真田広之「SHOGUN 将軍」がゴールデン・グローブ賞でも快挙。映像作品にも日本人気の波が来るか
2025年もまだ始まったばかりですが、日本の映像業界にとって最高の1年のスタートとなるニュースが飛び込んできました。
アカデミー賞の前哨戦として紹介されることも多いゴールデン・グローブ賞において、真田広之さんがプロデューサーを務めた「SHOGUN 将軍」が作品賞を含む4冠獲得の快挙を達成したのです。
参考:「SHOGUN 将軍」がゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞!真田広之さん浅野忠信さんアンナ・サワイさんに続き4冠達成
もちろん、「SHOGUN 将軍」が既に昨年9月に発表されたエミー賞において、18部門受賞の快挙を成し遂げていたことを踏まえると、今回の受賞も順当と見る方も少なくないかもしれません。
ただ、実は今回のゴールデン・グローブ賞には、年末に配信された「イカゲーム2」が異例のノミネートをされており、「SHOGUN 将軍」の最大のライバルになると予想されていました。
参考:「イカゲーム2」配信前なのにノミネートされた舞台裏 悲願のゴールデングローブ賞獲得なるか!
「イカゲーム」は世界中で大ヒットしたNetflixを代表する韓国のドラマ作品です。
そのシーズン2である「イカゲーム2」を退けての「SHOGUN 将軍」の4冠受賞は、エミー賞とはまた違った意義深いものになったと言えます。
日本語の演技が米国の賞を受賞した意義
また、今回のゴールデン・グローブ賞では、エミー賞では惜しくも受賞を逃した浅野忠信さんが、見事に助演男優賞を獲得したことも、非常に重要なポイントと言えます。
「SHOGUN 将軍」は、セリフの七割が日本語で構成されているという米国発のドラマとしては異例の選択をした作品で、アンナ・サワイさん演じる鞠子を別として、真田広之さんも浅野忠信さんも日本語しか喋れない役を演じています。
日本人の日本語での演技が、ゴールデン・グローブ賞という権威あるアワードにおいて、主演男優賞と助演男優賞というダブル受賞を果たした意味は決して小さくないと言えます。
ゴールデン・グローブ賞では、過去にも韓国の制作会社による「イカゲーム」で、オ・ヨンス氏が助演男優賞を受賞した歴史がありますが、今後同様に日本の制作会社が制作したドラマや映画から、ゴールデン・グローブ賞やエミー賞の受賞者が出る可能性も明確に出てきたわけです。
昨年は「神の雫」や「シティーハンター」も
もちろん、「SHOGUN 将軍」はFXというハリウッドのスタジオ制作の作品ですので、日本の制作会社の作品ではありません。
ただ、日本の映像作品の可能性の芽は、すでに各所で芽吹き始めています。
例えば、昨年は「Hulu」を運営するHJホールディングスが仏米の3社と共同制作し、山下智久さんが主演を務めたドラマ「神の雫/Drops of God」が、国際エミー賞の連続ドラマ部門を受賞しています。
参考:山下智久、国際エミー賞で快挙!主演海外ドラマ「神の雫」が連続ドラマ部門受賞「夢が一つ叶いました」
また、Netflixがホリプロともに制作した映画「シティーハンター」も、「アジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワード」というアジアの映画賞で、最優秀作品賞を受賞した上、主演を務めた鈴木亮平さんが日本人初となる最優秀コメディ部門主演俳優賞と最優秀主演男優賞をダブル受賞され、3冠を達成されました。
参考:鈴木亮平が日本人初受賞『シティーハンター』「幽遊白書」ほか日本発Netflix作品がアジアで快挙
もはや、日本語作品や、日本人の俳優が、国際的なドラマや映画の賞を受賞するのは珍しくない時代に突入しているのです。
「SHOGUN 将軍」の快挙に続く作品は生まれるか
はたして真田広之さんと「SHOGUN 将軍」のバトンを受け取って、次にエミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞するほど、世界で注目される日本の映像作品は生まれるのか。
実はその可能性がある作品の公開が、今年も複数控えています。
その一つは、Netflixから1月9日に公開される、「阿修羅のごとく」です。
この作品は、数々の名作ドラマを生み出した脚本家、向田邦子さんの最高傑作として名高いドラマシリーズを、カンヌ映画祭パルムドールの受賞経験もある是枝監督がリメイクしたドラマです。
宮沢りえさん、尾野真千子さん、蒼井優さん、そして広瀬すずさんと日本を代表する豪華な女優陣がキャストに名を連ねています。
是枝監督が初のNetflixシリーズとして手掛けた「舞妓さんちのまかないさん」は、台湾、香港、シンガポール、タイ、インドネシア、イスラエルでもTOP10に入るなど海外でも評価されていましたから、今回の「阿修羅のごとく」も同様に海外でも話題になる可能性は十分あるはずです。
またNetflixは、過去にも「今際の国のアリス」に「忍びの家」、「地面師たち」など複数の日本の実写ドラマを海外でもヒットさせてきていますし、何といっても「イカゲーム」の成功を生んだプラットフォームでもありますので、他にもこれから日本発の大ヒット作品が出てくる可能性は十分あると言えます。
Jドラマの盛り上げを目指す柳楽優弥「ガンニバル」
また、「SHOGUN 将軍」が独占配信されているDisney+からも、今年3月に「ガンニバル」のシーズン2が配信されます。
「ガンニバル」はシーズン1も公開後から国内外で高い評価を受け、主演の柳楽優弥さんが「アジアエクセレンスアワード」を受賞された実績があります。
シーズン2の発表イベントにおいても、柳楽優弥さんは「ディズニープラスから、新たな『Jドラマ』の新しい時代が来ようとしている」「先陣切って『SHOGUN』さんとかのパワーをもらったりしながら、『Jドラマ』を盛り上げていきたい」と宣言されていました。
参考:柳楽優弥と「ガンニバル」は、世界に「Jドラマ」の風を吹かせることができるか
「SHOGUN 将軍」を楽しんだDisney+契約者が、「ガンニバル」も楽しんでくれれば、引き続き「Jドラマ」が海外で話題になる可能性は十分あると言えるでしょう。
ハリウッドから日本人監督にも注目が集まる
さらに、国際的な映画賞やドラマ賞の受賞の可能性があるのは、日本の俳優陣だけではありません。
映画「ゴジラー1.0」でアカデミー視覚効果賞を受賞したことでも話題になった山崎貴監督は、ハリウッドのエージェンシーと契約し、すでに英語作品の制作に取りかかっていることが発表されています。
参考:山崎貴がハリウッド進出へ!初の英語作品で監督&脚本、『スター・ウォーズ』 J・J・エイブラムスとタッグ
また、直近では「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の前日譚を描く映画「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」をアニメ映画化するに当たり、「攻殻機動隊 SAC_2045」シリーズなどで知られる神山健治監督が抜擢されたことが話題になりました。
参考:手描きアニメの神髄を結集 神山健治監督「ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い」
実は、着実に日本の映像業界の人材も、ハリウッドに見つかり始めていると言えるわけです。
「アジアの国に対し、門が大きく開けた」
今回のゴールデン・グローブ賞受賞後のインタビューで、真田広之さんが「アジアの国に対し、門が大きく開けた。可能性は大きく広がった。」と強調されていたのが非常に重要なポイントだと言えます。
参考:「アジア、可能性広がった」 真田さん、後進につなぐ 米Gグローブ賞
2024年は、米国のフェスに日本のアーティストが多数出演したり、日本語曲がアメリカでゴールドディスクを獲得したりと、日本の音楽が着実に世界に拡がり始める年になっていましたが、そうした広い意味での日本人気は、間違いなく日本の映像業界にも波及しつつあるように感じます。
参考:2024年は、「日本語の歌」が世界に拡がり始めた年として、音楽業界の歴史に残る年になる。
真田広之さんは、受賞式のスピーチでも、日本の映像業界の先人に感謝を述べつつ、これからの世代をになう俳優やクリエイターへ「自分を信じ、諦めないでほしい」とエールを贈られていました。
当然、このエールは日本の多くの俳優やクリエイターに届いているはず。
真田広之さんと「SHOGUN 将軍」が成し遂げた快挙に刺激を受けて、次は日本の制作会社制作の日本語作品から、ゴールデン・グローブ賞受賞者が出てくる日を楽しみにしたいと思います。