ムンクの叫びの国の人々が、国会前で叫ぶ理由
8月30日、北欧ノルウェーの首都オスロ国会前では、6000~8000人もの人々が集まり、大きな叫び声をあげた。
この叫びの抗議活動は、毎週金曜日の若者による学校ストと合わせて、全国各地で同時に開催された。
子どもや若者だけが、地球の未来を心配しているわけではない。
応援しようと思っていた大人たちが、この日、「叫ぶ」という新しい手法で、政治家たちに向かって、叫んだ。ただ、叫んだ。
叫ぶだけで、なにか変わるのか?
叫んで政治が変わるのか?
そう思う人もいるかもしれない。ただ、叫ぶだけの運動は、大きく全国ニュースになった。参加者は「自分たちの行動に意味はある」と、恐らく確信を強めた。
数日後、ノルウェーでは統一地方選挙が行われ、首都では左派陣営が圧勝。気候変動を心配する人々から支持を集める「緑の環境党」は、前回の選挙と比較して、支持率をおよそ2倍に引き上げた。
緑の党という独特な党が、首都で異様な人気を誇る背景には、国会前で頻繁に開催されている気候変動関連のデモが、無関係とは言い難い。
学校ストに参加する若者の多くはまだ未成年で、選挙権がない。それでも、気候問題を心配する子どもたちを見て、周囲の大人は「自分の一票をどう使うか」、考えを多少とも変えるかもしれない。
学校スト世代が有権者となった時、ノルウェーの政治構図は変化するだろう。
何人かの大臣や議員は外に出てきて、参加者たちを応援。オスロ市長や自治体議員の一部は、叫びの行進やデモに自ら参加した。
抗議するよりも、勉強を
気候問題を心配する人たちのデモに眉をひそめる人もいる。
極右「進歩党」のヒェーティル・ソールヴィーク=オルセン元運輸・通信大臣は、「必要とされているのは、環境パニックではなく、環境政策だ」と批判。
「よりよい将来を望むなら、まずは勉強しなさい」とノルウェー国営局に寄稿した。
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Photo&Text: Asaki Abumi