GREENMACHiNE、ハードコア・ロックで突っ走る新作『GREENMACHiNE』を語る【前編】
ハードコア・ロックで世界を蹂躙してきた日本の誇るGREENMACHiNEが2020年12月、ニュー・アルバム『GREENMACHiNE』を発表した。
前作から1年9ヶ月ぶりとなる第5弾フルレンス・アルバム。そのサウンドはさらに激化、結成25周年という節目を飾るに相応しいアグレッションにメロディを加えて突っ走る作品となっている。
満を持してバンド名を冠した『GREENMACHiNE』について、DATSU(ドラムス)、MONZAWA(ギター、ヴォーカル)、MAX(ギター、ヴォーカル)、YOSHIKAWA(ベース)に訊く全2回のインタビュー。まず前編記事では、4人がアルバムを語った。
<自分が心底熱くなる音楽。こういうアルバムを聴きたかった>
●『GREENMACHiNE』はどんなアルバムでしょうか?
DATSU: 自分たちでもどういう作品が出来るか想定せずに、結果を恐れずに作ったアルバムですね。4人編成になって初めて作ったEP『FOR THE NIGHT AND BLOOD EP』(2016)のときはメンバー1人が曲の7〜8割を書いて、それに全員で肉付けをするというスタイルでやっていた。でも前作『MOUNTAINS OF MADNESS』(2019)からは自分とMAXで週1〜2回セッションを行いながら曲の断片、数十秒から1分のリフを100個ぐらい作って、それを組み立てて曲の形にしていきました。良いリフやフレーズがあったら録音して、ある程度溜まった時点でミッドテンポ、スローテンポ、Dビート...とビートの速さでグループ分けをして、仮タイトルでバンド名を付けていました。“フー・マンチュー”とか“ディスフィアー”とかね。そうして1番と4番を繋げていたり、2番と5番を繋げたらどうかとか、パズルのように組み立てていきました。
MAX:今回のアルバムは前作と較べてキャッチーになったけれど、サウンド面ではさらに攻撃的になったと思います。僕は『FOR THE NIGHT AND BLOOD EP』ではバンドに加入して間もなかったし、制作面にはタッチしていなかったけど、アルバム2枚ではより深く関わることが出来ました。いろんなタイプの曲があって、通して聴いても飽きないアルバムですね。
MONZAWA:『MOUNTAINS OF MADNESS』ではYOSHIKAWAが失踪中で、僕がベースとヴォーカルを担当して、99.99%ぐらいギターは弾いていなかったんです。彼がいない間、ライヴも6、7回...もっとかな?そのときもベースを弾きました。『GREENMACHiNE』では彼が復帰しているけど、僕のアルバムへの貢献は主にヴォーカル面でした。ギターは「RED EYE Pt.7」「GHOST OF NARCISSISTIC」「DRAGON’S SORROW」「孤絶」の4曲、リズム・ギターを弾きました。新作では若い頃よりも納得の行く、楽しいヴォーカルを録れたと思います。ギターはリズムに専念しているし、いずれギターを持たずに、ヴォーカルのみでライヴをやってみても面白いかも知れない。ギターは全部MAXに弾いてもらってね(笑)。
YOSHIKAWA: 俺は他のメンバーとちょっと離れて、大阪で生活しているんで、曲がある程度出来上がってから初めて聴くことが多かったんです。ちょっとやり過ぎじゃないか?と笑ってしまうほどの凄いアルバムでしたね。『MOUNTAINS OF MADNESS』もそうだったけど、 いい歳こいた大人が悪フザケをしているみたいな...いや、もちろん真剣にやっているんですけど。
●ちなみに、どの曲の仮タイトルが“フー・マンチュー”や“ディスフィアー”だったのですか?
DATSU: 「POISONSHED」が「フー・マンチュー」、「NOTHING」が「ディスフィアー」、あと「RATTLESNAKE」は「C.O.C.」でした。
●...あまり似ていないですよね。
DATSU: バンド名でプロジェクト・ネームを付けるけど結局、自分たちのカラーになってしまうんですよ。“フー・マンチュー”グループからかき集めてきても、結局GREENMACHiNE風にしかならない。あと「HOWL FROM THE OCEAN」はハイ・オン・ファイアーとアンスラックスの「インディアンズ」のような、ちょっと泣きのメロディのイントロが欲しかったけど、やはりそんなに似ていないかな。「RED EYE Pt.7」は恒例の“RED EYEシリーズ”なんで、ネタのストックの中から「RED EYE」に相応しいものを選んでいきました。
●『GREENMACHiNE』は25周年アニヴァーサリー・アルバムということで、どんな意気込みがありましたか?
DATSU: 僕たちと同じ世代のバンドでも、生活のためだったり諸事情で、泣く泣くバンド活動を止める人もいる。僕たちだって危機はあったし、何度か解散もしたけど、結局こういう音が好きで、ライヴをやるのが好きだった。そういう気持ちがあったから何とか続けてこれました。ひとつのバンドが25年続くというのは奇跡に近いものがあるし、自分にとっても感慨深いものがありますね。
●25周年というと、モーターヘッドでいえば『ウィ・アー・モーターヘッド』あたりの、かなり後期になりますね。50代になってロックンロール、特にうるさくて激しいロックをやるというのはどのようなことでしょうか?「POISONSHED」のコーラスが“殺せ!殺せ!殺せ!”だったり、「WE MUST DIE」も身もフタもない曲だったり...。
【お詫びと訂正】「POISONSHED」のコーラスは“殺せ!殺せ!殺せ!”でなく“GO SHED GO SHED GO YOUR SHED”でした。どうもすみません。
DATSU: 僕は1969年生まれだけど、まあ確かに大人げないとは思います(笑)。でも、それが自分が心底熱くなる音楽だし、こういうアルバムを聴きたいんだということを常に意識しています。こんなバンドをやりたいという理想があるし、もういい歳だからって丸くなった音楽をやろうという気が微塵も起こらないので、そのまま素直にやろうと思って。
MAX: 自分は後から(2014年)バンドに加入したんで、結成当初からいたわけではないけど、金沢出身ということもあって、けっこう初期からライヴを見に行ったりしていました。1982年生まれで、中学生の頃から見ていましたよ。 だからGREENMACHiNEが好きな人も納得させながら、新しいこともやっていきたい。そういう意味で「RATTLESNAKE」イントロのリフは、このバンドが好きな人だったら「来たぞ!」ってニヤリとするんじゃないかな。
●YOSHIKAWAさんがアルバムのベース・プレイで心がけたことは何ですか?
YOSHIKAWA: 曲が出来上がってすぐレコーディングしたんで、MAXにフレーズを教えてもらいながら録音する感じでしたね。 途中、彼の顔がすごく怖くて、鬼軍曹みたいだったのを覚えています。
●これまでGREENMACHiNEには何人かのベーシストが在籍してきましたが、YOSHIKAWAさんならではの貢献はどんなものだったのでしょうか?
YOSHIKAWA:貢献なんてしてないよ(笑)。 まあ、俺が酒飲んでばかりいるから、他のメンバーが飲んでも目立たなくて済むというのはあるかも知れんね。俺だけ大阪に住んでいるから、面倒かけていますよ。東京でライヴをやるときも前日に金沢で練習して、そのまま一緒に東京に行くようにしているしね。
●アルバムのレコーディングは9月12日から27日、新型コロナウイルスの脅威の真っ只中で行われましたが、音楽性やメッセージに影響を及ぼしているでしょうか?
DATSU: まったくないですね。歌詞の深いところでMONZAWAがどう思っているか判らないけど、曲を書くときは、全然意識していなかったです。コロナ禍の逆境で「やってやる」という気持ちはあったけど、それがサウンドに表れているかというと、特に出ていないですよ。自然体です。
●前作『MOUNTAINS OF MADNESS』のアルバム・タイトルはH.P.ラヴクラフトの「狂気の山脈にて」を元ネタとしていますが、今回セルフ・タイトルにしたのは、どのような意図があったのですか?
DATSU: 前作は全曲通してラヴクラフトをテーマにしたわけではなくて、「MOUNTAINS OF MADNESS」だけだったんですが、アルバムを象徴する曲だと思って、そのままタイトルに使いました。ジャケットのイメージもラヴクラフトとLIP CREAMを合体させたような感じにしてね。今回も収録曲をタイトルにしようと思っていたけど、全体を象徴する曲がなかったし、前作で上げた自分たちのハードルをさらに上げることが出来たと思って、ここらでセルフ・タイトルで行こうと考えました。
<アルバムのケツをハードコアでビシッと締める>
●新作の歌詞はMONZAWAさんが書いていますか?
MONZAWA: 自分が歌っている歌詞は自分で書きました。MAXが歌っている2曲「NOTHING」「TORTURE YOURSELF」は、彼が歌詞も書いています。
●歌詞の内容はどんなものですか?
MONZAWA: 世の中への文句もあり、ストーリー性のある歌詞もあります。たとえば「WE MUST DIE」「DRAGON’S SORROW」とかは物語性があるし「HOWL FROM THE OCEAN」もホラーっぽいですね。「孤絶」はあえて説明したくなくて、自分で聴いて解釈して欲しいんで、日本語で聞き取りやすく歌いました。
●前回のアルバム・タイトルがラヴクラフトだったり、ホラーへのこだわりはありますか?
MONZAWA: いや、特にないです(笑)。でもホラーは題材にしやすいですよね。バケモノの話を考えるとスラスラと書けるんですよ。とはいっても過去にこのバンドでバケモノの歌をそんなにやってきたわけでもないけど。今回、後にリリースするものを含めて全16曲をレコーディングしたし、歌詞の題材でいろいろ悩んだんです。普段からあれこれ考えているし、小さいことをいかに膨らませるかが歌詞作りのツボでもあるので、面白いですね。
●初期と較べると歌詞作りはどのように変わりましたか?
MONZAWA: 歌詞の表現、使う言葉にこだわるようになったかな。若い頃はウギャーと叫んでいた箇所も、今ではどう言葉で表現するか考えるようになったし、今回のアルバムでは起伏に富んだヴォーカルで歌えたと思います。
●「NOTHING」のリード・ギターがメタルしていたり、「GHOST OF NARCISSISTIC」のリフと歌メロもメタリックですが、ヘヴィ・メタルというスタイルとはどのように向き合っていますか?
DATSU: ずっとメタルは好きだったけど、メタルの要素をどうしても入れたいという欲求はなかったです。でも『THE ARCHIVES OF ROTTEN BLUES』(2004)から顔を覗かせ始めて、ギターが2本になったことで確立された感じかな。“メタリカがやっていたニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル”的アプローチみたいな雰囲気が欲しくて現在に至っています。
●『GREENMACHiNE』のリード・ギターはメロディックな、オールドスクール・メタルを思わせる部分もありますが、それはどの程度意識したものでしょうか?
MAX: 元々僕は十代の頃、いわゆるメタル・キッズで、その後ハードコアなどを聴くようになったんです。だからメタルの要素は根っこにあるけれど、前作ほどピロピロした速弾きはなくなりましたね。メロディに関しては「DRAGON’S SORROW」のリードでオリエンタルな音階を取り入れたり、決して狙ってやったわけではないけど、耳に残るフレーズを意識しています。
●アルバムのラストを飾る「孤絶」はアドレナリンを噴き出しながら突っ走るナンバーで、前作のやはり終盤に収録されていた「瀉血」と同様、ジャパニーズ・ハードコアを思わせますね。
MONZAWA: うん、ハードコアをやるんだったら日本語でやりたいな、と思ったんです。
アルバムのケツをハードコアでビシッと締めるのは良いことだと思いますよ。
DATSU:「孤絶」も「瀉血」も当初、ミッドテンポの曲だったんです。MONZAWAも僕も16、7歳の頃から日本のハードコアに傾倒していたんで、その影響が表れたんでしょうね。それに、ハードコアを演奏するのがただ単純に楽しいというのもあります。
●アルバムのジャケット・アートワークについて教えて下さい。
DATSU: ジャケットは兵庫でやっているDISTURDのなっさん(072)にお願いしました。記念作に相応しい、ドドーンと象徴的なデザインにして欲しいとお願いして、上がってきたのがこのアートワークだったんです。『MOUNTAINS OF MADNESS』ではバンドがアートワークのコンセプトを出したけど、今回は完全にお任せしました。
●カタカナ表記でCDがグリーンマシーン、LPがグリーンマシンなのはワザとでしょうか?
DATSU: 帯のマシン表記はわざとです。昔のべノンみたいな誤植感を出したくて。
後編記事では新装再リリースされたファースト・アルバム『D.A.M.N.』やバンドを見舞った“事件”について語ってもらおう。
GREENMACHiNE『GREENMACHiNE』(self-titled)
グリーンマシーン『グリーンマシーン』
(セルフ-タイトル)
Daymare Recordings
CD: DYMC-358
Vinyl(180g重量盤): DYMV-358
2020年12月9日発売/現在発売中
GREENMACHiNE Bandcamp
https://greenmachine-hardcorerock.bandcamp.com/
デイメア・レコーディングス
http://www.daymarerecordings.com/
【ライヴ告知】
2020年12月12日(土)
金沢public bar ash
【過去記事】
【インタビュー】GREENMACHiNEのハードコア・ロックが世界を蹂躙する
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamazakitomoyuki/20160325-00055821/