世界最大級の写真イベント【PARIS PHOTO パリフォト2019】 レポート
日がすっかり短くなり、早くも冬の気配が漂う11月のパリ。
一年で一番苦手な気の滅入る季節というパリっ子が少なくない時期だが、世界最大級の写真イベント【PARIS PHOTO(パリフォト)】が、沈みがちな気分を盛りたててくれる。
世界中から名門写真ギャラリーが集い、自慢の写真家たちの作品を発表し売買するこのイベント。今年の一般公開は去る7日から10日までの4日間で、各国の美術館関係者や写真コレクターをはじめ、純粋に写真好きの老若男女が詰めかけ、会場のグラン・パレは熱気に包まれていた。
回を重ねて今年で23回目となるこのイベント。年々右肩上がりで発展を続けていて、出展した写真ギャラリーも出版社の数も昨年を上回り、期間中の入場者数は70598人と、昨年からさらに2.5パーセント増を記録した。
ガラス屋根のパリのモニュメント的な建物、グラン・パレを埋め尽くす写真、写真、写真。スタンドをすべてくまなく回ろうと思えば、丸一日かける覚悟が必要だ。写真はそれぞれの出展者がセレクションしているので千差万別。一昨年にもここで書いたが、パリフォト初期の頃には、よくいえばインパクトの強い、悪く言えばちょっと脅かしの入ったようなグロテスクな作品の存在感が強く、それを写真草創期の19世紀後半から20世紀前半のセピア色のヴィンテージブリントが癒してくれていたような印象だった。だが、このところは現代作家の作品がどんどん充実してきているように思う。もちろん現代の写真と言っても、ありとあらゆる表現世界があるのだが、パリフォトに集まる作品を概観すると、その時の時代の気分のようなものが反映されている印象を受ける。
筆者があえて今年のキーワードを2つ挙げるとすれば、「地球」と「女性」。
人類の月面着陸から50年目、エクステンション・リベリオンの活動が目覚ましい今年。地球、自然というテーマに写真家たちが向かい、ギャラリーもまたそういった作品により関心を向けていたことが感じられる。また、「女性」は被写体として、いや写真が生まれる前の絵画の時代からずっと永遠のテーマである。今年の場合、Me Tooムーブメント以来の傾向だろうか、例年に比べて裸体は少ないような感じで、むしろあらゆる肌の色の女性たちをファッション性も伴って美しく表現した作品が目を引いた。今回のポスターに採用された写真もアーティスティックなヘアスタイルの黒人女性だったし、ウイリアム・クラインの大判作品、そして写真集のセクションでは、ピーター・リンドバーグが撮ったディオールの女性たちなど、一般にも馴染みのあるビッグネームの展示に注目が集まっていた。
百聞は一見にしかず。今年のパリフォト会場での数点をお目にかけよう。
さてこのイベント、来年には初めてニューヨークでの開催が予定されている。会期は4月2日から5日。
ますます世界規模になってゆくパリフォト。写真マーケットの伸びしろがまだまだあることを物語っているようだ。