アルピコ交通 上高地線3000形(モハ3005+クハ3006) 初代「なぎさTRAIN」が引退
今日11月3日、松本市を走るアルピコ交通上高地線で一本の電車が定期運用から引退した。3000形(モハ3005+クハ3006)の2両編成で、同線のイメージキャラクター「渕東なぎさ」が描かれた「なぎさTRAIN」として11年に渡って親しまれてきた車両だ。平成12(2000)年7月20日の入線以来、24年もの間、上高地線で活躍してきた。
アルピコ交通3000形は、松本電気鉄道時代の平成11(1999)年から翌12(2000)年にかけて2両編成4本が導入された車両で、5000系(元東急5000系)を置き換えて、上高地線の主力として四半世紀に渡って活躍してきた。
種車は東京の京王井の頭線で活躍していた3000系で、いずれも中間車に運転台を接合して先頭車に改造している。モハ3005は昭和46(1971)年4月東急車輛製の京王デハ3106、クハ3006は昭和39(1964)年11月東急車輛製の京王デハ3056で、京王では平成10(1998)年1月16日に廃車となった。ちなみに京王時代に編成を組んでいた両端の先頭車(クハ3756、クハ3706)は、群馬県の上毛電鉄でデハ713+クハ723として活躍している。
モハ3005+クハ3006は、平成25(2013)年3月20日より、「渕東なぎさ」が描かれた「なぎさTRAIN」として営業運転を開始。他の3本がノーマルカラーを纏う中、沿線の風景に彩りを添えていた。渕東なぎさは、アルピコ交通の女性社員がデザインしたキャラクターで、姓名は上高地線の渕東駅と渚駅に由来する。両駅の駅名標にもデザインされ、駅や車内の案内やアルピコ交通の広報など至る所で活躍している。
製造から60年(クハ3006)と53年(モハ3005)、入線から24年、「なぎさTRAIN」となってから11年が経つモハ3005+クハ3006。さすがに寄る年波には勝てず、この度2代目にバトンタッチすることとなった。同じ3000形のうちモハ3001+クハ3002、モハ3007+クハ3008の2本は20100形への置き換えにより既に退役し、廃車となっている。
2代目「なぎさTRAIN」は3月16日より運転を開始したモハ20105+クハ20106。東武20000系の中間車を改造した20100形の第3編成だ。白地に5色の虹というデザインは初代および3000形の塗装を受け継ぎつつも、北アルプスのシルエットが描かれ、渕東なぎさのイラストも初代より大幅に増えて、初代よりも賑やかな印象になった。
モハ20105は平成5(1993)年7月アルナ工機製のモハ25858、クハ20106は平成元(1989)年1月アルナ工機製のモハ24804が種車で、それぞれ東武時代は21855編成、21804編成に組み込まれていた。両編成の片割れはそれぞれ21438編成と21448編成、21446編成として東武日光線・宇都宮線などで活躍を続けている。
2代目との約8か月に及ぶ共演期間を経て、バトンタッチし、定期運用から引退した初代なぎさTRAIN。今後、貸切運行や撮影会、部品取りイベントを行って、11月下旬に廃車となる予定だ。
モハ3005+クハ3006の引退により、3000形は残すところあと1本、モハ3003+クハ3004「モハ10形リバイバルカラー」のみとなる。20100形第4編成は来年3月デビュー予定で、それにより置き換えられるリバイバルカラー編成も風前の灯火といった状態だ。
初代からバトンを受け継いだ2代目なぎさTRAINには、初代と同じように愛される車両として、末永く活躍してもらいたいものだ。
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