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森保ジャパンが対戦する北朝鮮代表の特徴は?「攻撃的なスタイルを好む」元欧州組2人、現役Jリーガー1人

金明昱スポーツライター
2019年アジアカップに出場していた北朝鮮代表FWハン・グァンソン(写真:ロイター/アフロ)

 北中米W杯アジア2次予選で今日、日本代表と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表が国立競技場で対戦する。19日に羽田空港に到着した北朝鮮の選手、スタッフたちは到着ゲートで多くの在日コリアンらの歓迎を受け、国旗を振りながら笑顔で応えていた。和やかなムードを見せながらも、昨日の前日会見でシン・ヨンナム監督は「明日の試合は非常にし烈な戦いになる。どのような結果になるかは分からないが、ベストを尽くしたいと思っている」と真剣な表情で意気込みを語っていた。

 というのも、北朝鮮はここまでのW杯アジア予選で昨年11月にシリアに0-1で敗れ、ミャンマーには6-1と大勝。日本に次いで1勝1敗のグループ2位につけている。つまり日本との対戦は最終予選に進む上での大一番で、ホーム&アウェーの2連戦はもちろん、負けられない戦いだ。

 アジアカップでベスト8に終わった森保ジャパンとしては、ここで勝利して士気を高めたいところ。逆に、北朝鮮としては勝利を呼び込むチャンスと見ているだろう。

「前線へ、サイドへと積極的に仕掛ける」

 指揮官のシン・ヨンナム監督は46歳で就任2年目。昨年の杭州アジア大会でU-23代表監督も兼任し、日本と準々決勝で対戦したのは記憶に新しい。ちなみに元代表MFで、鄭大世ともチームメイトだったことがある人物。

 杭州アジア大会に北朝鮮代表コーチとして帯同した朝鮮大学校サッカー部前監督の申載南(シン・ジェナム)氏は、シン監督のサッカースタイルについてこう語っていた。

「守備は前線から積極的にプレスをかけていき、攻撃するときは相手のゴールに向かって、前線にボールを入れていく。それが大前提です。サイドの選手もボールを持ったらどんどん仕掛けていくので、そうした意識は叩き込まれています。シン監督は守備的に戦うよりも、より攻撃的なスタイルを好みますね」

 日本とのアウェー戦となれば、守備を固めて引き分けで勝ち点1を獲得できれば御の字だろうが、シン監督は前半から積極的に仕掛けてくる可能性が高い。

DF板倉滉と元欧州組FWのマッチアップ

 チームでカギとなるのは3人。前線に配置される元欧州組の2人。スイス1部でプレーしたFWチョン・イルグァンとセリエAでプレーしたFWハン・グァンソンだ。

 チョン・イルグァンは31歳でチーム最年長。2010年にはAFC U-19選手権で優勝して大会MVPを獲得してアジアで頭角を現し、その年のAFC年間最優秀ユース選手賞も獲得。2011年のW杯アジア予選では日本とも対戦した経験を持つ。森保ジャパンで言えば、DF長友佑都のような存在と言えば分かりやすいだろう。去年のミャンマー代表とのW杯アジア予選ではハットトリックを決めるなど、現在も高いパフォーマンスを発揮。スペースへの素早い抜け出しから精度の高いシュートを得意とする。

 そしてイタリアで才能が認められたハン・グァンソンだ。カリアリやペルージャでプレーし、ユベントスが獲得したほど。カタールのアル・ドゥハイルでもプレー。国内クラブに戻ったあとも力強いドリブルとフィジカルの強さには磨きがかかった印象がある。欧州を知る北朝鮮FWの2人が、日本のDF板倉滉が統率する最終ラインをどのように崩すのかは見ものである。

参照:“消えた”元ユベントスの北朝鮮サッカー選手がW杯予選に出場…彼は一体どこで何をしていたのか?

“中盤のダイナモ”MFキム・グクボムに注目

 最後に知っておきたいのが、“中盤のダイナモ”というべき29歳のMFキム・グクボムだ。昨年の杭州アジア大会ではオーバーエイジ枠で出場して、1得点を記録。チーム内ではベテランにあたるが、ボランチとして豊富な運動量で攻守を支える。昨年のW杯アジア2次予選の2試合もフル出場を果たしており、彼のパフォーマンスには注目しておいていいだろう。逆に日本のMF遠藤航との動きを比較してもおもしろいかもしれない。

 もちろんほかにも最終ラインをまとめる主将のDFチャン・グクチョルや唯一の海外組となった在日コリアンJリーガーのMF文仁柱(ムン・インジュ、FC岐阜)もいる。文は岐阜で左サイドバックに起用されているが、「代表ではボランチとしても練習している」とも話していた。中盤での起用の可能性も残しており、日本で育った彼がチームにどのようなアクセントが生むのかも見てみたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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