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古の文献をもとに作られた、とらやさんの「亥の子餅」濃密なこし餡と風味豊かなお餅が織り成す人気の味

柳谷ナオ和菓子ソムリエ・ライター

11月7日は「亥の月最初の亥の日」。亥の子餅を食べる日、というのも間違いではないのですが、ひとつ小話を。

源氏物語にも登場する亥の子餅はそれだけ古い歴史があるというのは何となくおわかりいただけるかと思いますが、元々は庶民の間で無病息災を祈る節目の日でした。しかし、宇多天皇の御代から宮中に取り入れられたとされています。

お日保ちは当日中です。お餅が固くなってしまいますので。
お日保ちは当日中です。お餅が固くなってしまいますので。

大河ドラマでもお馴染み、紫式部が生まれたとされる頃にはすでに存在していたようですね。今でこそあんこを包んだお菓子とされていますが、もとは七種(穀類など)を混ぜ込んだお餅を滴型のように成型したお餅ともいわれています。

そして江戸時代になり、「亥の月最初の亥の日」を「玄猪の日」と制定し庶民間のみならず幕府でも慶事として制定されたのだとか。

今回は鎌倉時代頃の文献をもとにお作りしているという「とらや」さんの「亥の子餅」をご紹介。

亥の子餅
亥の子餅

まんまるなお店もありますが、とらやさんの亥の子餅は比較的細長い印象です
まんまるなお店もありますが、とらやさんの亥の子餅は比較的細長い印象です

スラリとスタイリッシュなとらやさんの亥の子餅。きなこが塗されたお餅には、黒胡麻や干し柿を練り込んでおります。また、お餅には糯米だけではなく新粉(うるち米)も加えていることから、伸びやコシだけではなく、むちん!という歯切れの良さと歯応えに富んだ食感も印象的。

きめ細かくざらつきが少ないきな粉です
きめ細かくざらつきが少ないきな粉です

しっかり噛みしめ、きな粉や黒胡麻のエッジの効いた香ばしさや仄かな渋み、そして時折ひょこっと顔を出す干し柿の果肉が仄かな爽やかさを演出。冬が近づき、澄んだ空気が鼻を通り抜けていく感覚が頭をよぎります。

とらやさんといえば、この御前餡
とらやさんといえば、この御前餡

ここで、忘れてはならないとらやさん自慢の御前餡もまた力強い優美さを醸しております。きめ細やかで粒子が整った端正なこし餡は絶妙な深みと濃密さを湛えた重厚感も魅力。それゆえに、個性的なお餅にも負けない華やかなこし餡の風味を損なわず、どことなく複雑な甘みを楽しませてくれます。

菓子切りをお付けしますか?と聞いてくださる心配りたるや
菓子切りをお付けしますか?と聞いてくださる心配りたるや

猪は無病息災のほか、多産ということから子孫繁栄というご利益を司る動物ともいわれています。亥の子餅は大福やお団子に比べると比較的小柄な和菓子ですし、長いところであれば今月いっぱいまでお作りになる和菓子屋さんもあるそうです。

ということは、子孫繁栄にあやかり、あちこちの亥の子餅を食べ比べるというのも…?立冬を迎えても、食欲の秋は終焉を知らず。

最後までご覧いただきありがとうございました。

柳谷ナオ

<とらや・赤坂店>
公式サイト(外部リンク)
東京都港区赤坂4-9-2203-3408-2331
9時~18時(土日祝 9時30分~)
定休日 毎月6日(12月を除く)

和菓子ソムリエ・ライター

■年間400種を優に超える和菓子を頂く和菓子ソムリエ&ライター。美味しさだけではなく、職人さんやお店、その土地の魅力をいかに伝えるかに重きを置いて執筆中! ■製菓衛生士免許所持・製造・販売・百貨店勤務経験有 ■和菓子・お取り寄せ・お土産・アンテナショップ・都内物産展&催事・和菓子とお酒&珈琲&ノンアルコールとのペアリングなどの執筆や取材、監修を得意としています。

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