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グーグルやMSなど米IT大手CEO、AI投資の重要性強調

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

景気減速への懸念が高まる中、米グーグル(アルファベット)、米マイクロソフト、米アマゾン・ドット・コム、米メタの経営トップは先の決算説明会で、コスト削減を進めるとともに効率改善に取り組んでいると報告した。

一方、2023年に入って一気に注目された「Chat(チャット)GPT」のような対話AI(人工知能)について、その基盤技術となる大規模言語モデル(LLM)への投資が不可欠だとし、投資家に理解を求めた。

米経済ニュース局のCNBCによると、4人のCEO(最高経営責任者)で共通していたのは、①AIがもたらす事業成長の可能性、②LLM構築・運用のための巨額費用とその重要性、の2つだった。

グーグル、生成AIで検索改良

アルファベットのスンダー・ピチャイCEOは、AIに関する自社の目標について「順調に進んでいる」と説明した。同氏によると、グーグルでは今後も生成AIを慎重かつ計画的に導入し、検索エンジンの改良を進める。同社は広告効果の向上にAIを活用しているほか、AIモデルに入り込む「有害テキスト」を減らす取り組みも進めている。

グーグルではLLMの運用に自社開発の半導体を利用しているが、米エヌビディア(NVIDIA)製の高性能画像処理半導体(GPU)も利用していると明らかにした。GPUは主に画像関連の処理に用いられるが、機械学習やLLMのトレーニングにも使用される。高度な文章表現やリアルな画像を生成するAIシステムを構築するには、こうした高性能半導体が必要になる。

グーグルは先ごろ、AI研究部門を再編すると明らかにした。14年に買収した英ディープマインドとグーグルの研究部門「グーグル・リサーチ」のBrain(ブレイン)チームを統合し、「グーグル・ディープマインド」を新設した。

マイクロソフトCEO、巨額投資が必要

ChatGPTを手がける米オープンAIに出資するマイクロソフトは、オープンAIのLLM「GPT」を検索エンジン「Bing」に導入しているほか、業務用ソフト群「マイクロソフト365」にも取り入れた。

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、「AIが最終的に収益増をけん引する」と述べ、すでに同社製アプリの利用拡大につながっていると説明した。例えば対話AIを導入したことで、Bingアプリのダウンロード件数が4倍に増えたという。

同氏は、これらのアプリケーションを運用していくためには大規模なデータセンターが必要で、そのために巨額の投資が必要になると説明した。

「我々は今後もクラウドインフラ、特にAIに投資していく。顧客の変化によって高まる需要に対応していく。その結果として得られる収益は時間とともに増加する」(ナデラ氏)

アマゾンCEO「当社は巨額投資が可能な1社」

アマゾン傘下の米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は23年4月、顧客企業が独自の生成AIシステムを開発できるようにする基盤モデル「Amazon Bedrock(ベッドロック)」を発表した。

アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは、この市場が巨大であるとし、同社が独自のLLMを構築していると明らかにした。アマゾンでは機械学習のためのデータセンター用半導体を自社で設計しているという。

同氏もこの技術に多額な費用がかかると説明。それに対応できる自社は有利な立場にある、と自信を示した。同氏によるとLLMを構築するには、数百台のコンピューターを数週間稼働させて、それらを人件費の高い機械学習エンジニアに監督させる必要がある。「その時間と費用を投じることができる企業はわずかだが、当社はそのうちの1社になる」と述べた。

メタCEO、AIにも経営資源、大量投入

メタについては先ごろ、生成AIを年内に商用化する方針だと報じられた。マーク・ザッカーバーグCEOは決算説明会で、メタバース(仮想空間)と並行して、AIにも大量に経営資源を投入できると強調した。

同氏によると、メタはこれまで機械学習を活用してニュースフィードや広告システムの精度を高めてきた。今後は生成AIにも注力する。「生成AIは驚くべき進歩を遂げており、当社で現在行っている作業は、我々のアプリとサービスのすべてに影響を与えるだろう」(ザッカーバーグ氏)

メタは今後、「WhatsApp」の対話機能にAIを活用するほか、「Facebook」や「Messenger」にAIによる画像生成機能を導入する。将来的には、短い指示文から動画を生成できるプログラムなど、さまざまな製品・サービスに取り組む。「企業のカスタマーサポート用AIエージェントなどに活用が期待できる」(同社)

ザッカーバーグ氏はデータセンター構築に必要となる費用についても言及した。同社の設備投資額は過去数年間増加しているが、それは主にAIへの投資によるところが大きいという。同氏は今後もこの分野への投資を継続する必要があるとの認識を示した。

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年5月2日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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