ルセラとNewJeansの記録を塗りかえた、ILLITのデビュー曲「Magnetic」の凄さ
BTSが所属する事務所としても有名な「HYBE」からデビューした「ILLIT(アイリット)」というグループが、いきなり数々の記録を塗り替える凄い偉業を成し遂げているのをご存じでしょうか?
ILLITは韓国人3人、日本人2人の5人組で、3月25日に「SUPER REAL ME」というミニアルバムをリリースしてデビューしたばかりのガールズグループ。
そのタイトル曲である「Magnetic」は、リリース初週に韓国のチャートで1位になっただけでなく、日本の様々なチャートにもいきなりトップ10入り。
さらには、米ビルボードの最新グローバルチャートにもいきなり63位でランクインを果たし、K-POPのガールズグループのデビュー曲として様々な新記録を樹立しているのです。
参考:ILLIT(アイリット)韓国の人気音楽番組で1位を獲得し、喜びの涙!米ビルボードチャートも席巻
K-POPのガールズグループと言えば、ILLITの先輩グループにあたるLE SSERAFIMやNewJeansが世界的な活躍を見せていますが、今回ILLITはその偉大な先輩グループの記録も次々に塗り替えていることになります。
実際にGoogleにおける「ILLIT」の検索の推移をGoogleトレンドで比較してみると、2年前のLE SSERAFIMやNewJeansデビュー時の勢いを上回るレベルで検索数が跳ね上がっていることが分かります。
(※ご指摘を受けて表現を修正しました。)
ILLITのデビューまでの軌跡をさかのぼってみると、これまでのHYBEの成功パターンに加えて、今回明確に新しいアプローチが強化されていることが見えてきますので、ご紹介したいと思います。
基本的なK-POPの成功の方程式は踏襲
まず、今回の「ILLIT」においても、当然ながら従来のHYBEやK-POPの他のグループの成功の要素となってきた取り組みはしっかりと実施されています。
■オーディション番組からのファン巻き込み
■複数のSNSアカウントでデビュー前から情報発信
■Weverseでより深いファンコミュニティ形成
■HYBEのYouTubeからの楽曲配信
そもそも、「ILLIT」は、「R U Next?」という次世代グローバルガールズグループの最終メンバーを決めるオーディション番組の合格者から作られたグループです。
日本ではアベマで配信されており、番組の冒頭で明確に「LE SSERAFIM」と「NewJeans」に続く次世代のガールズグループを生み出すことが、HYBE代表のパン・シヒョクさんにより宣言されています。
こうしたグループ形成前にオーディション番組を通じてファンをつくっていく手法は、日本でもNiziUやBE:FIRSTなど様々な成功事例がありますので、詳細の説明の必要はないでしょう。
参考:【ILLIT(アイリット)】メンバー5名のプロフィール紹介 『R U Next?(アーユーネクスト/アユネク)』から誕生
さらに昨年9月にオーディションの結果が出て、グループの結成が決まってからすぐにSNSのアカウントを各プラットフォームに同時に作成。
デビューの半年前から積極的なファンとのコミュニケーションを開始しています。
また、HYBEは自ら「Weverse」というアーティストのファンコミュニティプラットフォームを運営しており、「ILLIT」に関しても、SNSアカウント開設と同時にコミュニティもオープン。
デビュー前からファンコミュニティの形成に注力されていることが分かります。
参考:[NOTICE] ILLITコミュニティオープンのお知らせ
さらに、HYBEでは基本的にBTSのような既存の多数のファンがいる人気アーティストも、新人グループもHYBEのYouTubeアカウントに楽曲が掲載されます。
そのチャンネル登録者数はなんと7440万人。
今回の「ILLIT」も、デビュー前から様々なティザー動画がこのYouTubeチャンネルに投稿されており、こうした様々な取り組みが、「ILLIT」のスタートダッシュに大きく貢献していることは間違いないでしょう。
一方で、こうした手法の組み合わせは、LE SSERAFIMなどのデビューでも見られたもので、特段K-POPの世界では目新しいものではありません。
参考:宮脇咲良と「ル セラフィム」の鮮烈デビューに学ぶ、世界的ヒットのつくりかた
今回の「ILLIT」のデビューが、「LE SSERAFIM」や「NewJeans」の記録も上回る結果になったのには、明らかにもう一つ大きな要素が加わっています。
それは「ショート動画とダンスチャレンジ」です。
リリースから10日でTikTokに20万本の動画投稿
今回の「ILLIT」のタイトル曲である「Magnetic」は、非常に印象的なダンスがサビの部分に組み込まれています。
そして、それを強調するかのように、デビュー日の3月25日以降、メンバーによるダンスのショート動画がTikTok、Instagramのリール、YouTubeショートなどに公式から次々にアップされているのです。
デビューの翌日からはメンバーと、他のアーティストやグループとのダンスコラボ動画が次々にアップされていますし、2日後に早くも倍速のスピードアップバージョンも公開されているのが象徴的と言えます。
明らかに、たくさんのショート動画を通じて、世界中のILLITのファンやショート動画視聴者に、ダンスへの挑戦を呼びかけているのです。
この取り組みが大きく成功していることは、既にリリースから2週間弱しか経過していないのに、「Magnetic」を使った動画がTikTokにはなんと20万本、Instagramのリールにも10万本も公開されていることが物語っています。
TikTokのダンスチャレンジを通じて世界で大ヒットしている楽曲と言えば、日本ではCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が有名ですが、その「Bling-Bang-Bang-Born」でも最初の2週間での動画投稿数は4万5千本ほどで、昨年大ヒットしたYOASOBIの「アイドル」も6万本でした。
参考:ついに世界1位も獲得。勢いが止まらない「Bling-Bang-Bang-Born」の凄さ
単純比較すると、ILLITの「Magnetic」は、「Bling-Bang-Bang-Born」や「アイドル」の3〜5倍の勢いでユーザーの投稿動画を増やしていることになるわけです。
TikTokなどのショート動画におけるダンスチャレンジのブームが、楽曲のヒットに直結することは、新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」が3年越しで大ヒットしたように、日本でも広く知られるようになってきている事実です。
参考:「オトナブルー」のトレンド大賞獲得にみる、時間を越えてヒットを生むTikTokの可能性
今回のILLITの「Magnetic」は、それを最初から狙って見事に大ヒットにつなげることができた事例と言えそうです。
HYBEはTikTok活用の独自路線を模索
2月に、世界の音楽レーベル最大手であるユニバーサルミュージックグループが、TikTokとの交渉が決裂した結果、TikTokから所属アーティストの楽曲を全て引き上げるという判断をし、HYBEの看板グループであるBTSの楽曲もTikTokから全て消えるというニュースが大きく注目されました。
参考:映像に入れたBTS・BLACKPINKの歌が消える…TikTokに起きた異変
その後、実はHYBEは3月27日にユニバーサルミュージックグループと10年の長期契約を締結した際に、「グローバルアルバム・音源流通を独占的に任せる一方で、今回の流通契約の対象から韓国、中国、日本、TikTok・YouTubeなどのSNSは除外された」と報道されています。
参考: HYBE、米ユニバーサルミュージックと10年のグローバル独占流通契約 大物海外アーティストがWeverse加入の可能性も
この発表と同時期にリリースされた今回のILLITの「Magnetic」の、TikTokも含めたショート動画のダンスチャレンジ展開は、そうしたHYBEのユニバーサルミュージックとの棲み分けを選択した流通戦略の一つの結果とみることができるかもしれません。
日本のアーティストとのコラボにも注目
日本人にとって嬉しいニュースなのは、そんなHYBEの最新の戦略の元に世界的大ヒットをしているILLITに、日本人メンバーが2人も参加しており、日本を意識した活動をしてくれている点でしょう。
アベマでオーディション番組が放送されていたこともあり、オーディションの様子やメンバーの背景も日本語で知る手段がたくさんあります。
また、なんと、早速来週に放送される「世界の果てまでイッテQ!」でガンバレルーヤさんとコラボを披露されているそうです。
参考:ILLITが日本の地上波番組デビュー、「イッテQ」でガンバレルーヤとダンス
既に海外にファンが増えている彼女たちと、日本のアーティストとのコラボが増えれば、日本のアーティストが海外に知られるきっかけにもなるはず。
まだデビューして2週間経っていないILLITですが、今後日本でも注目度が上がることは間違いないと思います。
彼女たちやHYBEの新しい挑戦に日本のアーティストも刺激を受けて、同様のチャレンジが増えることを期待したいと思います。