消えゆく回数券、ひんぱんな乗車はチケットレスへ
先日、JR中央本線の特急「あずさ」「かいじ」の自由席が廃止され、全席指定席化されることが発表された。それと同時に、沿線住民に親しまれてきた「あずさ回数券」が来年春に廃止されることとなった。なお、「スーパーあずさ」は車種統一により「あずさ」に統合される。
代わりに、「えきねっとチケットレスサービス」が導入され、JR東日本の予約サービス「えきねっと」に登録しチケットレスサービスを使用することで、一般の座席指定料金よりも安く利用することができる。とはいえ、「あずさ回数券」1枚あたりより、高い。不満も出る。
お得な乗車の方法は?
「あずさ回数券」が廃止になることにより、お得に乗車する方法としては「えきねっとトクだ値(乗車券つき)」「お先にトクだ値(乗車券つき)」のみとなる。とはいえ、前者は10%割引、後者は13日前1時40分までの予約で30%引きと、「あずさ回数券」に見合うのは前者しかない。「えきねっとトクだ値(乗車券つき)」の割引率は下がっている。
山梨県や長野県の主要な駅前には、金券ショップがあり、そこでバラ売りの「あずさ回数券」を買って乗車するという光景もよく見られた。たまにしか都内に行かない山梨県や長野県の人たちも、そうやってチケットを調達することも多かった。
そんな中で「あずさ回数券」の廃止は、割高感が増すことになるのは確かだ。
回数券からチケットレスへ
一方、チケットレス乗車の導入にともない、「あずさ」「かいじ」の乗車方法が変わるということが考えられる。ひんぱんに乗車している人はこれまで「あずさ回数券」を買い乗車前に指定を受けていたが、これからはチケットレスサービスで特急券を買い、交通系ICカードで改札を通り、指定された座席に座る。到着駅では、座席から離れ交通系ICカードで改札を出る。「あずさ」「かいじ」の走行範囲内は、ほとんどがSuicaのエリア内なのだ。
同様のサービスは、常磐線特急「ひたち」「ときわ」でも行われている。「ひたち」「ときわ」にチケットレスサービスが導入された際、「いずれ中央線特急でも同様のサービスが導入されるだろうな」と予測していたため、新車E353系電車が導入されるのに合わせてチケットレスサービスが導入されることがありうることであった。
私鉄特急では同様のサービスが広まっている。小田急ロマンスカーでは、インターネット経由でクレジットカードを使用し座席指定券を購入し、降りる際に改札を通り交通系ICカードで運賃を支払うということが可能になるサービスをすでに導入している。
「あずさ」「かいじ」にせよ「ひたち」「ときわ」にせよ、近距離の利用客の多い特急列車のため、利便性の高いチケットレスサービスは必要不可欠であるといえる。チケットレスサービスによる特急料金は、一般の特急料金よりも安く、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などの利用制限もないため、そういった時期に利用しなければならない人にとってはありがたい話でもある。
短距離回数券から交通系ICカードに
JR西日本では、ことしの9月30日を持って「昼間特割きっぷ」を廃止した。そのかわりとして、ICOCAのポイントサービスを強化している。
関西では、回数券のバラ売り文化が定着し、駅近くの金券ショップでバラ売りの回数券を買い、安く利用するということがさかんに行われてきた。時間帯限定の回数券はとくに割引率が高く、バラ売りでも割引率が高いため、よく利用されている。
だが、ICOCAのポイントサービス強化や、特別な回数券の廃止により、そういったことも減っていくと予想できる。
関東でも事情は似ている。かつては回数券がよく使われていたものの、交通系ICカードの普及により、回数券の利用者は減っていった。しかも関東圏では事業者が多く、それに合わせて回数券を用意することは困難であり、回数券を上手に組み合わせるという人は珍しくなった。
短距離でも、回数券文化は消えていき、チケットレスが主流になってきている。
長距離も短距離も、チケットレスへ。東海道・山陽新幹線では「エクスプレス予約」や「スマートEX」といった予約方式が普及し、東京から北に向かう新幹線でもチケットレスサービスが導入される見通しがある。関東圏内といった短距離は自由席ならすでにチケットレスだ。
紙のきっぷからチケットレスといった大きな流れがあり、その中で不便になったり、便利になったりすることがある。お得感を確保しつつ、チケットレスによって便利になるようにするにはどうするか、各鉄道事業者は考えていることだろう。
(お詫び)本文中、「「あずさ」「かいじ」の走行範囲内は、すべてSuicaのエリア内」ですが、大糸線内はSuicaエリアではありません。「ほとんどがSuicaのエリア内」と訂正し、お詫びします。なお本文は修正済みです。