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エコなイベントづくり、植物性ミルク・ゴミ分別・EV 北欧ノルウェーの事例

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
持続可能なイベントづくりのヒントとは(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

北欧ノルウェーの首都オスロで、気候危機の原因となる二酸化炭素などの排出量ゼロを目指すための会議「ゼロ・カンファレンス」が開催された。

王室関係者、首相や閣僚、環境団体、企業などが集まり、互いの目標や対策を発表しあい、人脈を広げ、インスピレーションを与え合う場所だ。

このような催しでは、会場中でサステイナブルな工夫を見ることもできる。

ノルウェーで有名なゼロエミッション会議Zerokonferansen Photo: Asaki Abumi
ノルウェーで有名なゼロエミッション会議Zerokonferansen Photo: Asaki Abumi

ゴミの分別は6種類

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

ゴミの袋は6種類あり、以下に分けられる。

  • 食べ物
  • いろいろと混ざったゴミ
  • ガラスとメタル
  • プラスチック
  • パント(デポジット式の飲料水容器。後でお金が返却される)

「食べ物」のゴミ袋には、たくさんの紙コップなどが入っている。実はこれは、来場者が間違えて捨てているのではない。会場で使用されている食器の多くが、生分解性プラスチック、堆肥化(コンポスト化)が可能なのだ。

食べ物用のゴミ箱が、紙とフォークだらけになる理由

コップやフォークには「完全に」・「100%」生分解性・コンポスト化可能と表記されていることが大事だ(50%しか自然分解できなければ、ゴミ処理で問題が発生)。

「完全にコンポスト化可能」と表示されているコーヒーの紙コップ Photo: Asaki Abumi
「完全にコンポスト化可能」と表示されているコーヒーの紙コップ Photo: Asaki Abumi
何をどこに捨てるかは、来場者にもわかりにくい。注意書きが手書きで付け足されていた。食べ物用のゴミ箱には「100%リサイクル可能と書かれているコップやフォークは、ここに捨てくださいね」。白いフォークもプラスチックに見えるけど、生分解性なので、生ごみと一緒に捨てる Photo: Asaki Abumi
何をどこに捨てるかは、来場者にもわかりにくい。注意書きが手書きで付け足されていた。食べ物用のゴミ箱には「100%リサイクル可能と書かれているコップやフォークは、ここに捨てくださいね」。白いフォークもプラスチックに見えるけど、生分解性なので、生ごみと一緒に捨てる Photo: Asaki Abumi
多くの食器や包装紙が生分解性・コンポスト化可能だと、「食べ物」用のゴミ箱が、紙だらけという不思議な光景になる Photo: Asaki Abumi
多くの食器や包装紙が生分解性・コンポスト化可能だと、「食べ物」用のゴミ箱が、紙だらけという不思議な光景になる Photo: Asaki Abumi

工場現場の機械や郵便局の配送車は、電気で動く

電気自動車EVの先進国として有名なノルウェー。会場には、EVがもちろん展示されている。

車だけではなく、公共機関の乗り物や自治体が管理する工事現場の建設機械なども、どんどん電動化されている。

会場の外にある赤い車は、郵便局の配送車。EVであることを示す「EL-BIL」の文字が表示されている Photo: Asaki Abumi
会場の外にある赤い車は、郵便局の配送車。EVであることを示す「EL-BIL」の文字が表示されている Photo: Asaki Abumi
ノルウェーを観光することがあれば、街を走る車をぜひ見てほしい。EVばかりが走っていて、驚くだろう Photo: Asaki Abumi
ノルウェーを観光することがあれば、街を走る車をぜひ見てほしい。EVばかりが走っていて、驚くだろう Photo: Asaki Abumi

世界初の排出量ゼロの工事現場

オスロのOlav V通りは、世界初の排出量ゼロの工事現場とされている。歩道を作る工事は、来年終わる予定。

オスロ市庁舎のすぐ側いある通りの工事現場。通行者や観光客は、電動化された建設機械を目にすることができる Photo: Asaki Abumi
オスロ市庁舎のすぐ側いある通りの工事現場。通行者や観光客は、電動化された建設機械を目にすることができる Photo: Asaki Abumi
「ここは歩道になります。排出量ゼロの工事現場です」という説明。首都中心部はカーフリー化が進み、車の駐車場だった道路は、歩行者や自転車乗り場のための場所に変わっている  Photo: Asaki Abumi
「ここは歩道になります。排出量ゼロの工事現場です」という説明。首都中心部はカーフリー化が進み、車の駐車場だった道路は、歩行者や自転車乗り場のための場所に変わっている  Photo: Asaki Abumi

会場の飲み物に、牛乳はない

私は普段から環境や気候に関するイベント会場によく行くが、スウェーデン、デンマーク、フィンランドでも、「牛のミルク」は見かけなくなってきている。

家畜によるメタン排出量が原因で、気候変動対策のためには、食生活の見直しが問われる。

肉を食べる量を減らすだけではなく、牛乳から植物性ミルクへの転換が、北欧では目に見えるスピードで起きている。

会場には、北欧の植物性ミルクの代表、スウェーデン発祥のオートミルク「Oatly」が。ほかにも欧州企業「alpro」の豆乳があった Photo: Asaki Abumi
会場には、北欧の植物性ミルクの代表、スウェーデン発祥のオートミルク「Oatly」が。ほかにも欧州企業「alpro」の豆乳があった Photo: Asaki Abumi

プラスチックの食器はもちろんない

プラスチック製のストロー、フォーク、スプーン、お皿などはもう見かけなくなった。食べ物にも当然のように、動物性の肉はない Photo: Asaki Abumi
プラスチック製のストロー、フォーク、スプーン、お皿などはもう見かけなくなった。食べ物にも当然のように、動物性の肉はない Photo: Asaki Abumi

コーヒーの残りかすは再利用

「かすは捨てずに、再利用します」と来場者にもアピールを忘れない。「そうだ、廃棄物にも価値がある」というアイデア拡散にもつながる Photo: Asaki Abumi
「かすは捨てずに、再利用します」と来場者にもアピールを忘れない。「そうだ、廃棄物にも価値がある」というアイデア拡散にもつながる Photo: Asaki Abumi

北欧はコーヒーの消費量がトップだ。会場では、誰もが何杯ものコーヒーを飲む。たくさんの「かす」は、食用キノコの肥料などに再利用される。

SDGs達成のヒントは日常生活に

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

SDGsのロゴは、今はどこでも見るものとなった。

目標 6「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」

目標 11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」

など、ゼロ会議が特に目指す目標が、分かりやすく展示されている。

・・・・・

イベント会場のデザイン設計で、人の思考に影響を与えることは可能だ。

会場環境のこだわりは、主催者やイベント自体の「価値観」を反映する。

私はこのような取材場所で、ゴミ分別や配布資料、会場設計、提供される飲食物などから、「こういうことも、できるんだ」と、わくわくする刺激をもらうことが多い。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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