットを決めていた。2年連続でMVPを獲得し、昨シーズンは最優秀守備賞にも選出されている。攻守両面でリーグを代表するフォーワードがいるからこそ、バックスはここまで登って来られた。

 そのアデトクンボを失ったバックスは当然のように失速し、同Q終了時には25点ものビハインドを負う。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ティップオフ時点でエース不在を受け入れ、対策を練ったホークスと、試合途中で大黒柱を失ったバックスでは、精神面での安定感が違った。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 このゲームでホークスは、黒のユニフォーム、MLKバージョンを選んでいた。HAWKSでも、アトランタのATLでも、州名のGeorgiaでもなく、当地で生まれ育ち、黒人の人権を守るために闘ったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアへの敬意を示した、彼のイニシャルだ。

 地元への愛と、多くの黒人選手によって構成されている今日のNBAに対する感謝が込められている。米国内で同じマイノリティーに括られる私は、MLKユニフォームを見る度に、ホークスを身近に感じる。

 Playoffを勝ち上がるチームは、ケガ人を埋める作業も強いられる。果たして、生き残るのはどこか。自身を、仲間を、組織を信じられるのはどのチームか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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