災害に脆さを露呈した鉄道インフラ 維持管理に公費の大々的な投入を!
この夏、相次いだ災害。豪雨災害、地震など、種類はさまざまだが、いずれもこの国の公共インフラの脆弱性をあぶりだしたものとなっている。
鉄道も、公共インフラである。人々の移動を担う、公共交通機関である。その公共交通機関が、災害によって危機にさらされていることが、もはや日常となっている。
安全とインフラ維持に奮闘する鉄道事業者
もちろん、鉄道事業者が何もしていないということはまったくない。豪雨の際には、とくにJR西日本などはあらかじめ告知して運転を休止し、乗客が災害に巻き込まれず、事故が起こらないようにしている。
鉄道事業者もメンテナンスには力を入れ、事故があっても、災害で何かがあっても大丈夫なようにはしている。
しかし、最近の相次ぐ大規模な災害により、鉄道インフラの疲弊があらためて現れてきた。
東日本大震災以来、長期間に渡って運休するということが、鉄道ではひんぱんに起こっている。とくに今回の北海道地震の影響を受けたJR北海道では、日高本線や根室本線が、以前の豪雨災害の被害から復旧できず、経営難の中で路線の存廃論議さえ起こっている。
なぜ、こんなことになったのか。
多くの鉄道路線は、戦前につくられ、維持管理を続けていきながらも路線を存続させてきた。だがベースとなる部分が古いため、甚大な災害に対しては弱い。
鉄道路線も少なくなり、とくに貨物に至っては運行しない路線も増えてきたため、輸送の冗長化ということができなくなっている。西日本豪雨では、山陽本線の寸断により、この区間のコンテナ貨物はバスや船舶により代行するしかなくなってしまった。その後、山陰本線経由の貨物列車が運行されることになったが、完全にフォローできているわけではない。
強い鉄道インフラは?
その中で比較的強い鉄道インフラは、戦後につくられたものである。西日本豪雨で在来線が甚大な被害を受けている中、早々に立ち直ったのは山陽新幹線である。山陽新幹線は地域内輸送にも尽力した。北海道地震でも、最近開業した北海道新幹線が、もっとも早く立ち直った。同時に快速「エアポート」が札幌~新千歳空港間で運行されることになったが、この区間がJR北海道の路線の中ではもっとも必要とされている区間だからである。
新しい箇所は比較的立ち直りが早く、古くからある箇所は老朽化のため橋梁の流出や土砂の流入、路盤の流出が起こりやすい。
鉄道インフラの維持のために、いまある鉄道の施設をチェックし直すことが求められている。
もっとも、台風21号でのタンカーの関空連絡橋への衝突による関西空港線の運休のように、新しいものでもどうしようもないものも、あるのだが。
鉄道事業者だけでインフラ維持は可能か?
とはいうものの、鉄道事業者の経営環境が厳しい中で大規模な施設点検は難しい。日常的に点検をしていても、いざというときには問題が発生しうるということはあるはずだ。
必要な鉄道インフラには、公費を投入してなにかあっても大丈夫なように強化するしかない。いまでも公費は投入されているものの、大々的な修復・強化に公費を投入するということが、安定した公共交通機関である鉄道インフラにとっては重要である。鉄道インフラの安定により人々の移動や、鉄道貨物による輸送が確保されることが求められている。
鉄道インフラは鉄道だけで存在しているのではない。たとえディーゼルカーといえども、信号システムや踏切に電気が必要なために、電力インフラが不安定だと走ることはできない。今回の北海道地震はまさにそうであった。
インフラ全体のことを安定化すべく、行政や政治が大きく関与すべきである。おそらくさまざまなインフラで、災害をきっかけに危機が表面化されているはずだ。