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流れ星を見る方法 -オリオン座流星群はどのぐらい出現するのか?-

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
オリオン群は月明かりの下、1時間に1、2個程度観察可能か?(提供:国立天文台)

流れ星は人気モノ? -しし座流星群大出現のレガシー?-

 流れ星を見たいという声をよく聞くようになりました。1998年から2001年に話題になり、2001年に大出現した「しし座流星群」の影響が大きいのかもしれません。それ以前に比べ「流星群」に関しての話題がニュースや天気予報などでも紹介されるようになりました。誰も気軽に楽しめるような、出現数が比較的多い流星群は年間を通じて数群程度ですが、日食や月食または大彗星の出現と並んで夜空を見上げるきっかけとなっています。

 流星(流れ星)とは、宇宙空間にある直径1mm~数cm程度の塵粒(ダスト)が地球の高層大気とぶつかり、地球大気や気化した塵の成分が光を放つ現象です。重さも1グラムよりも軽いものがほとんどで、ちょうどコーヒー豆一粒ぐらいのサイズです。流星には、「散在流星」と「群流星」があります。散在流星とは、いつどこを流れるか全く予測が付かない流星で、群流星とは、ある時期に同じ方向から四方八方に飛ぶようにみられる流星のことです。また、群流星が飛んでくる方向を放射点(または輻射点)と呼びます。放射点がどの星座に含まれているかで、その流星群の名前が決まります。

流星群とは? -母天体はコメット-

 太陽に近づいた彗星(別名:ほうき星、コメット)は、彗星本体に含まれていた塵を彗星の通り道(軌道上)に放出していきます。このため、塵の粒の集団と地球の軌道が交差している場合、地球がその位置にさしかかると、たくさんの塵の粒が地球大気に飛び込みます。地球が彗星の軌道を横切る時期は毎年ほぼ決まっていますので、毎年特定の時期(数日間)に特定の群流星が出現することになります。

彗星の通り道と流星群の関係 提供:国立天文台天文情報センター
彗星の通り道と流星群の関係 提供:国立天文台天文情報センター

 1月の「しぶんぎ座流星群」、8月の「ペルセウス座流星群」、12月の「ふたご座流星群」は三大流星群とも呼ばれる毎年、安定してたくさん出現する流星群です。

 一方、しし座流星群は特に2001年に大出現したのですが、しし座流星群のように年によって飛ぶ数がまったく異なる流星群もあります。しし座流星群の母天体はテンペル・タットル彗星(55P/Tempel-Tuttle)。公転周期が33年で、比較的新しい彗星のため、通り道上の塵がかなり不均質であり、約33年の周期で流星出現数が増えたり減ったりしているのです。

 安定して毎年流れる流星群は、比較的古くから太陽の周りを回っている小天体が放出した塵という訳です。ペルセウス座流星群の母天体は、スイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)と呼ばれる彗星で、太陽の回りを約130年の周期で公転しています。また、ふたご座流星群の母天体は小惑星フェートン(3200 Phaethon ファエトンとも呼ばれる)と考えられています。この天体、現在は彗星のように揮発性物質を多く放出していませんが、以前は彗星のような振る舞いをしていたのではないかと予想されています。

今年のオリオン座流星群は? -月明かり・町灯りを避ける工夫を-

 今月、10月22日の2時(JST)、すなわち21日(日曜日)の深夜に極大予想を迎える「オリオン座流星群(オリオン群)」の母天体はハレー(ハリー)彗星。ちなみに毎年5月初めに出現する「みずがめ座η群」の母天体もハレー彗星です。この2つの流星群は、年間通じると3大流星群に次いで出現数の多い流星群ですが、残念ながら今年は、月明かりに阻まれて、肉眼で観察できる流星数は例年に比べ、ぐっと減ることでしょう。

 オリオン座流星群は、極大日前後4~5日間は出現しますが、はっきりとした出現のピーク(極大)が無いのが特徴です。今年に限って言うと条件の良い観察のチャンスとして、極大日前(20日、21日)の明け方の観察をお勧めします。今年は、極大日以前は月が明け方の薄明前に沈みます(10月22日で月齢13、満月直前の太った月)。それから薄明が始まるまでが月明かりに影響されないで観察できます。しかし、極大日を過ぎる頃になると、月が沈む前に薄明が始まるため観察しにくいのです。晴れた地域では、今週末の土曜、日曜の未明2時過ぎから薄明が始まる4時過ぎ(東京の場合、観測地によって薄明開始時間は異なるので注意)がチャンスです。

 流れ星を見る際、大敵なのは地上の灯りと月明かりです。月明かりが無い場合、天の川が見えるような空の暗い場所で観察すると、極大前後には1時間に15個程度のオリオン座流星群の流星を見ることができると予報されています。しかし、月明かりの下や都市部の明るい空で観察すると、肉眼で見ることができる流星の数はぐっと減ってしまいます。ただし、オリオン群は痕(こん)と言って、流星が流れた直後に光跡が残るケースもあり、明るい流星を1時間に1、2個見つけられるかもしれません。

 また、2009年にはオリオン座流星群が突発的に多く出現することが予報されていたので、その年はとても話題になりました。しかし、今年はそのような予測は残念ながらありません。この年のニュースの影響で、オリオン座流星群への期待が一般からは高いのかもしれません。また、母天体のハレー彗星はもっとも有名な彗星ですので、その彗星の軌道上を、極大日の頃に地球はいま横切っているのだと思うと、ロマンを感じる人もいることでしょう。

オリオン座流星群の見え方 提供:国立天文台天文情報センター
オリオン座流星群の見え方 提供:国立天文台天文情報センター

流星の見方のコツとは? -防寒、そして防光、あとは待つのみ-

 流星観察では、望遠鏡や双眼鏡は必要ありません。肉眼で観察しましょう。望遠鏡や双眼鏡を使うと見える範囲が狭くなってしまうため、一般の方の流星観察には適しません。安全でかつ、なるべく空が広く見渡せる場所を選びましょう。

 屋外に出てから暗さに目が慣れるまで、最低でも15分間は観察を続けるようにしましょう。そして、その間、車のライトや街灯を避けて、それらの地上の光が目に直接入ってこないように何かで光を遮断しましょう。さらに、地上の光が目になるべく入らないように見上げる方向を調整しましょう。群流星が流れる方向は放射点の方向とは限りません。空のどこを見上げていてもよいのです。群流星の流れ方の特徴としては、放射点に近いものほど、ゆっくりと短い経路で流れ、放射点に遠いものほど、速く長い経路で観察されます。群流星のみならず散在流星も1時間にいくつか見られるはずです。

 人間の目の機能として、暗闇に慣れるまで時間がかかるので、15分は我慢して目が慣れるのを待ちましょう。この時期、大事なことは風邪をひかないよう防寒対策をしっかり行いリラックスした服装・姿勢で無理をせずに楽しんでください。

 国立天文台では、毎年、都会でも楽しめるような出現数が多いと予想される流星群の場合、流れ星を数えて、報告しようという流星観察キャンペーンを行ってきましたが、次回は今年12月14日に極大を迎える「ふたご座流星群」で行います。インターネット上で誰でも参加可能なキャンペーンです。国立天文台のウェブページからご参加ください。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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