糖尿病にはどんな症状があるの?〜高血糖編〜【いまさら聞けない糖尿病について、理学療法士が解説します】
田舎の民間病院で理学療法士として勤務しているぴぴです。
みなさまにひとつでもためになるような知識や情報をお届けしていきたいと思います。
糖尿病の症状について
ここまで、糖尿病の病態や原因について解説してきましたが、本記事では糖尿病の症状についてご紹介したいと思います。
特定健康検査での高血糖の基準値は、
- 空腹時血糖ないし随時血糖100mg/dl以上
- HbA1c(ヘモグロビンA1c)5.6%以上
と言われていますが、具体的にどんな症状が現れるのわからないですよね。
糖尿病の症状は、血糖値が高いとき(高血糖状態)と血糖値が低いとき(低血糖状態)で異なります。今回は糖尿病の症状の中でも、高血糖が続いたときの症状について解説します。
高血糖状態が続いたときに見られる症状
口渇・多飲・多尿
喉がとても渇き(かわき)、水分をたくさん飲みたくなります。そして、尿量が増えます。
人間として当たり前のことでは?と感じるかもしれませんが、高血糖ならではの理由があります。
高血糖になると、尿として排出される糖分の量が増えます。糖分は水分を引き寄せる作用があるため、尿の中に糖分がたくさん含まれていると、水分も多く排出されることになります。結果として、身体から排出される水分の量が増えて身体の中の水分が減ってしまうため、水分がほしくなるのです。
目が見えづらい、黒点が見える(糖尿病網膜症)
高血糖状態が続くと全身の血管に負担がかかります。特に眼には毛細血管がたくさんあり、血管に負担がかかると影響を受けやすくなります。
目の症状が起こる原因は、網膜や硝子体に向かって伸びてきた血管壁が破れてしまい、硝子体に出血してしまうことだと言われています。
眼球の大部分を構成している硝子体で出血が起きると、黒い点やゴミのようなものが飛んでいるように見える飛蚊症(ひぶんしょう)を生じやすくなります。出血量が多い場合には急激な視力低下を起こすこともあります。
体重が減る
膵臓から出るインスリンの量が少ない、もしくはインスリンが作用しづらい場合、身体に取り込んだ糖分をエネルギーに変換することが難しくなります。
糖分がエネルギーとなってくれない場合に次のエネルギー源として活用されるのが、体内の脂肪や筋肉に含まれるタンパク質です。
タンパク質をエネルギー源として分解してしまうため、食べても痩せるという状態となります(決していい痩せ方ではないです)。
疲れやすくなる(易疲労性)
高血糖の状態が続くと、身体に取り込まれた糖分を適切に活用することができなくなります。身体が必要としている量の糖分をエネルギー源として活用できないため、エネルギー不足として疲れやすくなります。
特に、空腹時の血糖値が250mg/dl以上の場合は疲労感に加えてその他の症状も出やすくなると言われています。
意識障害
高血糖状態が続くと、糖質を分解するためのインスリンが不足します。
「体重が減る」の項目にもあったように、インスリンが不足して糖分をエネルギー源にできなくなると脂肪を分解し始めます。脂肪を分解する際にケトン体という酸性物質が蓄積するのですが、このケトン体が蓄積した状態をケトーシスと呼びます。ケトーシスが溜まり、血中の濃度が酸性に傾いた状態を「ケトアシドーシス」と呼びます。
糖尿病ケトアシドーシスは1型糖尿病の患者さんに多く、糖尿病発症初期やインスリン注射を自己中断したとき、感染症や外傷などにより極端にインスリンが不足したときに起こります。2型糖尿病患者さんでも、感染症や外傷などの強いストレスがあったときや、糖分を多く含むソフトドリンクを大量に飲んだときに起こることもあります。
インスリン注射などでケトアシドーシスを是正しないと
- 高度の脱水状態
- 血圧の低下
- 尿量の減少
- 頻脈
- 意識消失
- 昏睡状態
といった症状に陥ることがありますので、症状や異変に気付いたら、血糖値や尿ケトン体の測定を行い、予防・早期発見することが大切です。
まとめ
本記事では高血糖症状について解説してきました。
軽度の糖尿病では症状に気づかないこともありますが、健康診断などで行うような血糖値のチェックと自覚症状を照らし合わせながら、当てはまるものがあれば適切な治療を受けましょう。