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トランプやメイウェザーも巻き込んだ、今年40回目のプロレス界最大の祭典「レッスルマニア」とは?

清野茂樹実況アナウンサー
WWEに参戦したトランプ(写真:Scott R. Galvin/UPI/アフロ)

「プロレス界最大の祭典」と呼ばれるWWEの「レッスルマニア40」が来月7日と8日、米国ペンシルバニア州フィラデルディアにて開催される。2日間で約16万人の動員が見込まれる巨大プロレス興行は、なぜこれほど多くの関心を集めるのか?今年が40回目となる同大会の特徴と歴史について改めて解説する。

新しいプロレスの誕生

「レッスルマニア」の歴史が始まったのは今から39年前、1985年3月31日である。WWEの経営を父から継いだビンス・マクマホンが仕掛けた興行で、人気者のハルク・ホーガンを看板にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンを満員にした。俳優のミスターTとホーガンにタッグを組ませ、歌手のシンディ・ローパーやヤンキースの監督を起用するエンタメ性の高いプロレスは過去に例がなく、大規模なクローズドサーキット中継も斬新だった。派手な演出と映像で多くの人に熱狂(マニア)を届ける、新しいプロレスが生まれた瞬間である。

莫大な経済効果

これ以来、「レッスルマニア」は春の恒例行事として回を重ねてきた。開催地は毎年変わり、会場には全米中はおろか、世界中からプロレスファンが押し寄せるため、会場周辺で興行を組む団体もいくつか現れている。街自体がプロレスで染まる「レッスルマニア」の開催による経済効果は1億6500万ドル(約249億5500万円)とも言われており、都市による誘致活動も活発だ。2020年からは2日間にわたる開催が定着。会場の規模は大きくなる一方で、ここ数年は5万人以上収容する巨大スタジアムが使用されるのが通例である。

巨額の費用を投じる演出

イベントの内容はもちろん試合が中心だが、これほど巨大化したのはプロレスの外にも届かせる工夫の積み重ねだ。通常とは異なる試合形式も多く用いられ、著名人も引っ張り出す。のちに大統領となるドナルド・トランプとマクマホンが敗者髪切りマッチで対戦したり、ボクシング6階級王者のフロイド・メイウェザーがプロレスの試合をしたこともある。興行は愛国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」の独唱で始められ、このために一流の歌手を招く。とにかく、巨額の費用が投じられる豪華さで観る者を圧倒するのだ。

殿堂入りの功労者を表彰

また、試合の前日に「ホール・オブ・フェイム(殿堂)」として、功績のあるレスラー・関係者を表彰しているのも「レッスルマニア」の大きな特徴である。受賞者はドレスアップした姿でスタンディングオベーションで迎えられるのだ。故人を含めたオールドタイマーは人種、性別、職業に関係なく選ばれ、今年は日本からブル中野が名を連ねている。外に向けた派手な演出で世間の関心を集めながら、内に向けた殿堂でプロレス文化に敬意を払う温故知新の姿勢が、実に絶妙なのである。

そんな巨大イベントも40回目。今年は興行を立ち上げたマクマホンが経営から退き、新たな局面を迎える。ホーガンから始まってアルティメット・ウォリアー、ランディ・サベージ、ブレット・ハート、ショーン・マイケルズ、アンダーテイカー、スティーブ・オースチン、ザ・ロック、ジョン・シナなど、時代を映すスーパースターを数多く生み出してきたこのイベントから、今年はどんな顔が生まれるのか?世界最大のプロレス団体が本腰を入れる熱狂の興行から目が離せない。

※文中敬称略

実況アナウンサー

実況アナウンサー。1973年神戸市生まれ。プロレス、総合格闘技、大相撲などで活躍。2015年にはアナウンス史上初めて、新日本プロレス、WWE、UFCの世界3大メジャー団体の実況を制覇。また、ラジオ日本で放送中のレギュラー番組「真夜中のハーリー&レイス」では、アントニオ猪木を筆頭に600人以上にインタビューしている。「コブラツイストに愛をこめて」「1000のプロレスレコードを持つ男」「もえプロ♡」シリーズなどプロレスに関する著作も多い。2018年には早稲田大学大学院でジャーナリズム修士号を取得。

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