グーグル、対話AI搭載の検索エンジン ついに披露
米グーグルは、先ごろ開いた年次開発者会議「Google I/O」で、これまで一部地域で提供していた生成人工知能(AI)「Bard(バード)」を一般公開したと明らかにした。加えて、対話AI機能を搭載した検索エンジン「Search Generative Experience(SGE)」を発表した。
生成AI「Bard」、日本語版登場
高度な言語能力を持つ生成AIは、米マイクロソフトが出資する米オープンAIが2022年11月に「Chat(チャット)GPT」を公開して以降一気に利用が広がった。
こうしたなか、検索をはじめとするネットサービスで高いシェアを持つグーグルはこの分野での競争力を維持するべく開発を急いでいる。
開発者会議でグーグルは、同社の大規模言語モデル(LLM)「PaLM(Pathways Language Model)」を改良した「PaLM 2」も発表した。
同社によると、PaLM 2は、Bardや検索エンジン、Gmail、Googleドキュメントなど、25以上のサービスに活用される。
Bardは23年3月に米国と英国で一般公開を始めていたが、今後は英語版の提供地域を180カ国・地域に広げる。加えて、Bardを40超の言語に対応させる計画も明らかにした。第1弾として日本語と韓国語での提供を始めた。
新検索エンジンは社内で試験中
一方、対話AI機能を搭載した検索エンジン(SGE)は現在グーグル社内で試験中だ。今後数週間以内に米国の利用者を対象に「サーチラボ」と呼ぶ新しい実験ブログラムで待機リストへの登録を受け付ける。
グーグルのスンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)は「AIをすべての人に役立つようにすることが、私たちの使命を達成するうえで最も重要だ」と説明した。
グーグルは「Perspectives(パースペクティブス)」と呼ぶ新しい検索機能も明らかにした。これは、検索結果ページに表示されるフィルターの1つ。SNS(交流サイト)の投稿や「TikTok」などの短尺動画を表示できるというものだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルは、「よりビジュアル、スナッカブル(短くて分かりやすい)、個人的、人間的な検索エンジン」を目指しているという。
従来検索とAIを融合
こうした変更によりグーグル検索は数十年にわたり続いてきたリスト形式から大きく変わることになるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
ロイター通信によると、新たなグーグル検索のホームページの外観は従来と変わりがない。違いは検索結果ページに現れるという。
利用者が入力した検索語に対し、生成AIが用いられた場合、上部にAIによる回答を表示し、下部に従来通りのリンクを表示する。
ロイターが試したところ、「天気 サンフランシスコ」と入力すると、従来通り8日間の予報が表示される。しかし、「カリフォルニアの街では何を着ればよいか」と入力した場合、AIによる文章が表示される。
「日中は半袖のシャツと、薄手のセーターやジャケットなど、重ね着したほうが良いでしょう」といった具合だ。情報源となったウェブサイトへのリンクも表示されたという。
また、BardやChatGPTに似た新しい「会話モード」を利用できる。この場合、AIが前の質問を覚えているため、自然な会話形式で次の質問ができるという。
グーグル検索チームの副社長、リズ・リード氏は、「検索の将来は、検索と生成AIのそれぞれ最高の部分を融合することだ。どちらか一方ではない」と説明した。
一方で、検索広告は今後も表示される。グーグル検索は、年間1620億ドル(約22兆5800億円)超の収益を上げる広告事業を支える同社の主力事業だ。
「AIに重点を置いた検索エコシステムの進化にともない、検索広告は引き続き重要な役割を果たす」と同社は述べている。
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- (本コラム記事は「JBpress」2023年5月16日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)