世界が注目する写真イベント Paris Photo パリフォト
パリではレベルの高い展覧会が常に開かれているが、特に11月は写真月間。美術館やギャラリーがこぞって力の入った写真展を開催する。
中でも最も注目を集めるイベントが「Paris Photo(パリフォト)」。世界各国の有名写真ギャラリーが一堂に集い、代表的な作品を披露し売買するサロンである。
回を重ねて今年は21回目。年々パワーアップしていて、189のギャラリー、書店が30か国から集結し、去る11月9日から12日までグランパレを舞台にして開催された。
入場料30ユーロ(約4000円。週末料金は32ユーロ)、冷たい雨が降る週末にかかってしまったが、プレオープンの日も含めた5日間での来場者数は64542人を記録。これは前年比4.1パーセント増という数字で、コレクターや世界中の美術館などが買い付けた具体的な額までは明らかにされていないが、各出展者がかなり満足のゆくビジネスができたようだ。
ところで、このパリフォト。初期の頃から世界で最も注目を集める写真サロンだったことには変わりがないが、かつてはルーブル美術館の地下で今よりも小規模に行われていた。筆者はその頃から注目してきたが、近年、会場はより広くプレステージの高いグランパレとなって規模が増しただけでなく、出展写真のクオリティが上がってゆく印象を受ける。あくまで私見だが、かつては玉石混交で、同時代の作品としてはグロテスク、あるいはショッキングな被写体を大画面にしたものがインパクトを与えていて、写真草創期のセピア色の小品に癒される思いがした。だが、昨今はそういった、言ってしまえばえげつない作品がなりを潜め、大画面でも静謐に感銘を与えてくれるような写真が目につく。
もちろん、観る人によって好みは様々だから、何をよしとするのかは意見が分かれるところ。歴史に名を遺した写真家たちのオリジナルプリントを買い付けに来るコレクターもあれば、これからブレイクするかもしれない若手を先物買いしようという美術館関係者もいるだろう。
そんなふうに時代もテイストも様々な、ありとあらゆるジャンルの写真が隣り合わせになっているのがこのサロンの良さでもあるのだが、ともすると、写真の洪水の中に身を置いているような気分になりがち。そんな向きには、今年の特別ゲスト、カール・ラガーフェエルドの視点で選ばれた写真に注目してみるのが一つの道しるべになる。「シャネル」のデザイナーでもあるファッション界の重鎮にして写真家でもある彼の感性で、出展作の中からあらかじめ200点ほどが選ばれていて、それとわかる印が付いている。
会場を回っていて、気に入った作品の横に彼のサインを認めて、「あ、これも」と、趣味の一致を知るのはなかなか面白くもあり、また、その作品がより多くの人の共感をよぶ証とも言える。
百聞は一見にしかず。写真そのものにこのサロンを語ってもらうべく、以下会場の様子と合わせて、いくつかの作品をご紹介したいと思う。
ちなみに、2020年まではグランパレでの開催がすでに決定していて、来年2018年は11月7日から11日に予定されている。