博多ラーメンの常識を変える! 福岡で話題の「黒い博多ラーメン」とは?
「非豚骨」に沸く福岡に新たな豚骨ラーメン店が登場
豚骨ラーメンの聖地として知られる福岡博多。かつては「ラーメンと言えば豚骨」が当たり前だった街に、ここ数年は豚骨以外のラーメン店が急増している。いわば「非豚骨ブーム」と言っても良いほど、新しく出来る店のほとんどが醤油ラーメンや塩ラーメンなど、博多ラーメンとは違うラーメンを出している現状がある。
そんな中、2023年にオープンした『麺や きく川』(福岡県福岡市中央区春吉3-12-21)は、純然たる豚骨ラーメンの専門店。店主の菊川寛人さんは、福岡や東京の人気ラーメン店で豊富な経験を積んだ人物。その後、居酒屋などを展開する会社に就職したが、ある時再びラーメンの世界への扉が開いた。
「会社で経営していたラーメン店をリニューアルすると聞き、自分から手を挙げて新しいラーメンの提案をしました。誰かが考えたラーメンを作るよりも、自分で考えたラーメンを作りたい。その想いに応えて任せてくれた会社にはとても感謝しています」(『麺や きく川』店主 菊川寛人さん)
リニューアル後のラーメン店は大盛況となり一躍人気店へ。3年間かけてしっかりと結果を残した菊川さんは、その店を事業継承する形で会社から独立。2023年に現在の地へ移転したのを機に屋号も自分の名前に変えて、晴れて一国一城の主となった。
「新しい博多ラーメンの形を作りたい」
菊川さんが目指すラーメンは、濃厚でありながらもサラッとした口当たりの博多ラーメン。一般的な博多ラーメンは、一日分のスープを取り切る製法か、スープに骨を継ぎ足して熟成させる製法がほとんどだったが、菊川さんはそのどちらも選ばず、営業中に骨を入れ替えていく製法を取り入れた。こうすることで臭みがなく常にフレッシュな旨味を持ちながら、濃厚な味わいのスープを生み出すことが出来るのだ。
豚ゲンコツと背骨のみを使い、営業中に継ぎ足しながら旨味を抽出する豚骨スープは、濃厚ながらも臭みなくまろやかな甘味のある味わい。麺は地元の老舗製麺所、青木食産のオリジナル低加水麺を使う。丼の半分を覆うほどの大きさのチャーシューは肩ロースを使ってしっとり柔らかな食感に仕上げた。
「これだけ多くの博多ラーメン店がある中で、うちのお店に来て頂くためにはラーメンに独創性が必要だと思っているんです。濃厚でありながらも臭みがなくサラッとしてフレッシュ感のあるスープが僕の理想。骨をどんどん足しながら作る、今までにはない新しい博多ラーメンの形を作り上げたいと思っています」(菊川さん)
味も見た目もインパクト十分な「春吉ブラック」の誕生
従来のイメージにとらわれることなく、自由な発想で博多ラーメンを作る菊川さん。その姿勢が反映された一杯が、丼一面が真っ黒なスープの『春吉ブラック』だ。熊本ラーメンで使われる焦がしニンニク油の「マー油」に衝撃を受け、博多ラーメンにも応用出来ないか試行錯誤を重ね、味も見た目もインパクト十分な「黒い博多ラーメン」が誕生した。
博多ラーメンが生まれて70年以上が経つが、博多ラーメンはずっと変わらなかったわけではない。戦後間もない頃の博多ラーメンは、醤油の風味がもっと強いスープで麺も平打ちだった。その後長浜ラーメンとの融合を経て、博多ラーメンは白濁した白いスープに細麺へと変化した。
ラーメンとは、その時代背景や社会と共に変わり続けていく料理だ。菊川さんが作る新たな豚骨スープの味わいと、真っ黒いビジュアルが衝撃的な「黒い博多ラーメン」。こうしてまた新たな博多ラーメンのスタイルが生まれ、博多ラーメンの歴史はさらに紡がれていくのだ。
「まずはもっと多くの人にこの店のことを知ってもらいたい。僕はこの場所で自分のやれること全てをやり切りたいと思っているんです。今は美味しいラーメンを追求しているような人たちに向けて作っていますが、いずれは地元の人たちの日常に寄り添うような、博多の人たちに愛される店にしていきたいと思っています」(菊川さん)
麺や きく川
福岡県福岡市中央区春吉3-12-21
11:30〜20:00(平日)/11:30〜18:00,20:00〜23:00(金土日祝)
不定休
※写真は筆者によるものです。
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