気候変動とコーヒーとSDGs 企業や焙煎士にできるサステイナブル対策
気候変動が進むと、いつかコーヒーが飲めなくなるかもしれない。
そのために、私たちには何ができるだろうか?
北欧を中心とした各国の焙煎業者が集まるノルディック・ロースター・フォーラム(Nordic Roaster Forum)が、ノルウェーの首都オスロで4・5日に開催された。
豆の焙煎を競い、成長につなげる場
垣根を越えて、みんなで一緒に学び・行動しようという考えのもと、焙煎した豆を評価する競技に加えて、内容が濃いセミナープログラムが催される。
豆の焙煎競技では、来場者たち全員が審査員となり、カテゴリー別で味に得点をつける。
総合結果の結果は、
1位 ティム・ウェンデルボー(Tim Wendelboe)ノルウェー
2位 カッファ(Kaffa) ノルウェー
3位 エイプリル・コーヒー・ロースターズ(April Coffee Roasters) デンマーク
コーヒービジネスとSDGs
今年の勉強会のテーマは「サステイナビリティ」。
環境負荷を減らすために、サステイナブルなコーヒー・ビジネスモデルについて、専門家による解説、企業の取り組みに関する情報が共有された。
焙煎士にとってインスピレーションになる場
北欧のスペシャルティコーヒー界のレベルを発展させ、大会の執行委員会メンバーのひとりでもあるティム・ウェンデルボー氏。
「サステイナビリティは重要なテーマです。自分たちには何ができるか? 参加する焙煎士たちにとって、インスピレーションとなるような内容の講演プログラムにしました」
「焙煎士たちにも、できることはたくさんあります。小さいことからのスタートでいいんです。LED照明に変える、使用する電気量を減らす、焙煎機のガスを効率的に使うとか」
「日本では素晴らしい包装をする傾向がありますが、必ずしも環境に良いとは限りません。包装を減らすことは可能か?その地域にあった解決策を探す必要があるでしょう」
質問:このテーマにあまり関心がない人がいたとします。ウェンデルボーさんの会社は、このようなお客さんと、どのようにコミュニケーションを図っていますか?
「インスタグラムや公式HPでは、農地での植林など、私たちの取り組みをお知らせしています」。お客さんの関心があるかないかは関係なく、責任ある企業として、環境負荷を増やさないようにしていると取材で語る。
「子どもや孫のための未来を思うなら、ひとりひとりが行動するべきです」。
同氏のカフェでは、コーヒーかすを別会社に提供し、かすは石鹸、スクラブに生まれ変わる。テスト豆は安い価格で販売したり、売り上げをシェード・ツリー(木を直射日光から遮る日陰樹)植樹のために活用したりしている。
飛行機に乗る回数を減らす、コーヒーかすはスクラブに
スウェーデンの焙煎業者「Mutley & Jack's」社のジャック・ライアン氏は、どのようなエコ対策をしているのだろうか。
「私は飛行機に乗る回数を減らしたり、焙煎機からのガス量を減らすために、1日で集中的に焙煎作業を終わらせたりしています。販売しないテスト豆は捨てずに、美容会社に寄付し、コーヒー・スクラブにしてもらっています」と語る。
化石燃料に由来するプラスチックは避ける
スウェーデンのオーガニック・コーヒーのバイヤー大手企業であるロフベルグス・コーヒーグループ社(Lofbergs Coffee Group)。
パッケージには、化石燃料に由来するプラスチックではなく、サトウキビなどの植物由来のプラスチックを使用している。素材が責任をもった環境下で育てられていることを保証する、第三者機関による認証にもこだわる。
コーヒーカップのフタをどうする?
カップのフタは紙製にし、「不必要なプラスチックやフタの使用はできるだけ避ける。生分解性は必ずしもベストとはいえず、100%再生可能な素材のほうがよい」とロフベルグス社のエリクソン氏は語る。
フタをプラスチックから紙製にした場合、味わいが落ちることがある。そのため、ティム・ウェンデルボー氏が経営するカフェではプラスチック製を今は使用し、別素材の容器を探しているところだ。
「個人以上に企業には大きな責任があります。企業がもっと意識的になり、どのような素材が必要か声をあげれば、製造業者は動きます。企業が変化を望まなければ、技術も発展せず、いままでと状況は変わりません」と、ウェンデルボー氏は話した。
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Photo&Text: Asaki Abumi