GREENMACHiNE、ハードコア・ロック25年戦記と進んでいく未来【後編】
2020年12月にニュー・アルバム『GREENMACHiNE』を発表したハードコアロック・マスターGREENMACHiNEへの全2回のインタビュー後編。
前編記事ではDATSU(ドラムス)、MONZAWA(ギター、ヴォーカル)、MAX(ギター、ヴォーカル)、YOSHIKAWA(ベース)にアルバムについて語ってもらったが、後編では25年の平坦ならざる軌跡、そして混迷の現代においてバンドが進んでいく未来について4人に訊いた。
<ファーストの美しさ。荒削りであるがゆえの凄み>
●2020年には新作、そしてファースト・アルバム『D.A.M.N.』(1995)の新装リイシュー盤が出て、我々はバンドの最初と最新の姿を並べて聴くことが出来ます。初期と現在のバンドでは音楽へのアプローチはどのように異なるでしょうか?
DATSU: ファーストの頃は完全に手探りでした。最初の2作は100%僕が曲を書いて、歌詞はすべてMONZAWAが書いていた。その頃もストーナーであったりスラッジと呼ばれる音楽からも影響を受けたけど、元々根っこはハードコア・パンクがあって、それを最大限に生かす音楽をやりたかった。“ハードコア・ロック”という呼び名は後付けだけど、当時から自分の好きなもの、影響を受けたものを全部出していきたい思いはありました。
MONZAWA:『D.A.M.N.』の頃は若かったなあ...と。でも、初の作品にしかない美しさがありますね。同じことをもう一度やろうとしても不可能だと思います。気づいたのは、当時あったスラッジの割合が最近は薄れてきたことかな。長くやっていると変わるものですね。
MAX: 『D.A.M.N.』はファーストならではのマジックというか、荒削りな部分もあるけど、荒削りであるがゆえの凄みを感じます。1995年という時代に石川県でこんな凄いことが起こっていたのか!と感動します。もちろん当時、僕はまだバンドにいなかったけれど、オランダの“ロードバーン”フェスティバルで完全再現ライヴをやったとき(2018年)には既に加入していたので、全曲プレイしました。ハイエナジーなアルバムですよ。
●MAXさんは音楽の趣味で他のメンバーとジェネレーション・ギャップを感じたりしませんか?
MAX: DATSUさんは一回り違う年齢で、みんなそれぞれ音楽の趣味は異なるけど、それはジェネレーション・ギャップというより、個人差だと思いますよ。MONZAWAさんはハードコア全般が好きで、ストレート・エッジ物も聴いているし、DATSUさんはUKハードコアが好きなのに加えてJ-POPをよく聴いていますね。僕は“ビルボード”チャート物をストリーミングで流し聴きしていて、レディー・ガガとかは好きです。ヒットする音楽はバランス感覚が巧いですよね。GREENMACHiNEではDATSUさんがアルバムの曲順も考えるんですけど、“この曲の次にこれが来たら盛り上がる”というチョイスは、ポピュラー・ミュージックから影響を受けているかも知れませんね。全編を通して聴けるか、何度もリピートしたくなるかという要素は意識しています。
DATSU: 僕は激しい音楽も聴くけど、BiSHみたいなのも好きだし、最近ではJESU(イェスー)の最新作を何度も聴いていますよ。あと『GREENMACHiNE』では、自分の1980年代への思いの強さを再認識しましたね。多感な時期に聴いた音楽だし、身体に染みついているんですよ。W.A.S.P.の『魔人伝』とかトゥイステッド・シスターの『ステイ・ハングリー』、ドッケンの『トゥース・アンド・ネイル』とかを、レコード盤が擦り切れるまで聴いていました。
●『GREENMACHiNE』はCDと同時にアナログ盤LPレコードも発売されますが、レコード盤へのこだわりはありますか?
DATSU: うん、曲順を決めるときも、この曲はA面1曲目にしよう、とか。B面1曲目は再スタートなんで「We Must Die」でリセットして再スタートしています。曲の長さも3分台、長くても4分で終わる感じで、アルバムが46分テープに収まる長さというのも意識しています。
<闇に隠れて焼き鳥屋でホッピーを飲んでいた>
●アルバムの制作に先駆けて、YOSHIKAWAさんが2018年8月から2019年7月のあいだ失踪するという事件がありましたが、もう無事にすべて収まりましたか?
DATSU: YOSHIKAWAは無事復帰してアルバムにも参加しているし、みんな喜んでいます。ちょうど丸1年、本当に行方が判らなかったんです。“梅田で見かけた”とか、目撃情報だけは寄せられたんですけど、電話も解約していたし、とにかく連絡がつかなかった。
YOSHIKAWA: 判りやすく言えば、ちょっと鬱になっちゃったんだよね。人を信じられなくなって、その頃やっていたバンドは全部辞めて、クビになったりもしたけど。プライベートでもいろいろあって...その間、仕事をしていました。大阪にいたり、出張で東京に行ったりして、闇に隠れて焼き鳥屋でホッピーを飲んでいた。ずっと仕事ばかりで、音楽はやっていなかったです。
DATSU: 彼はSECOND TO NONEとASSEMBLAGE、それからGREENMACHiNEという3つのバンドを掛け持ちしていたんだけど、SECOND TO NONEで連絡がつかないとかリハーサルに来ないとかで他のメンバーに叱られて、クビになっちゃったんですよ。で、SECOND TO NONEとASSEMBLAGEはメンバーも一部被っているし、片方をクビになってもうひとつで続けるというのはあり得ない。その時点で彼はGREENMACHiNEには在籍していたんだけど、1ヶ月ぐらい後に、3バンドが同時に出演するライヴのイベントがあって。「大丈夫?」って確認したら大丈夫と言っていたから、こいつメンタル強いなーと思っていたら、その連絡を最後に音信不通になっちゃって。僕は彼の大阪の職場に押しかけたりしたけど、逃げられてしまって、その後はネットで呼びかけたりしていました。
●DATSUさんがSNSで「YOSHIKAWA出てこ〜い」と呼びかけをしたり、“HAVE YOU SEEN HIM?”というYOSHIKAWAさんTシャツを作ったりしていましたが、それはご存じでしたか?
YOSHIKAWA: 何となくは知ってたね。友達にも「DATSU君が探してるでー」とか言われたし。
DATSU: MONZAWAがベース&ヴォーカルになって、トリオ編成でライヴをやっていたけど、バンドのLINEグループにはYOSHIKAWAが入ったままだったんですよ。ずっと既読が付かなかったけど、あるとき既読になって。それが失踪から1年かな。それで大阪でライヴをやることになったときにもLINEで呼びかけたら、ライヴ会場にフラッと現れて、そのまま復帰することになりました。
YOSHIKAWA: 顔でも出そうと思ったら、あれよあれよという間に引き戻されて。
●本当に良かったですね!
DATSU: MONZAWAが本当に頑張ってくれたし、MAXもバンドのギターを1人で背負ってくれました。失踪後に決まっているライヴがあったし、新大久保でのライヴなんてYOSHIKAWAが持ってきた話なのに本人が不在だったし(苦笑)。『MOUNTAINS OF MADNESS』ではメンバーのクレジットにYOSHIKAWAの名前があるけど、実際には3人で作りました。
●GREENMACHiNEはベーシストが何度か交替していますが、その軌跡を振り返って下さい。
DATSU: ベーシストが抜けてしまうのは、それぞれみんな事情があるけど、仕事が理由のことが多いですかね。結成したての頃の初代ベーシストTAKUMIとは作品は出していないけど、彼は鋳物の宮崎寒雉の職人さんで、十五代目を継ぐことになったんです。かつて前田利家に茶道具を収めていたという名門を継ぐということで、バンドは続けられなくなって。それで当時(1996年)金沢に住んでいたYOSHIKAWAに声をかけて、活動を続けていましたが、1997年に僕とモメたんで解雇しました。セカンド『THE EARTH BEATER』(1998)で弾いているのはDAISAKUという九州出身の大学生でした。1999年に最初の解散をしたときは彼がベースを弾いていたけれど、それから大手出版社に就職が決まったんで、東京に行ってしまったんです。
●2003年に“友人の結婚式の二次会のために再結成した”というのが伝説となっていますが...。
DATSU: うん、結局そのときは演奏しなかったんですけどね。練習を始めたらタイミング良くthe原爆オナニーズのTAYLOWさんから声がかかって、名古屋のイベント“HARD ROCK MATINEE”に出演することになりました。そこからMONZAWAの気持ちにも火が付いて、活動を再開したんです。再結成してすぐの2本のライヴはDAISAKUがベースを弾いたけど、仕事で続けられなくて、ライヴを見に来てくれた福井のHASEGAWA君が入ってくれて、2006年の解散まで繋がります。それから2度単発ライヴをやったときはHASEGAWA君に頼んだけど、本格的に活動を再開するにあたってYOSHIKAWAが復帰して、その半年後MAXが加入し現在に至る感じですね。
●2020年12月12日には金沢のpublic bar ashでアルバム・リリース・パーティーのワンマン・ライヴを行いますが、その抱負を教えて下さい。
DATSU: 『GREENMACHiNE』をアルバムの曲順通り、全曲演奏します。告知してから3日で限定50人の予約は埋まって、こっちも気合いが入っていますよ。金沢は新型コロナウィルスの感染者が比較的少ないけど、感染対策や人数制限をしながら、安全性に配慮をしたライヴをやる予定です。
MONZAWA: こんな状況だし、“大丈夫なのか?”という不安はあるけど、やれることを前提に進めています。我々は地元だけど、遠くから来るお客さんもいるし、無理のない形でぜひ実現させたいですね。
MAX: 現時点でライヴはそれしか決まっていないんで、僕たちも慎重になりながらも気合いが入っているし、お客さんにもディスタンスを取りながら楽しんでもらいたいです。
YOSHIKAWA: どうなるのかな?いつも通りにやるしかないですよね。早ければ雪が積もっているかも知れないし、バンドもライブハウスも大変だけど、見に来てくれるみんなとアホな話をして酒を飲めたら最高だよね。
GREENMACHiNE『GREENMACHiNE』(self-titled)
グリーンマシーン『グリーンマシーン』
(セルフ-タイトル)
Daymare Recordings
CD: DYMC-358
Vinyl(180g重量盤): DYMV-358
2020年12月9日発売/現在発売中
GREENMACHiNE Bandcamp
https://greenmachine-hardcorerock.bandcamp.com/
デイメア・レコーディングス
http://www.daymarerecordings.com/
【ライヴ告知】
2020年12月12日(土)
金沢public bar ash
【過去記事】
【インタビュー】GREENMACHiNEのハードコア・ロックが世界を蹂躙する
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamazakitomoyuki/20160325-00055821/