釧網本線中斜里駅、製糖工場の貨物列車の発着あった過去 2024年問題受け鉄道貨物は見直されるべき?
1990年代後半まで貨物列車が発着していた中斜里駅
網走―釧路間を結ぶ釧網本線にはJR化後も1990年代後半まで貨物列車の設定があった。途中駅の中斜里駅にはホクレン中斜里製糖工場があることから、中斜里駅と工場を結ぶ約2.7kmの専用線が敷設されていた。この専用線を介して根室本線の東鹿越駅から発送される石灰石、釧路開発埠頭西港線の西港駅から発送される石油のほか、製品積載のコンテナなどの貨物を取り扱っていたが、1997年3月以降、中斜里駅は貨物列車の発着のない自動車代行駅となり、中斜里駅と製糖工場を結ぶ専用線は廃止された。
現在は、JR貨物のコンテナ集配基地である中斜里オフレールステーションが設置されており、貨物列車代替のトラック便が釧路貨物駅との間に1日2往復が設定されている。
釧網本線沿線の斜里地区は一大農業地帯であるが、現在は、これらの輸送をすべてトラック物流により賄っている。中斜里の製糖工場で生産されているグラニュー糖の原料はてん菜で、日本国内での主力となる生産地は北海道東部だ。中斜里の製糖工場では網走、釧路、根室地方から原料の受け入れを行っているそうだ。これら製糖工場の生産にかかるトラック物流については、JR貨物のオフレールステーションとは別の便による輸送が行われているようだ。
製糖工場では2024年問題でさまざまな対策
トラックドライバーの残業規制が強化された2024年度を迎え、ホクレンの中斜里製糖工場では、安定的な物流体系を構築するためにさまざまな取り組みを行っている。同社ホームページによると、「トラックドライバーの減少による原料輸送車両の不足に対応するため、中斜里製糖工場区域の大空町と清水製糖工場区域の士幌町にそれぞれ中間受入場を開設し、従来より少ない車両台数で輸送できるように取り組んでいる」という。
しかし、「2024年の法改正に伴う労働改善環境改善への対応により、てん菜を適期に受け入れするための車両の確保がより困難になる状況が想定される」ことから、今後は「輸送車両の大型化」に課題解決を図るという。
こうした状況の中では、鉄道貨物を活用したほうが輸送効率が圧倒的によいことは火を見るより明らかではないだろうか。しかし、かつて中斜里の製糖工場まで石灰石輸送を行っていた東鹿越駅は2024年3月31日限りで根室本線富良野―新得間の部分廃止により廃駅となり、隣接する石灰石採掘場からの鉄道貨物輸送が不可能となった。
北海道内の相次ぐ鉄道路線の廃止とネットワークの分断により鉄道貨物を簡単に利用することが出来なくなってしまった現状では、今後、ドライバー不足が深刻化するなかで物流等を含めた北海道の産業基盤を安定的に維持できるのか心配だ。
(了)