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「AIに選考されるのは嫌?」就活生からは拒否反応…しかしAI採用は学生にもメリットあり?

酒井一樹就活SWOT代表
(提供:アフロ)

昨年頃から、「採用選考にAIを導入する」という企業の話題が増えてきた。

このYahoo!ニュース個人でも昨年下記の記事を掲載している。

関連:採用選考に続々導入される「AI(人工知能)」の現状とメリットとは

この時にAI選考を実施すると名前が出ていたのが、ソフトバンクやサッポロHD。サッポロHDはエントリーシート選考にかかる時間を40%削減する事に成功し、AI選考を本格導入しているという。

最近では横浜銀行がFRONTEOの人工知能エンジン「KIBIT」を利用してAI選考(エントリーシート選考)を行うというニュースも話題になった。

しかしまだまだ黎明期であり、「導入した」というだけでニュースにされるほど導入企業は少ない。

普及はまだまだこれからであるとは思われるが、導入を検討しつつも踏み切れないという企業も多いようだ。

【学生からは拒否反応も】

同時に最近よく話題になっているのが「AIに選考されることへの抵抗感」について。中にはAIによる選考に抵抗を感じる学生もいる。

2018年3月に行われた株式会社ディスコの学生向け調査では、過半数の学生が「AIに選考される」事に反対したという。

http://www.disc.co.jp/uploads/2018/03/2019monitor_201803.pdf

同じく3月に実施されたHR総研と楽天みん就の調査でも、賛成より反対する学生が多く、特に文系学生からは反対が多いという結果になっている。

https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=205

導入企業ではAIで不合格になった候補者を人間の目で再チェックするなど、「AIによる取りこぼし」を防ごうという考えも見受けられる。

【AIに学習させるためのデータが必要】

しかし現時点でAI選考の導入企業が少ないのは、別に学生の拒否反応に配慮しているからではない。

AIによる選考を企業が簡単に始められないのは、学習させるためのデータが必要になる事が最大の理由だ。

AIで選考を行う内容としてはエントリーシートや初歩的な自己PRを述べるだけの面接などが考えられるが、人工知能も万能ではなくデータも何もないところから勝手に選考を行ってくれるわけではない。

もしエントリーシートの選考をAIにさせたいのであれば、「どのようなエントリーシートを合格にし、どのようなエントリーシートを不合格にするか」という事例をなるべく大量に用意しなければならない。

(この、AIに学習させるための事例が教師データと呼ばれる)

この点、学生からも知名度がある大企業であれば、エントリーシートを提出する学生数も年に数万人に及ぶ。

その過去の選考での評価を入力していくことでAIが「通過させてよい学生」を学習していくのだ。

学習させるためのデータが多ければ多いほど精度は高まり、担当者の工数削減も期待できる。

逆に、学習させるためのデータが少なければ担当者の工数も大して削減できない上、精度も期待できないという事になる。

言うまでもなく、学習用の選考データを用意するのは規模が大きくない企業にとって非常に難しいことだ。

特に今は選別以前に応募者獲得に苦心している企業も多く、極端な話「エントリーした学生全員に会う」「エントリーシートは不要で説明会(兼選考会)に呼ぶ」というような企業も多い。

早い話、AI選考で効率化する以前に母集団形成で悩んでいる企業の方が大多数なのだ。

【AIによる書類選考は公平?】

前述したように「AIに選考されるのはなんとなく嫌」と感じる学生もいるようだが、企業はどう考えているのだろうか。

企業側の声として、AI選考は効率化以外に「客観的・公平に評価したい」という想いがある。

人事自らESを読んで選考するというのは、一見すると誠実に思えるかもしれないのだが、一方でどうしてもその人事の「主観」が入る余地がある事も否定できない。

また、就職人気企業ランキングで上位に顔を出す企業では数万通、十数万通に及ぶこともある。そのような企業において、万単位で届くエントリーシートを「内容を読んだ上で」公平に選別する事が可能と思われるだろうか?

実際のところ、そのような企業に提出されたエントリーシートは全部読まれる事はない。

物理的に考えてみてほしい。仮に1人のエントリーシートを1分で処理したとしても、1万人がエントリーするのであれば全て読むためには約166時間が必要になる。

1日8時間かけても約21営業日。つまり一ヶ月ひたすらエントリーシートを読み続けてようやく読めるかどうかという計算だ。

当然ながら人事の仕事はエントリーシートを読むことだけではないので、すべての学生のエントリーシートを読むことは物理的に不可能なのだ。複数の人事担当者で手分けしても、当然ながら主観の問題が出てくる。

そこで現実的な落とし所としては「ボーダーライン上の学生のエントリーシートだけ読んで選考する」という方法などが考えられる。

どういう事かというと、

「通過する可能性が高い大学の学生は読まずに合格」

「通過しない可能性が高い大学の学生は不合格」

「ボーダーライン上の大学の学生は内容を見て判断」

という分け方だ。

これは企業が「学歴フィルター」に頼らざるを得ない理由の1つになっている。

学歴以外では、筆記試験の結果などを考慮される事もある。

つまり学歴や筆記試験の結果により予備選抜ラインより遥か上であったり下であったりすると、少なくとも書類選考の段階ではエントリーシートの内容まで読む必要がないという事だ。

(誤解しないでいただきたいが、「だからエントリーシートは適当に書いて良い」という話ではない。仮に書類選考の段階で読まれていなかったとしても、面接やリクルーター面談に進んだ際の担当者が読む事になり、面接に影響するからである。)

もちろん全ての大企業がそういったやり方をしているわけではない。

しかし、そういったやり方でなければ本当に応募者の多い企業ではエントリーシートを処理しきれないのだ。

だから「せっかく頑張って書いたのだからちゃんと読んで評価して欲しい」と思うのであれば、むしろ人力でのES選考ではなくAIによるES選考を望むのが妥当な考え方だと言える。

物理的に処理しきれず学歴フィルターが使われている現状であるからこそ、AI選考が普及すれば学歴フィルターに頼る企業が減る事も期待できるのではないだろうか。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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