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EUの炭素国境調整措置は、あなどれない。日米首脳会談を控え、わが国のカーボンプライシングはどうするか

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
ドイツ・ハンブルク郊外で、石炭火力発電所の建設予定地で塔に抗議する環境保護活動家(写真:ロイター/アフロ)

4月16日に日米首脳会談が開かれ、22日からはバイデン米大統領主催の気候変動サミットが開催される。菅義偉首相も、このサミットに招待されている。

日米首脳会談は、当初4月9日に予定されていたが、22日からの気候変動サミットと日程が近くなったことから、日米同盟の強化や北朝鮮問題もさることながら、日本側から気候変動問題でも強く発信しないと、日米首脳会談が埋没する恐れもある。

特に、何かと「対立」の構図で見られる米中が、気候変動問題については「協力」すると、日本が置き去りにされ、最悪の場合、尖閣諸島を失う恐れもあることは、拙稿「4月の日米首脳会談、菅首相は何を話すべきか 気候変動問題で米中協力なら日本は置き去りに」に記したところである。

そんな中、気候変動問題に積極姿勢を見せるEU(欧州連合)も、炭素国境調整措置について検討を重ねている模様である。炭素国境調整措置については、拙稿「炭素国境調整措置に、日本はどう対処すべきか:カーボンプライシング論議の行方」で平易に解説している。

最大の焦点は、炭素国境調整措置が、自由貿易を志向するWTO(世界貿易機関)ルールに抵触するか否かである。EUは、WTOルールと整合的な炭素国境調整措置を模索している。

フランス政府は、3月23日に、オンラインでの国際シンポジウム“Carbon Border Adjustments for Climate”を開催して、炭素国境調整措置(CBAM)の議論を喚起した。そこで鮮明になったものの1つは、炭素国境調整措置として、GATT20条の適用を検討していることである。

GATT、関税及び貿易に関する一般協定のことである。

どこかで聞き覚えがあるだろう。そう、中学・高校の社会科の教科書にも載っている。第2次世界大戦後、自由貿易を志向し、世界的に関税引下げや貿易規制の撤廃を目指した協定で、1995年にWTOが発足すると、WTO協定の一部となった協定である。WTOが発足して以来、GATTという名はあまり頻繁には使われなくなった。

しかし、今でもGATTはWTO協定の一部である。そのGATTの第20条を、EUが炭素国境調整措置で使おうとしているのである。

では、炭素国境調整措置は、GATT20条とどんな関係にあるのか。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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