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【認知症】なぜ同じ話を何度も繰り返すのか?【介護福祉士が漫画でわかりやすく解説】

こんにちは。認知症のケアサポーター『夢 はるか』です。
わたしはデイサービスや訪問介護の現場で15年以上働く介護福祉士です。
子供の頃から好きだった漫画を描くことを通して、認知症や介護のことを多くの人に知っていただけたらと考え、Yahoo!ニュースへの寄稿を続けています。

認知症の症状として、『同じ話を繰り返し、何度も話す』ということがあります。

わたしがデイサービスで働いていたときにも、女学校の思い出や戦争の体験など、毎回同じ話を繰り返す方が、よくおられました。

わたしたち介護職にとって、繰り返しお年寄りの同じ話を聞くことは慣れた仕事ですが、介護する家族にとっては、イライラや疲れの原因になることも多いと思います。

その理由を知ることで、家族のストレスを軽減できるかもしれません。

今日は、『認知症になると、なぜ同じ話をくり返すのか?』について、いつものようにイラストを交えながら解説していきます。

繰り返しも、本人にとっては『同じ話』ではない

記憶が衰えた認知症の人は、直前の出来事も忘れてしまうことがあります。

そのため、話を聞くほうは、

「また同じ話だ」

と思っても、本人は直前に話したことを忘れて同じ話を繰り返していることがあります。

数分ごとに同じ話を繰り返されると、

「さっきも聞いたよ!」

「しつこい。もういい加減にして!」

と言いたくなってしまいます。

しかし同じ話を繰り返す背景には、記憶力の低下以外にも、何か大切な理由があるのかもしれません。

不安な気持ちを和らげるため

認知症が原因で、それまで出来ていたことがうまく出来なくなり、自信をなくしたり不安感を感じている人もいます。

また、その気持ちや不安な状態をうまく伝えることも、認知症のせいで難しくなります。

そんなとき、自分自身を認めてもらいたい気持ち(自尊感情の維持)や不安感から、『過去の自慢話』を何度も繰り返すことがあります。

昔の話を聞いてもらうことで、抑うつ(気分がふさぎこみ、憂うつな状態)が減少し、生活の質(QOL)が向上する効果が期待されます。

また、自尊感情が満たされ、漠然と感じていた不安が解消されると、同じ話を何度もすることが減ってくることもあります。

とはいえ・・・

毎日、じっくりと話を聞く時間をもつのは、なかなか難しいですよね。

効果的な対処法

・聴く時間を決める

一緒にいる間ずっとではなく、一定の時間を決めて話を聴いてみましょう。

聞く人がストレスにならない程度の、ちょうど良い時間を探してみるとよいと思います。

・他者の力を借りる

認知症の人とその家族の交流や、専門職を交えて情報交換を行う『認知症カフェ(オレンジカフェ)』が全国的に地区ごとに開催されています。

このような地域の社会資源を活用することは、本人にとっても家族にとっても良い影響をもたらすでしょう。

わたしが介護の仕事の中で、ご家族からよく聞く言葉は、

「もっと早く相談すれば良かった」

ということです。

ひとりで真面目に介護に向き合おうとすると、つい無理をして自分の仕事や生活、健康を損なうことになりがちです。

介護者が無理なく介護に関わることは、とても大事なことだと感じます。

決して一人で抱え込むことなく、他の家族と負担を分かち合い、介護サービス、地域のボランティアなど、地域の力も積極的に借りて、無理しない介護を続けていきましょう。

介護福祉士として通所介護(老人デイサービスセンター)や訪問介護(ホームヘルパー)の現場で働いてきました。研究会での発表や、学術誌へのケースレポートの投稿なども積極的に行なっています。また、子どもの頃から好きだった漫画やイラストを描くことで、認知症の知識や介護のコツをわかりやすく伝えることを心がけています。

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